今季もブンデスリーガはバイエルンが首位を独走し、ノルマである2連覇に向けて歩みを進めている。百戦錬磨の絶対王者のなかで、20歳のトム・ビショフや17歳のレナート・カールの存在感が試合ごとに増している。
バイエルンに限らず、ブンデスリーガでは多くのクラブでU-20の選手がチームの主力となり、ピッチに立っている。

 ビショフはすでにドイツ代表にデビュー済み。さらに、どちらも19歳のアサン・ウエドラオゴ(ライプツィヒ)、サイード・エル・マラ(ケルン)などもドイツ代表に招集され、ウエドラオゴはデビュー戦で初ゴールをマークしている。同じく19歳のヤン・ディオマンデ(ライプツィヒ)、バズマナ・トゥレ(ホッフェンハイム)はコートジボワール代表として北中米W杯に挑む可能性が高い。これらの選手を加えて、ブンデスリーガで活躍する12名のU-20を紹介する。

CLでも得点量産のカール ウエドラオゴは代表でも活躍

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バイエルンは次から次にタレントが出てくる。今季は17歳のレナート・カールが出場を重ねている Photo/Getty Images

 レナート・カール(バイエルン/17歳)は左利きの小柄なテクニシャンで、俊敏性、スピードがある。トップスピードで仕掛けるドリブルは反則覚悟で止めるしかなく、大柄で屈強な身体を持つブンデスリーガのDFたちは手を焼いている。4試合先発、7試合交代出場ですでに2得点2アシストしており、バイエルンにとっては負傷欠場中のジャマル・ムシアラの穴を埋めて余りある存在となっている。

 CLのリーグフェーズでも実力を証明しており、4試合3得点という得点能力の高さをみせている。5節スポルティング戦では1-1で迎えた69分にゴール前へ飛び出し、コンラッド・ライマーからのクロスを左足で正確にトラップし、相手が身体を寄せてくる前に右足でフィニッシュして勝ち越し点を奪った。この得点でCLでは3試合連続ゴールとなったが、17歳290日での達成はキリアン・ムバッペが持っていた18歳113日を更新する史上最年少記録となった。

 トム・ビショフ(バイエルン/20歳)は視野が広く、得点につながる正確なラストパスを出せる左利きのボランチで、昨季はホッフェンハイムで5得点2アシストを記録。

質の高い選手はみなバイエルンへという慣例どおりに移籍すると、3節ハンブルガー戦から連続出場を続けている。

 基本はボランチだが、チーム事情もあって現在は左サイドバックで先発する試合が多くなっている。バイエルンは多くの試合で主導権を握るため、すでに3アシストと攻撃的な能力が存分に生かされている。一方で攻撃から守備に移る切り替えも早く、高い位置でのボール奪取で失点のリスクを早めに潰している。おもにボランチ、サイドバックをこなし、得点にからむ能力がある。いわば左利きのジョシュア・キミッヒのような存在で、バイエルンはもちろん、ドイツ代表でも中心になっていく可能性がある。

 アサン・ウエドラオゴ(ライプツィヒ/19歳)はキープ力+推進力があり、深い位置でボールを受けてからしっかりとボールを運べる。接触されてもバランスを崩さない体幹の強さ、密集地帯を抜けていく柔らかさを併せ持ち、今季のライプツィヒではインサイドハーフを任されて3得点3アシストとなっている。

 ドイツ代表のユリアン・ナーゲルスマン監督もその才能を注視しており、11月17日のW杯予選スロバキア戦で5点をリードする77分に試運転も兼ねてウエドラオゴをピッチに送り出した。すると、直後の79分にPA内でリロイ・サネからのショートパスに反応し、素早く左足を振り抜いてデビュー戦で初ゴールを決めている。このまま代表常連へと期待されたが、その後にヒザを負傷し、現在はブンデスリーガ2試合連続欠場となっている。復帰時期も未定で、ウエドラオゴは状態が心配されている。


