ローマ Photo/Getty Images
EURO2032の開催候補地に
イタリアのサッカークラブが「スタジアムで稼げない」という構造問題は長らくセリエAの競争力を蝕んできた。だが2025ー26年シーズンが始まってから状況は動き始めている。
ローマは1953年からこれまでスタディオ・オリンピコを本拠地として使用してきたが、これはラツィオとの共用であり、「公的会社Sport e Salute」の所有スタジアムを賃借している状態となっていた。イタリアでは自治体所有などの公的なスタジアムの使用が圧倒的多数派で、ユヴェントスのようなクラブ所有のスタジアムが稀であり、そのユヴェントス・スタジアムでさえも2011年に開場したばかりとクラブの歴史を考えれば最近の話と言える。
そうした点からイタリアサッカー界ではスタジアムの売店と施設の売り上げや、試合以外の用途が弱いこと、そして施設の老朽化が進んでいるにもかかわらず公的機関が所有していることから許認可や関係者調整計画が停滞しがちという問題が度々指摘されてきた。
『Reuters』は具体的に2007から2024年に建設または再開発されたイタリアのスタジアムは6件にとどまっており、同期間にイングランド13件、ドイツ19件、フランス12件が進んだというデータを示した。そしてセリエAの2023-24年シーズンのマッチデーの収益が4億4000万ユーロで、この数字はプレミアリーグの半分以下だと報じており、設備面の立ち遅れを「欧州の他国とのギャップ」として位置づけている。
また、『Deloitte』はレアル・マドリードがベルナベウ改修の効果で2023-24年シーズンのマッチデーの収益を2億4800万ユーロまで伸ばしたと説明。バルセロナも本拠地カンプ・ノウの改修を行い、現在改修途上の段階で使用を再開している。スペインの名門2クラブはスタジアムを試合を行う用途のみではなく、コンサート、ホスピタリティ、観光、スポンサー資産を束ねた通年の収益機械として運用している点が大きく、これこそまさに新たにスタジアムを建てるイタリアのクラブが目指すところだろう。
ローマは新たなスタジアムをローマという街の伝統に着想した象徴的デザインとしながら、交通、サービス、環境配慮、都市統合の施策を組み合わせ、首都のスポーツと社会のハブとなる存在を目指すと掲げている。
イタリアとイングランド、スペインの収益の格差はスポンサーや放映権料等も絡むため、2つのスタジアムが新たに建設されたことで簡単に埋まるものではない。それでも、地域を象徴とするクラブの魅力向上を目指すスタジアム建設プロジェクトは今後長い期間で大きな恩恵をもたらすことは間違いないだろう。

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