トッテナムは経験豊富も守備面に不安アリ
今季途中からトッテナムの指揮官に就任したモウリーニョ photo/Getty Images
千軍万馬の名将ジョゼ・モウリーニョが指揮を執るトッテナムと、新進気鋭のユリアン・ナーゲルスマン率いるRBライプツィヒの激突は、過去に一度も実現していない。文字通りの初対決だ。ただ、スパーズは昨シーズンのラウンド16でドルトムント、そして今シーズンのグループリーグでバイエルン・ミュンヘンと対戦し、ブンデスリーガ勢のクオリティやドイツ特有のスタジアムの熱気を認識している。
もっとも、チーム状態に関してはライプツィヒが明らかに上だろう。モウリーニョが「毎試合のようにディフェンスのミスを犯している」と頭を抱えるスパーズは、いずれも下位チームとの対戦になった年末年始のプレミアリーグ3試合で1勝しか挙げられず、直近のFAカップ3回戦では2部のミドルズブラと痛み分けに終わった。一方、ブンデスリーガの前半戦を首位で折り返したライプツィヒは、約1カ月に及ぶウインターブレイクの間にリフレッシュ。しっかりと英気を養い、さらにギアを上げそうな気配を漂わせている。
勝負の行方を左右する大きなポイントとして戦術的な見どころを挙げれば、モウリーニョが講じるライプツィヒ対策だろう。決戦までに守備に不安を抱える現状を改善できないようなら、ブンデスリーガ最多の48ゴールを誇る相手に蹂躙される可能性は低くない。今季のライプツィヒはポゼッションとショートカウンターの折衷型で、臨機応変に攻撃を繰り出してくる。公式戦25試合で23得点を挙げているティモ・ヴェルナーや、崩しの切り札である攻撃的MFのマルセル・ザビツァーが中心となる仕掛けはダイナミックそのもので、完璧に抑えるのは至難の業だ。
ライプツィヒの攻撃は相手に読まれにくいのが特長だが、基本的にはツータッチ以内に素早くボールをつなぐダイレクト志向が強く、中央から突破を図ろうとする。基本システムである[4-4-2]の中盤は横一線ではなく、ボックス型。
モウリーニョが恥も外聞もなくベタ引きで守る守備戦術を採用する可能性もなくはないが、ハイプレスで相手の良さを消しに行こうとする際は、ライプツィヒで最もボールに触れる機会が多いポジションの一つであるボランチを潰さなければならない。特にナポリへ移籍したディエゴ・デンメの代役として司令塔に起用されるであろうタイラー・アダムスに対し、スパーズの前線に並ぶソン・フンミン、ルーカス・モウラ、デル・アリがどれだけ強く、効果的にアプローチできるか。攻撃の鍵を握るこの3人は、ディフェンスの局面でも重要なキーパーソンとなりそうだ。
一方のライプツィヒも、実は守備が盤石ではない。レギュラーの大半を占める若手が自慢の機動力を活かし、連動性の高いハイプレスを仕掛けるものの、最終ラインの強度はブンデスリーガ最少失点だった昨シーズンより下がっている。その一因はイブラヒマ・コナテの負傷離脱。このCBの超逸材に加え、昨年末に負傷したDFリーダーのヴィリ・オルバンも1stレグに間に合うか微妙な情勢で、最後のところで踏ん張りが利かなくなる恐れがある。年明けにハムストリング断裂の重傷を負ったスパーズの主砲、ハリー・ケインも欠場濃厚とはいえ、それでもタレント揃いのスパーズ攻撃陣をシャットアウトするのは難しそうだ。
互いに守備は懸念材料 漂う“打ち合い”の予感
ブンデス最年少監督であるナーゲルスマン。若き“戦術オタク”はモウリーニョにどう挑むか photo/Getty Images
以上の点を踏まえると、ロースコアでの決着は考えにくい。
見方を変えれば、深謀遠慮なモウリーニョにとって、ライプツィヒは対策が立てやすいチームと言えるかもしれない。ただ、たとえ事前に用意したプランが上手く運ばなくても、試合中やハーフタイムにシステム変更を含む戦術的な修正を図り、劣勢を覆すのがナーゲルスマンの真骨頂でもある。戦術家として鳴らす両監督の采配が、この一戦における最大の見どころだろう。
外れるのは覚悟の上でスコアを予想するなら、1stレグは3-2でライプツィヒの勝利、2ndレグは2-2のドロー決着。チームとしての実績も、個々の経験値も申し分ないとはいえ、マウリシオ・ポチェッティーノからモウリーニョに監督が代わった11月以降も劇的な改善が見られていないスパーズを、野心に溢れ、ブンデスリーガ初優勝に向かって邁進するライプツィヒが上回るのではないか。昨シーズンの準決勝、トッテナム対アヤックスを彷彿とさせる一戦であり、見逃せない好カードなのは間違いない。
文/遠藤 孝輔
※theWORLD241号、1月15日発売の記事より転載
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