熟成度にまさるレアルはどんな展開にも対応できる
攻撃の切り札として投入されるロドリゴ。昨季クラシコでのゴールはないが、今季結果を残せばスタメンの座も見えてくる photo/Getty Images
レアルが継続性+熟成で連覇を狙えば、バルサは継続性+強力補強による新展開で王座奪還を目指す。両者が激突するエル・クラシコは、まず10月16日(第9節)にレアルのホームであるサンチャゴ・ベルナベウで開催される。昨シーズンはお互いにアウェイで勝利を収め、1勝1敗だった。この2試合も含めて、ラ・リーガではレアルの76勝35分け73敗であり、これだけ対戦してほぼ互角だ。ここ数年は熱量、激しさで物足りないときもあったが、今シーズンは違う。どちらも譲らない強度の高い試合になる。
レアル、バルサともに[4-3-3]で、チームの熟成度はレアルがまさっている。
加えて、ダニエル・カルバハル、ルーカス・バスケス、マルコ・アセンシオ、フェデリコ・バルベルデらで形成する右サイドは連携がよく、左サイドからはヴィニシウス・ジュニオールが仕掛け、その後方をフェルランド・メンディがカバーする。決定力が高すぎる大舞台に強いロドリゴという切り札もいる。
この成熟した大人なチームは、どんな試合展開にも対応できる。相手がハイプレスでくれば正確に、素早く、長短のパスをつないで状況を打開する。守備組織を固める相手にも慌てることがなく、攻め急がずにチャンスをうかがい、決定機を逃さずに仕留めてみせる。
8月11日に行われたフランクフルトとのスーパーカップがそんな展開になり、堅守に対してボールを保持して淡々と試合を進めた。ときおりカウンターを受けたが、守護神ティボー・クルトワがゴールを死守。セットプレイからアラバが先制し、相手守備組織が乱れてくるとヴィニシウスからのラストパスを受けたベンゼマが決め、2-0で完勝している。
「先制したあと、うまくゲームをコントロールできた。
試合を終えたアンチェロッティ監督の言葉に、レアルの老獪さが表れている。
可能性に満ちた新・バルサ クラシコの役者は揃っている
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バルサ新加入のハフィーニャ(右)は、ラスベガスで行われたプレシーズンのクラシコで決勝点を記録。ファンの心を早速つかんだ photo/Getty Images
一方、今シーズンのバルサは可能性に満ちている。最終ラインにジュール・クンデ、アンドレアス・クリステンセン、中盤にフランク・ケシエ、ウィングにハフィーニャ、前線にロベルト・レヴァンドフスキを補強した布陣は、完成しているレアルのサッカーを破壊するかもしれない。
最終ラインの中央にロナルド・アラウホ、エリック・ガルシア、クンデ、クリステンセンから2名。アンカーにセルヒオ・ブスケッツ、インサイドハーフにペドリ、ガビで、前線にレヴァンドフスキ。このセンターラインはレアルに負けず強固だ。
右SBのセルジ、ロベルト、セルジーニョ・デストはどちらも攻撃的で、縦にも斜めにも走れる。右ウィングのウスマン・デンベレがワイドに開けばインナーラップで、中央に絞ればタッチライン際を攻めあがる。シャビのもと昨シーズンを通じてSBが中央へ絞るスタイルを一貫してみせており、この部分に関しては練度を増している。
突破力がある新加入のハフィーニャはおそらく左サイドのウィングを務める。ドリブルで崩せるだけでなく、サイドからラストパスを出せるタイプで、ゴール前にいる新ストライカーのレヴァンドフスキに合わせるシーンが多くみられそうだ。
この絶対的な点取り屋とさらに相性が良さそうなのが、視野が広く、パスセンスに優れたペドリだ。エル・クラシコに限らず厳しいマークにあうことが予想されるが、球離れがよく、早いタイミングで決定的なパスを出せる。運動量も多く、ゴール前に顔を出してフィニッシュすることも多い。レヴァンドフスキ、ペドリ、ハフィーニャで形成する前線左サイドのトライアングルは、こらからのサッカーシーンの中心になっていくかもしれない。
勝敗を左右するのは中盤のつばぜり合い
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バイエルンでともに過ごしたアラバとレヴァンドフスキは、互いの長所を知り尽くしている photo/Getty Images
エル・クラシコの注目点はいくつもあるが、モドリッチとペドリのどちらが攻撃で目立つシーンが多いかで主導権の行方が決まる。どちらもわずかな時間があればドリブルでボールを運べるし、瞬間的な判断で効果的なパスを出せる。
ポジション的にも対峙するので、一方が攻撃で目立てば、もう一方は守備を強いられることになる。無論、モドリッチ、ペドリともに献身的な守備もできるが、やはり彼らの能力は攻撃面で発揮されたほうがチームのためになる。
この両名を含む中盤でのつばぜり合いが勝敗を左右するポイントとなる。アンカーのカゼミロ、ブスケッツは説明不要の経験豊富な手練れで、“ツボ”を心得ている。クロースとガビは駆け引きや球際の攻防ならクロースだが、ポジショニング、運動量、スピードならガビも負けていない。カゼミロ、モドリッチ、クロースの距離が近ければレアルの、ペドリ、ブスケッツ、ガビの距離が近ければバルサの流れ。
サイドに目を向ければ、どちらにもブラジル代表のウィングがいる。レアルのヴィニシウス、バルサのハフィーニャで、セレソンではヴィニシウスが左サイド、ハフィーニャが右サイドを務める。このままのポジションならエル・クラシコで同サイドにいることになり、どちらかが低いポジションを取ることを強いられることになる。しかし、バルサの右ウィングにはデンベレがいる。ハフィーニャは左サイドとなり、レアルは右サイドのカルバハルやバルベルデが対応することになる。ヴィニシウスに対峙するバルサの選手は、セルジ・ロベルトかセルジーニョ・デスト。どちらのセレソンが持ち味を発揮し、ゴールに近いところで仕事をするか。あるいは守備陣がいかに仕事をさせないか。このサイドの攻防も重要な見どころとなる。
ゴールチャンスを作れれば、前線にはどちらも決定力のあるストライカーを擁している。円熟味を増しているレアルのベンゼマに、ラ・リーガ初挑戦となるバルサのレヴァンドフスキ。
レアルのCBはアラバ、ミリトンが予想されるが、アラバはバイエルンでレヴァンドフスキとチームメイトだったことで動きを知り尽くしている。とはいえ、これは逆にも言えることで、どちらがやりやすいとかやりにくいとかはない。ベンゼマに対応するバルサのE・ガルシア、アラウホの両CBも同じで、すでに十分な対戦経験があるので戸惑うことはない。ゴール前の攻防は「個」の勝負というより、いかにパスワーク、組織で崩せるかになってきそうだ。
こうして考えていくと、やはりチームの熟成度、完成度でまさるレアルが優位かなと感じる。主導権を握っても戦えるし、劣勢になってもその展開を受け入れて勝利につなげることができる。ロドリゴという勝ちパターンの交代選手がベンチに控えているのも大きい。
バルサは可能性に満ちていて、とくに攻撃に関してはペドリ、レヴァンドフスキを中心に相手をかく乱することになるだろう。レヴァンドフスキが得点だけでなくまわりを使えるのは昨季CFを務めたピエール・エメリク・オバメヤンにはない大きな武器で、MFもより多くのゴールにからむ“バルサらしい”カタチが戻ってくることも期待できる。
ただ、守備に比重がある戦いを強いられたときにどうだろうか。
文/飯塚 健司
※電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)272号、8月15日配信の記事より転載