作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。
1月25日(日)の放送は「村上RADIO~ラジオネームがお年玉~」をオンエア。
2026年1発目となる今回の放送では、リスナーのお便りの中から9通を紹介。メッセージを読まれたリスナーの一人ひとりに“お年玉”として村上さん特製のラジオネームをプレゼントしました。リスナーからの質問に対する村上さんのユーモアあふれる回答と、思わずクスッと笑ってしまうユニークなラジオネーム、そして村上さん選曲のバラエティー豊かな音楽を紹介していきました。
この記事では、中盤2曲について語ったパートを紹介します。
村上春樹 小説の推敲が大好き「いったん書き上げたものを書き直...の画像はこちら >>

村上RADIO



◆Mayer Hawthorne「You're Not Ready」
メイヤー・ホーソーン、ご存じでしょうか? 僕がわりに贔屓にしている歌手です。マーヴィン・ゲイを今の時代に移し替えたような、どことなく懐かしい雰囲気を持っています。自作曲もしっかりモータウンっぽいです。「You're Not Ready」という曲を聴いてください。『How Do You Do』というタイトルのアルバムに収録されています。

ホンジョビさん(27、男性、神奈川県)
<私は小説を書く時に推敲を繰り返すので、志賀直哉さんの姿勢を参考にしています。村上春樹さんは、小説を書く時に何回ほど推敲を重ねますか?>



小説をお書きになっているんですね。がんばってくださいね。
僕もなんとかがんばって書き続けております。最近は「がんばって」というのは“禁句”になっているみたいですが、まあ“キンクス”というバンドもあるくらいですから……、というのはしょうもない親父ギャグですね。

推敲についてですね。推敲、文章の書き直しですが、よくぞ訊いてくれました。僕はなにしろ推敲大好きなんです。最初の文章を起ち上げるのって、疲れるし、ときどき嫌になっちゃうんですけど、いったん書き上げたものを書き直すのって面白くて面白くて、いつまででもやっていられます。

アメリカの作家、レイモンド・カーヴァーさんも推敲が大好きという方でして、締め切りのある仕事ってまずやりませんでした。期日とは関係なく、納得がいくまで文章を詰めていたいから。僕も同じで、締め切りのある小説の仕事はまず引き受けません。何回推敲を重ねるか? さあ、数えたことないのでわかりません。カーヴァーさんと同じく、「納得のいくまで」としか答えようがないですね。

あなたのラジオネームは「幕の内弥太郎」です。
これは僕が一時期血迷って、自分の筆名にしようかと思った由緒あるネームです。心して使ってください。気に入らないかもしれませんが、それも運命です。

◆Jeremy Davenport「What Ever Happened?」
ジェレミー・ダヴェンポート、1970年生まれのアメリカ人、トランペッターであり、歌手でもあります。当然ながらというか、チェト・ベイカーの影響を受けています。自作曲も多く、なかなか良い雰囲気を持っています。そんな自作曲をひとつ聴いてください。「What Ever Happened?」。これは『Maybe In A Dream』というアルバムに入っています。

あるぱかぱんだ(30、女性、東京都)
<早速ですが質問です。村上さんは誰かに取材するときに心がけていることはありますか? 私は人文系の研究者としてご家庭に取材に行くことが多いのですが、短い貴重な時間の中で相手の像を少しでも鮮明にとらえるために、どのようなことが出来るかいつも悩みます。村上さんが取材する際に気を付けていることなどあれば、ぜひ教えてください>



僕は『アンダーグラウンド』という地下鉄サリン事件を扱った本を書いたとき、1年かけて60人以上の人にインタビューをしたのですが、そのときに僕は毎回、「この人を大好きになろう」と前もって決めていました。
そしてそういう思いがあると、どんな相手でもちゃんと好きになれちゃうものなんです。だってどんな人にも必ず素敵な部分はありますから。

さて、あなたのラジオネームは「ひやひや宅配便」です。とくに意味はありません。「山猫くろと」くんの親友です。

<番組概要>
番組名:村上RADIO~ラジオネームがお年玉~
放送日時:1月25日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/
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