 ヤン・ディオマンデ(ライプツィヒ/19歳)はコートジボワール代表でも活躍するウインガーで、ライプツィヒでは状況に応じて左右どちらでもプレイする。重心の低いドリブルは安定感があり、ボールが足元から離れない。加えて瞬間的なスピードがあり、相手が足を出してくるとスッとかわし、前方にボールを運んで相手を置き去りにする。ここまでブンデスリーガで6得点3アシスト。チームの攻撃をリードする存在になっている。

 圧巻だったのは13節フランクフルト戦で、右ウイングで先発して積極的にゴール前に顔を出し、ハットトリックを達成して6-0の大勝に貢献した。1点目は狭いPA内に入り込んでの右足ダイレクトシュート、2点目はPA外からの難易度の高い左足ミドルシュート、3点目は相手最終ラインの裏に抜け出してGKとの1対1を決めたもので、多彩なフィニッシュをみせての3得点だった。

市場価格が高騰のコファネ エル・マラは代表デビューも近い

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右利きで左ウイングを務めるエル・マラは、縦に仕掛けるよりゴールに向かうプレイが多い Photo/Getty Images

 クリスティアン・コファネ(レヴァークーゼン/19歳)は身長189センチの大型ストライカーで、今季レヴァークーゼンに加わると大量の選手入れ替えで再構築が必要ななか、すぐにポジションを獲得した。ブンデスリーガで12試合3得点、CLリーグフェーズでも1得点1アシストの数字を残し、シーズンがはじまってから就任したカスパー・ヒュルマンド監督の信頼を勝ち得ている。

 長い手足、懐の深さを生かして前線でキープできるタイプで、相手を背負っても正確にボールをさばくことができる。ポストになるだけではなく、反転するスピードが早く、瞬間的な動きで身体を入れ替えてゴールを向く。フィニッシュの場面で慌てることもなく、思い切り足を振り抜いてゴールネットを揺らす。コファネはアルバセーテから525万ユーロ(約8億6千万円)でレヴァークーゼンに加入し、右肩上がりで市場価格があがっている点取り屋だ。



 バズマナ・トゥレ(ホッフェンハイム/19歳)は昨季からホッフェンハイムでプレイし、後半戦になってポジションを獲得。今季は左ウイングを中心に、右ウイング、1トップなどを任され、開幕戦から全試合に先発して2得点3アシストでチームの上位進出に貢献している。

 縦に早い特長を持つが、単純にスピードで勝負するだけではない。ボールを運びながら対峙する相手の体勢、動きをよく観察し、駆け引きをしたうえで緩急をつけて抜き去る。フィジカルの高さを効果的に使えるタイプで、「個」の力でゴールチャンスを作り出すことができる。これまで、ASECミモザ(コートジボワール)を皮切りに、ハンマルビー(スウェーデン)→ホッフェンハイムとステップアップしてきた。ドイツ国内に限らず、ビッグクラブもB・トゥレに注目している。今後の動向に注目が必要な選手だ。

 ジャン・ウズン(フランクフルト/20歳)は開幕戦から5試合連続ゴールという得点力の高さをみせた右利きの攻撃的MFで、フランクフルトでは堂安律と良い距離感でプレイしていた。しかし、その後は筋肉系のトラブルで10節マインツ戦から欠場しており、復帰が待たれている。13節ライプツィヒ戦ではベンチ入りしており、そろそろピッチに戻ってきそうだ。

 前傾姿勢でスルスルと相手の間を抜けていくドリブルが特長で、いつの間にか周囲の動きを確認していてクイッと視線をあげて正確なパスを出す。
ゴールや相手GKの位置も頭のなかに入っており、シュートコースがあると遠い位置からでも狙う。ミドルレンジ、ロングレンジからの強烈なシュートもウズンの魅力のひとつになっている。

 サイード・エル・マラ(ケルン/19歳)は右利きの左ウイングで、昨季はローン先のヴィクトリア・ケルン(3部)で13得点5アシストをマーク。復帰した今季は左ウイングを中心に、1トップでもプレイして6得点2アシストで昇格1年目のチームを中位に導いている。

