ネットの人気ジャンルの一つに、“吹き出物やニキビを潰す映像”というのがある。大きなニキビや吹き出物、腫瘍などをピンセットでつまんだり押しつぶしたりして、中から脂肪や角栓、体毛などがにゅるっと出てくる様子を楽しむのである。
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■隠れた人気ジャンル「ニュル動画」
吹き出物つぶしの様子を映した「ニュル動画」は多くのファンがいるジャンルの一つだ。グロ画像は開いた瞬間に閉じるという人でも、ニュル動画なら一度見始めるとなんとなく最後まで見続けてしまうという人は多いのではないだろうか。日本のみならず海外でも大人気で、ニュル動画を上げ続ける「Dr. Pimple Popper(ドクターニキビつぶし)」という人気YouTubeチャンネルには、なんと300万人以上の登録者がいる。
ニュル動画は決して気持ちの良いものではない。だが、ごく普通の人々の中で人気を得ているジャンルでもある。なぜ人はこんな動画を喜ぶのか? 米国・パデュー大学の哲学教授ダン・ケリー氏は「(ニュル動画は)ジェットコースターやホラー映画を見るのと似ている」と話す。ホラー映画やジェットコースターは安全な場所で“恐怖”を与えるためのものだが、ニュル動画は安全な場所で“嫌悪感”を覚えるためのものだというのだ。
■ニュルニュルと嫌悪感
嫌悪感は人間の根源的な感情の一つで、危険から身を守るための本能の一部ともいえる。ケリー氏によれば嫌悪感を与えるものには二種類があり、一つは食べてお腹を壊す可能性があるもの、もう一つは感染症を示す兆候だという。例えるなら、前者は腐った食べ物、後者はくしゃみや鼻水だ。嫌悪感は腹痛や感染症から身を守るための重要な感情なのだ。
だが、嫌悪感には対象から逃げる他に、もう一つ別の行動を招く。それはコミュニティ内で嫌悪感を共有することだ。嫌悪感を受ける何かの情報を仲間と共有することで、病気などのリスクを減らせるからだ。この本能的な行動こそがニュル動画人気の理由の一つだとケリー氏は考えている。気持ち悪い動画をSNSで共有したくなるのも、「誰かに嫌悪感を伝えたい」という本能によるものがあるのではないかということだ。
一方、ニキビつぶし映像自体が脳内にドーパミンを出させるのではないかという身も蓋もない説も存在する。誰もがSNSで共有するわけでもないため、あながち間違ってもいないかもしれない。
かつて自然の中で暮らしていた時代、皮膚にたかる虫や寄生虫を避けて、駆除する必要があった。先祖がお互いの皮膚をチェックし合い、皮膚の下の寄生虫を潰しあって喜んでいた記憶が、我々をニュル動画に導くのかもしれない。
謎の中毒性を持つニュル動画。その中毒性の裏には嫌悪感という本能があるようだ。
(編集部)
※イメージ画像は、「Thinkstock」より