ロングボール回帰の兆し? “足元主体”に揺らぎが見えたプレミ...の画像はこちら >>

シティ指揮官のペップ Photo/Getty Images

現実路線の再評価

プレミアリーグで長年続いた“足元重視”の潮流に、わずかながら変化の兆しが現れている。全盛期のペップ・グアルディオラの影響を受けたショートパス主体のビルドアップに陰りが見え始めたのは、偶然ではない。

『Opta』が伝えている。

かつてプレミアは「キック&ラッシュ」の象徴とされたリーグであり、ロングボールは日常だった。しかし技術向上とともにこの戦術は過去の遺物と化し、今やロングパス(32メートル以上)の割合は2006−07シーズンの19.4%から2024−25シーズンには10.5%にまで低下している。

それでも、無謀な足元の展開が招くリスクが可視化された今、現実的な選択としてロングボールの価値が見直されている。特に今季、ショートパス偏重のチームが多くの致命的ミスを重ねた事実は見逃せない。相手のシュートにつながるエラー数が多かったサウサンプトン(51回)、チェルシー(45回)、アストン・ヴィラ(43回)、トッテナム(41回)らはロングパス割合が極端に低く、それゆえに相手に与えた決定機も多かった。

一方で、クリスタル・パレスはロングパス比率14.5%と高水準ながら、相手に与えた決定機はリーグ最少の19件。同様に、ボールを前に蹴る傾向が強いチームほど、敵にボールを渡すリスクを避けていたというデータも明らかとなった。

グアルディオラのような完璧なビルドアップを可能にするのは、圧倒的な技術力があってこそ。アーセナルやリヴァプールもこれに倣うが、現実にはその真似をして失敗する中堅・下位クラブも多い。バーンリーやサウサンプトンのように、チャンピオンシップで成功したスタイルが通用せず降格した例も、物語っている。

トッテナムがアンジェ・ポステコグルーの後任にブレントフォードのトーマス・フランクを据えた動きも、より現実的な戦術志向を示す象徴と言えるだろう。
ポステコグルーの下でのトッテナムはロングパス比率7.3%とリーグ2位の低さながら、敵陣40メートル以内でのボールロスト数は最多の354回。これに対し、フランク率いるブレントフォードは13.1%と高いロングボール率で安定感を保っていた。

プレミアがかつてのロングボール全盛に回帰することはないだろう。しかし、足元一辺倒からの脱却、状況に応じてリスクを避ける判断力の重要性が、再び評価されつつある。守備陣の「とりあえず蹴る」という判断が、新シーズンの勝敗を左右するかもしれない。

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