 タッチライン際を縦に突破してクロスというより、サイドでボールを持つとゴールに向かって斜めにドリブルを仕掛ける。ボールタッチが細かく、クイックイッと相手DFを揺さぶって逆を突いてゴール前に抜けだしてフィニッシュする。ファーサイドを狙うミドルシュート、クロスの質も高く、伸び盛りのエル・マラはドイツ代表を率いるナーゲルスマン監督の“リスト”に入っている。11月25日のルクセンブルク戦ではベンチ入りしており(出場はなし)、代表デビューも近そうである。
 

将来有望な2人のCB クリバリ&ヴシュコビッチ

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ヴシュコビッチはトッテナムからローン中。CBとは思えない巧さや柔らかさがある Photo/Getty Images

 ヨハン・マンザンビ(フライブルク/20歳)は強度の高い守備でボールを奪い、素早く切り替えてそのまま自分で前方に運べるボランチで、フライブルクでは出場停止だった2試合を除いて全試合に出場している。11節バイエルン戦から3試合連続ゴール中で、今季3得点2アシストとなっている。

 トップ下でのプレイも可能で、前線からのプレスで後方を助け、相手に自由なビルドアップを許さない。

スイス代表では右ウイングを務めることもあり、すでに8試合3得点だ。中盤の複数のポジションで稼働し、得点にからむ仕事ができる。マンザンビは守備力、攻撃力ともにハイレベルで、ひょっとしたらまだ明らかになっていない起用方法があるかもしれない。底知れない力を持つ選手だ。

 カリム・クリバリ(ブレーメン/18歳)は今季下部組織から昇格した身長191センチのセンターバックで、開幕戦に途中交代で出場すると、2節レヴァークーゼン戦からは先発で連続出場している。ボールコントロールが巧みな左利きで、精度の高いフィードを前線に出すことができる。長身、左利き、ビルドアップができる。この特長を考えると、今後のキャリアが楽しみな逸材である。

 高さだけではなく強さもあり、球際の攻防で負けないデュエルの強さもある。深い位置でボールを奪って1本のロングパスで状況を打開するシーンもあり、チーム内で欠かせない選手になっている。シーズン序盤のブレーメンは大量失点が目立ったが、GK長田澪、右サイドバック菅原由勢、そして左センターバックのクリバリなどが連係を積んだことで徐々に失点が減っている。

 ルカ・ヴシュコビッチ(ハンブルガー/18歳)は2023年時点で、18歳となる2025-26にハイデュク・スプリトからトッテナムに完全移籍することが決まっていた身長193センチのセンターバックだ。
昨季はハイデュクからのローンでウェステルローに所属し、28試合で7得点2アシストを記録。今季はトッテナムからのローンでハンブルガーに加わり、11試合ですでに2得点している。

 センターバックとは思えない技術力の高さがあり、最終ラインから自信を持ってボールを運ぶ。高さ、強さ、巧さの三拍子が揃っていて、すでにクロアチア代表でもプレイ済み。同国代表のヨシュコ・グヴァルディオルが台頭してきたときと同じような衝撃があり、来季はスパーズのトップチームに入るだろうと考えられるクオリティの高さの持ち主だ。

 メルト・ケミュル(アウクスブルク/20歳)は下部組織から昇格して3シーズン目を迎えて、ケガで欠場した1試合を除いてすべての試合に出場している。ブンデスリーガ11試合で2得点2アシスト。下位に沈むチームのなかで1トップ、あるいはシャドーのポジションでプレイして気を吐いている。

 前線にドンととどまるタイプではなく、左右に流れたり中盤に下がってきたりしてボールを受ける。そこから軽快なボールタッチ、素早い反転でゴール方向へ身体を向け、自分で仕掛けることもできるし、正確なラストパスも出せる。3節ザンクトパウリ戦では驚異的なジャンプ力で打点の高いヘディングをみせたシーンもあった(得点にはならず)。ケミュルは足元の巧さに加えて、クリスティアーノ・ロナウドのようなバネの強さも併せ持っている。

文/飯塚 健司

※電子マガジンtheWORLD312号、12月15日配信の記事より転載

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