ハンドルを握る女性ドライバー。筆者は迷わず「カッコいい」と感じました(画像・女性バス運転手協会。
立川バス提供)

鉄道、バスの公共交通に共通の大問題、それが人材不足です。「ドライバーが足りずに路線バスが減便」は今やニュースにもならないほど。警察庁や国土交通省などによると、バス運転手の定員割れは全国2万人以上と推計されます。
解決のカギの一つが女性人材の活用。バス会社は全国ざっと5,000社、ドライバーは12万人ほどです。うち女性の割合はわずか2.0%。2,400人前後にとどまります。

そうした現状に風穴を開けようと、女性に向けたバス業界の今を紹介するイベントを企画したのが女性バス運転手協会。2017年に活動を始めた一般社団法人で、「女性バス運転手の会」を定例開催します。
筆者は2026年2月18日に開かれた4回目の会合を取材。会の模様とともに、「バス業界あるある」をコラムにまとめました。

「私にもバスが運転できる?」

通常の就活イベントで応募者が気にするのはおそらく「給料はいくら」、「休みは何日ぐらい」、「リモートワークできるのか」といった点でしょう。
しかしバス会社への就活で、そうした採用条件に話が及ぶのはもう少し先の話。

バス運転手を志望する女性が最初に疑問なのは(もちろん男性もですが)、「自分にバスが運転できるのか」です。

大型バスは車体長約12メートル。3ナンバーの国産乗用車(約5メートル)の倍以上です。ところが運転のしやすさ、しにくさを比べると、バスが乗用車より運転しにくいといえないのが本当のところ。多くのバスドライバーは、「乗用車の運転はバスより難しい」と話します。
その理由。最近のバスは、車体の周囲をカメラや警報システムでチェックしていて、車体の感覚さえつかめば、ある意味乗用車より安全に運転できます。

3年半ぶりの開催

バスドライバー不足、解決のカギは「運転大好き!」な女性活用にあり 4回目の「女性バス運転手の会」をリポート(東京都港区)【コラム】 
中嶋女性バス運転手協会代表理事=横断幕後方左端=を囲む女性バス運転手の会参加者(筆者撮影)

女性バス運転手の会は、2022年6月以来ほぽ3年半ぶり。バス業界への就業を希望する参加者は19人で、関東一円を中心に、遠くは関西や中部方面から駆け付けた人もいます。 「運転が大好きで、バスドライバーをやってみたい。でも、運転できるかどうか不安」が参加者の共通マインド。そんな人たちの背中を押すのが会の目的です。

新卒の女性所長誕生

人手不足の現代、黙っていてはドライバー志望者はやってきません。今回のトークセッションに招かれたのは東都観光バスの宮本聡美人事部採用課長。

バスドライバー不足、解決のカギは「運転大好き!」な女性活用にあり 4回目の「女性バス運転手の会」をリポート(東京都港区)【コラム】 
大胆な女性・若手登用で人材不足に待ったをかける東都観光バスの宮本人事部採用課長=パネリスト右端=。会合の進行役は高速バスマーケティング研究所の成定竜一代表=全体の右端=が務めました(筆者撮影)

東京に本社を置く東都観光バス、2022年に大学新卒の女性を営業所長に当用。業界の常識を破り、応募者が大幅に増えました。
国も東都観光バスに代表されるジェンダーレスの考え方に共鳴します。会合には、国交省総合政策局共生社会政策課の村田遊ジェンダー政策推進官が出席。バス業界の扉を開ける女性にエールを送りました。

私鉄系バス会社も参加

会には東都観光バスのほか、女性ドライバー採用に意欲をみせる東急バス、東京空港交通、日立自動車交通、東京ヤサカ観光バスの4社がブースを構えました。
東急田園都市線の地上部に当たる国道246号線などがメインテリトリーの東急バスは、東急グループの一員。鉄道では女性乗務員が珍しくなくなりましたが、バスも働きやすい環境を整えて女性社員を迎えます。
ワークスタイルイノベーション推進室人財開発部の笠原祐一次長と同部人事グループ兼採用グループの樋口克巳課長代理は積極的に参加者とコミュニケーションを取って、職場環境をアピールしました。

東京空港交通は羽田、成田の両空港発の空港リムジンバスを運行。京浜急行電鉄が出資します。日立自動車交通は、東京都足立区の「はるかぜ」や台東区の「めぐりん」の地域コミュニティバスを運行します。

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会場に掲出されたメッセージボード。バスドライバーへの思いがあふれます(筆者撮影)

バス業界の今昔を聞く

ここで東京ヤサカ観光バスの武笠輝雄舎人営業所長に、バス業界の今昔を聞きました。武笠所長が業界の門をたたいたのはバブル経済崩壊直後の1990年代初めで、今では信じられないことですが、手に職を付けて不況を乗り切ろうとバス会社には運転手志願者があふれかえっていました。

武笠所長も1年間の浪人生活中はトラックドライバーとして大型車運転の腕を磨き、晴れて目指すバスドライバーになりました。

バス業界は、主に路線バスと観光バスに分かれます。ツアー終了時、バスドライバーは「お世話になりました」、「また参加したいです」とねぎらいの言葉をかけられます。それが一番のやりがいです。
しかし、慣れない道の連続に心労もつのります。地方都市へのツアーは、現地を知るガイドが乗務するケースも。運転手とガイドは二人三脚、「次の狭い道を曲がると〇〇があります」とガイドしてもらえば、道案内代わりになります。

バス業界で進むのがDX化の波。「最近のドライバーはインターネットの地図サイトで道を研究しています」。なるほどのコメントが聞けました。

医療・介護職マッチングから転身

会を主催した女性バス運転手協会の中心は、リッツMCというバス業界に特化した人材マッチングのスタートアップ企業。2011年創業です。中嶋美恵社長は当初、医療・介護分野で起業しましたがライバルが多く、バス業界に方向転換しました。

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リッツMCは年2回程度のペースでバス会社と就業希望者のマッチングイベント「どらなびEXPO」を開催します(画像・リッツMC)

バス業界を知ってもらう催しとして、今週末の2026年3月14日に東京・お台場(青海)で開くのが「東京バスフェスティバル2026」です。東京バス協会が主催し、企画運営がリッツMC。男性も大歓迎で、小田急バス、京王バス、東京BRTといった私鉄系バス会社も参加して、合同就職説明会やバス運転体験会(普通免許が必要ですが)がアナウンスされます。

バスドライバー不足、解決のカギは「運転大好き!」な女性活用にあり 4回目の「女性バス運転手の会」をリポート(東京都港区)【コラム】 
屋外で開催される「東京バスフェスティバル」には参加各社自慢の新型バスが勢ぞろいします(画像・リッツMC)

ラストに女性バス運転手協会の代表理事を兼任するリッツMCからの中嶋社長からのメッセージ。「バスドライバーはお客さまに見てもらえる仕事で、その点やりがい十分。近未来には女性の比率を10%程度まで高め、昨今の鉄道業界のように、女性ドライバーか当たり前の社会にしたいと考えています」

記事:上里夏生

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