この数字を叩き出しているのが攻撃陣で、リーグの得点ランキング上位5位のなかにバイエルンの選手が3名入っている。3年連続得点王を目指すハリー・ケインが24得点でトップに立ち、ルイス・ディアスが13得点で2位、マイケル・オリーセが10得点で4位タイとなっている。セルジュ・ニャブリもいるし、レナート・カールという若き才能も台頭。ただでさえ破壊力があるところに、昨年のクラブW杯で大ケガを負ったジャマル・ムシアラも復帰している。シーズン終盤に向けて、バイエルンはさらに火力を増している。
層が厚い攻撃陣のなかでもケインは絶対的な存在
ケイン、オリーセ、カールらを擁するバイエルンは今季、驚異的な得点力を誇っている Photo/Getty Images
バイエルンの基本布陣は[4-2-3-1]で、前方の[3-1]は起用される選手、スタートの立ち位置がだいたい決まっている。前線にハリー・ケイン、右ウイングがマイケル・オリーセ、左ウイングがルイス・ディアス、トップ下にセルジュ・ニャブリが定番のスタメンだ。このレギュラーメンバー4人のうち2人が外れた試合は21試合を終えて4試合しかなく、バイエルンは攻撃陣のメンツがほぼ固定されている。
異なるスタメンとしてはトップ下や右ウイングにレナート・カールが入るパターンや、ニャブリが左ウイングを務めるパターンがある。もっとも変則的だったのは7節ドルトムント戦、8節ボルシアMG戦で採用された組合せで、ニコラス・ジャクソンを1トップに起用し、ケインがトップ下に据えられた。
前線、右ウイング、左ウイングはケイン、オリーセ、ディアスがほぼ先発するが、このトップ下のポジションではここまで複数の選手が先発している。ニャブリ、ケイン、カールに加えて、ラファエル・ゲレイロが任されたこともある。ただ、R・ゲレイロがトップ下で先発するのは平常運転ではなく、これまでに3試合あったがすべて前述したレギュラーメンバー4人から2人が外れていた4試合のなかに当てはまる。
こうした攻撃陣のなかでも、21試合中19試合に先発するケインの攻守にわたる献身性は際立っている。前線に張り付いてボールを引き出すのではなく、前後左右に幅広く動いてボールに触る。守備で足を使うことを厭わず、ボールホルダーを追いかけてプレッシャーをかける。そのまま自分でボールを奪い取る→素早いトランジットで攻撃に移行するというシーンがあれば、ケインの助けを受けてまわりの選手が奪い取るシーンもある。
バイエルンはチーム最多得点のケインまで攻撃→守備、守備→攻撃の切り替えが早く、この意識が全選手に徹底されている。結果、試合によってはほぼ相手陣内でサッカーを進める。そうなるとチャンスの数も必然的に多くなり、これが高い決定力を持つケインの得点数につながっている。ブンデスリーガで24得点、DFB杯では6得点、CLでも8得点となっているが、これは過去2年間を上回るペースとなっている。
はじめてブンデスリーガでプレイした2023-24は32試合36得点、出場時間で割ると79分に1点というペースだった。2024-25は31試合26得点で、92分に1点とややペースが落ちた。
この背景にはバイエルンが国内では圧倒的な強者で、多くの試合で主導権を握り、多くのチャンスを作り出すという事実がある。とくに、今季のバイエルンは両翼だけではなく、トップ下、中盤の深いポジション、最終ラインにも「個」の力でチャンスを作り出せる選手がいる。ケインがハイペースで得点を重ねているのも納得である。
オリーセ&ディアスがサイドからチャンスを作る
今季の両翼ディアスとオリーセは、どちらもすでにブンデスリーガ2桁ゴールを達成している Photo/Getty Images
右にオリーセ、左にディアス。バイエルンの両翼はこの両名が基本で、ごくごくたまに右にカール、左にニャブリが配置されることがある。とはいえ、オリーセが右ウイングで先発しなかった試合は4試合しかなく、左ウイングに至ってはディアス以外が先発したのはわずか2試合しかない。
そして、オリーセが10得点、ディアスが13得点となっている。ケインが24得点なので、この3人でチームの総得点79得点中の6割にあたる47得点を叩き出していることになる。両翼はアシスト(PK獲得もアシストに計算)も多く、オリーセが18アシスト、ディアスが12アシストだ。得点とアシストを合計するとオリーセが28点、ディアスが25点となり、それぞれ出場時間で割ると前者が58分、後者は66分に1点をもたらしていることになる。
オリーセはとにかくボールコントロールがうまく、常に自分のリズムでプレイし、主導権を握ったなかで突破を仕掛ける。俊敏性、瞬発力に優れ、足元に飛び込まれてもスッとかわし、次の瞬間には飛び込んできた相手を後方に置き去りにしている。11節フライブルク戦は17分で2点をリードされる展開になったが、冷静に反撃し、オリーセが2得点3アシストの活躍で6-2の逆転勝利をもたらしている。
オリーセは突破力があるのはもちろん、キックの質も高く、プレースキックを任されている。このフライブルク戦でもCKからダヨ・ウパメカノのゴールを生んでおり、これもアシストの多さにつながっている。18節ライプツィヒ戦は珍しく58分から途中出場となったが、短いプレイ時間でなんと1得点3アシストしてみせた。
