かつては千国街道の宿場町として、昭和30年代には黒部ダム建設を支えた街として多くの人で賑わった「信濃大町」。現在も、長野県の扇沢駅から富山県の立山駅までを結ぶ山岳観光ルートである「立山黒部アルペンルート」の、長野県側の玄関口として知られています。
信濃大町駅周辺を散策してみると、宿場町当時の面影を残す町屋や古民家を改装した施設や食事処をあちこちで見かけるとともに、水路や水場が点在する「水の町」であることにも気づきます。今回は、意外と(?)見どころが多い、信濃大町駅周辺のおすすめスポットを紹介します。
信濃大町駅までのアクセス

東京都内から信濃大町駅へ行くルートは、主に2通り。JR東京駅から北陸新幹線で長野駅へ行き、特急バス「雷鳥ライナー」に乗車するか、JR新宿駅から特急あずさで松本駅に行き、大糸線に乗り換える方法が一般的です。長野駅経由の方が短い時間でアクセスできますが、電車の旅を満喫したい人は松本ルートがおすすめ。また、松本ルートも1日1本、大糸線に直通の特急あずさが運行しているため、時間が合う場合はラクに移動ができます。
さらに、週末は快速「リゾートビューふるさと」が運行しており、信濃大町駅に停車します。長野駅からも松本駅からも乗車できますが、姨捨駅周辺は車窓の景色が素晴らしく、スイッチバックも行われるため、せっかくであれば長野駅からの乗車がおすすめです。




宿場町時代の面影を残す「塩の道ちょうじや」

松本市と新潟県糸魚川市を結ぶ千国街道(ちくにかいどう)は、塩や海産物の輸送ルートとなっていたことから「塩の道」と呼ばれています。宿場町(大町宿)の塩問屋であった頃の面影を残し、街道の歴史や当時の人々の暮らしを辿ることのできるスポットが「塩の道ちょうじや」です。



帳場やお座敷、2階の展示スペースを観た後は、文庫蔵・漬物蔵・塩蔵を見学できます。

向かいには「流鏑馬会館」もあり、日本三大流鏑馬のひとつ、若一王子神社例大祭の流鏑馬に関する展示を見ることができます。

山と人と街をつなぐブックカフェ「三俣山荘図書室」

「塩の道ちょうじや」の近くにある「三俣山荘図書室」は2022年にオープンしたブックカフェです。オーナーは北アルプスの山小屋「三俣山荘」「水晶小屋」を運営する伊藤圭さん。「山と人と街をつなぐ」、街の山小屋のような場所で、店内では登山に関する本とともに、登山グッズや地図なども販売しています。登山目的で信濃大町に前泊する人は、ここで翌日の登山計画を立てると良さそうです。

店内にはテーブル席やカウンター席、広々としたテラス席もあり、信州サーモンのサンドイッチやジビエのサルシッチャなど、この土地ならではの料理やドリンク、近隣の店のスイーツなどを楽しめます。ガスや電気を使わない再生可能エネルギーで淹れたコーヒーも人気です。
「三俣山荘図書室」の営業は月・金・土・日曜日ですが、そのうち金・土曜日は18:00~21:00まで、バータイムとして夜も営業しています。メニューは昼と変わりませんが、北アルプスブルワリー(後述)のクラフトビールや地元の日本酒も飲むことができます。

常連さんに人気があるのが、夜のテラス席。近くの竈神社では毎年9月の第一土曜日に例大祭を行っており、その前夜祭として、西公園グラウンドで奉納花火やスターマインが打ち上げられます。テラスは花火観賞の「知る人ぞ知る」特等席なのだそうです!
「男清水」と「女清水」、2つの水源の水を楽しめる「水の町」
北アルプスの麓にある信濃大町は「水の街」として知られています。面白いことに、大町商店街を境として、東側は標高約900メートルの里山・居谷里(いやり)を水源とする湧水「女清水(おんなみず)」、西側は標高約3,000メートルの北アルプス・上白沢を水源とする湧水「男清水(おとこみず)」を、水道法に基づく最低限の塩素滅菌のみ行った上で水道水として使用されています。2つの水を合わせた水は「縁結びの水」と呼ばれています。



信濃大町には3つの酒蔵があり、いずれも「女清水」側にあります。湧水に含まれるカルシウムとマグネシウムの含有量が少ない軟水は日本酒の仕込み水にぴったり。やわらかな口当たりの酒に仕上がるのだそうです。

一方、クラフトビールの「北アルプスブルワリー」は「男清水」側にあり、名前の通り北アルプスの伏流水で造るビールを提供しています。
信濃大町で、アート作品巡りを楽しむ!

大町市では3年に1度「北アルプス国際芸術祭」を開催しています。そのため、世界各地のアーティストが手がけた作品を、開催期間でなくても街のあちこちで発見できました。ぶらりと街歩きをするだけで気軽にアート巡りができます。どの作品も、街の風景に自然と溶け込んでいる様子が印象的でした。



信濃大町のご当地グルメって何があるの?

大町の名物グルメと言えば、良質な水をふんだんに使った「そば」や「地酒」、そして「黒部ダムカレー」。今回は、信濃大町を代表する黒部ダムカレーの人気店へ足を運びました。
大町市のご当地カレー「黒部ダムカレー」

黒部ダムカレー推進協議会のパンフレットによりますと、黒部ダムカレーには5つのおきてがあるとのこと。
・お米をダムの堰堤の形にするべし
・カレーのルーは必ず堰堤の外側に流し込むべし
・カレーのルーの上にガルベに見立てたトッピングを乗せるべし
・料金は700円以上とするべし
・(大町の水を堪能できるように)必ず水をつけるべし
「ガルベ」とは黒部ダムで2024年まで運航していた観光遊覧船のこと。すでに廃止となっていますが、黒部ダムカレーの上では運航を続けているようです! こまつうどん店の「名物ダムカレー手打ちうどん」は7種類の魚介と折昆布でとった出汁とスパイスが合いまったカレーが、辛いけれども美味しい! コシのある手打ちうどんと地元産コシヒカリ、そしてガルベに見立てたサクサクの串カツがいい! 玉ねぎがよいアクセントになっていて、かなりのボリュームなのに箸が止まりませんでした。

地元で人気の低温殺菌牛乳「松田牛乳」

松田牛乳は、大町市では「富より健康」のキャッチコピーが有名な牛乳で、地元の小中学校給食で長年親しまれてきた商品。地元で搾乳された生乳を使用しています。大きな特徴が、低温殺菌にこだわっていること。一般的な牛乳は超高温殺菌法で殺菌しますが、牛乳の風味を最大限に味わえるよう、低温で時間をかけて殺菌されています。

今回紹介した街歩きスポットは、JR信濃大町駅から歩いて気軽に訪れることができる場所ばかりです。
※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成しています。最新情報は公式サイトなどでご確認ください。
文/注釈のない写真:斎藤若菜
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