粕谷秀樹のメッタ斬り 061
20−21シーズンをもってローマの指揮官を退任したフォンセカ氏 photo/Getty Images
失点以外はすべて一致している
ユリアン・ナーゲルスマン(2021-22シーズンからバイエルン・ミュンヘンの監督に就任)とブレンダン・ロジャーズ(レスター)にそっぽを向かれ、アントニオ・コンテとの交渉も土壇場で決裂した。
トッテナムが新監督の人選に苦しんでいる。
新たにマネージング・ディレクター (MD) に就任したファビオ・パラティチが、20-21シーズンまでローマを率いていたパウロ・フォンセカに接触。交渉は順調に進み、読者の皆さんが本稿に目を通すころには「新監督就任」の一報が出回っている公算が大きいとはいえ、はたして適切な人選だったのだろうか。
「みずからのゲームプランはブレないが、マンマネジメントはあまりにも稚拙」
イタリアにおけるフォンセカの評価は芳しくなかった。ローマではエデン・ジェコとの軋轢が表面化し、解決策を見いだせないまま時間を浪費した。しかもフォンセカは、「ジョゼ・モウリーニョの信奉者」とみずから認めている。
トッテナムを解雇されたモウリーニョがローマの新監督に就任し、ローマを追われたフォンセカがトッテナムの新しいボスになった。前進とは思えない。モウリーニョもフォンセカも、エージェントはジョルジュ・メンデスだ。パラティチがユベントスのディレクター・オブ・フットボールを務めていた当時から良好な関係を維持している。
したがって、これといった適任者が見当たらず、なおかつ金銭面でも低リスクなラインに基づく幅の狭い人選になり、パラティチは旧知のメンデスと交渉するしかなかった、と推測できる。
ちなみに20-21シーズン、フォンセカが率いたローマは18勝8分12敗/68得点・58失点で7位。モウリーニョ(最終6試合はライアン・メイソンの暫定体制)のトッテナムは18勝8分12敗/68得点・45失点で7位。
20-21シーズンaはゴールデンブーツなどを獲得するも、今夏の退団が噂されるケイン photo/Getty Images
難しすぎる仕事を引き受けた
さて、退団濃厚と伝えられるハリー・ケインは、具体的なアクションをまだ起こしていない。同僚のソン・フンミンが「ハリーが移籍すると言ったのか」と記者に詰め寄り、エージェントのジョナサン・バーネットもノーコメントを貫いている。
ただ、新監督がフォンセカでは、ケインの気持ちが残留に傾く確率は低いだろう。リヴァプールのユルゲン・クロップやマンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラと互角の勝負を演じられるのか、ロジャーズ(前出)のように幅広くプランを構築できるのか、いろいろな疑問が頭をもたげてくる。
7月で28歳になるケインはタイトルを人一倍欲し、トロフィーを掲げる自分の姿を夢見ているという。20万ポンド(約3000万円)といわれる週給も、メガクラブに移籍すれば1・5倍は増える。退団の条件は完全に整った。
それでもフォンセカはダニエル・リヴィー会長が求める攻撃的なフットボールを展開し、デル・アリやハリー・ウィンクスなど、モウリーニョのもとでくすぶっていた選手を復活に導かなければならない。ケイン抜きで、だ。
フォンセカは、難しい仕事を引き受けようとしている。
文/粕谷秀樹
スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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