前述のとおり、オリーセがピッチにいると58分に1点が生まれる。そのため、右サイドでボールを持つとゴール前にバイエルンの選手がワラワラと入り込んでくる。そこに正確なパスが出される。または、マークが甘ければ自分でフィニッシュする。オリーセは好調を維持していて、16節ヴォルフスブルク戦から6試合連続アシスト中だ。
左のディアスは今季からバイエルンでプレイするが、リヴァプール時代とは違って迷いのないフィニッシュでゴールネットを揺らしている。開幕戦で1得点2アシストを記録したのを皮切りに、左サイドだけではなく中央にも顔を出す運動量の多いプレイスタイルで相手守備陣を翻ろうし、こちらはピッチにいると66分に1点をもたらしている。
21節ホッフェンハイム戦では自身初となるブンデスリーガでのハットトリックを達成した。この試合ではそれ以外にも2本のPKを獲得してケインの得点につなげており、3得点2アシストでチームが奪ったすべてのゴールにからんでみせた。自身の2点目(チームとして4点目)は右サイドからオリーセが縦に仕掛けて折り返したボールにニアサイドへ走り込んで“点”で合わせたゴールであり、オリーセとディアス、お互いの信頼と連係によって生まれた1点だった。
重鎮ニャブリに新鋭カール ムシアラ復帰でもう止まらない
ついに長期離脱から帰ってきたムシアラ。ゴールにつながったプレイをオリーセも祝福した Photo/Getty Images
重鎮ニャブリに新鋭カール ムシアラ復帰でもう止まらない
両サイドと前線に比べると、トップ下はより多くの選手が先発している。ニャブリが9試合、カールが6試合、ケインとR・ゲレイロが3試合ずつとなっている。ケインとR・ゲレイロに関してはイレギュラーな選択であり、実質このポジションはニャブリ、カールが務めてきた。今後はここに負傷から復帰したムシアラが入ってくるので、そうなるとトップ下の人選だけではなく、サイドも含めた組合せにバリエーションが出てくる。
ニャブリはトップ下+左右のウイングができるし、カールもトップ下+右ウイングで今季プレイ済みだ。
コンスタントに得点にからむ3人がいて、ケガがあったため今季はあまりスポットを浴びていないが、ニャブリもここまで6得点5アシストしている。ブンデスリーガで10年目のシーズンを迎えたニャブリには経験に裏打ちされた勝負強さ、決定力があり、大事なシーズン序盤戦では2節アウクスブルク戦から3試合連続ゴールでチームに勢いをもたらしている。ここ数年でバイエルンの攻撃陣はだいぶ顔ぶれが変わったが、ニャブリがいれば大丈夫という重鎮のような存在になっている。
対照的に、若くて勢いがあるのが17歳のカールだ。身長168センチはブンデスリーガのなかでは小柄だが、屈強な身体を持つ相手DFを手玉に取るテクニックとキレがある。小刻みなボールタッチでクイックイッと狭いスペースを突破する左利きのドリブラーで、すでに4得点2アシストしている。カールはCLでも6試合3得点と結果を残しており、コンパニ監督にとっては先発させて良し、途中出場で起用して良しの貴重な戦力となっている。
今季のバイエルンはシーズンを迎えるにあたりムシアラを負傷で欠くことで攻撃陣の選手層に不安があったが、カールの存在がその懸念を払しょくした。チャンスメイクするのはもちろん、自分で得点することへのどん欲さもあり、ゴール前への飛び出し、精度の高いフィニッシュも魅力だ。ムシアラの穴を埋めるという感じではなく、自らの特長を発揮して攻撃をリードする存在になっている。
こうした良質な選手たちが揃っているところに、昨年のクラブW杯で負傷したムシアラがいよいよ戻ってきた。復帰戦となった18節ライプツィヒ戦では87分に交代出場でピッチへ入り、88分にオリーセのゴールをアシストしている。ただ、これは左サイドからディアスが入れたクロスに少し触ったボールがオリーセのもとに流れたもので、パスを出したという感じではなかった。
いまはこのライプツィヒ戦から4試合連続で途中出場しており、徐々に実戦の感覚を取り戻していってる状況だ。そして、21節ホッフェンハイム戦では4-1でリードする68分にニャブリに代わってピッチに入り、トップ下でプレイ。終了間際の89分に相手PA内でボールを持ち、ダブルタッチでひとりをかわし、前に出したボールが長くなって一度は相手に渡ったが戻ってきたボールをディアスにパスして得点につなげている。狭いスペースに突っ込み、巧みな足技で複数の相手をかわすムシアラのストロングポイントが垣間見えたシーンで、オッと思わせた瞬間だった。今後、出場時間が増えるとともにこうした本来のパフォーマンスをみる機会が増えるはずだ。
ケイン、オリーセ、ディアス、ニャブリがいるところに、若いカールが台頭し、ムシアラも戻ってきた。バイエルンの攻撃はさらに火力を増しており、いよいよ止められない状況を迎えている。
文/飯塚 健司
※電子マガジンtheWORLD314号、2月15日配信の記事より転載

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