作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。
2月22日(日)の放送は「村上RADIO~(博士も愛した)素数で聴く音楽~」をオンエア。
今回は、小川洋子さんのベストセラー小説『博士の愛した数式』になぞらえて、タイトルに2、3、5、7、11、13、17、19……などの“素数”が入っている楽曲にフォーカス。村上さんの選曲でお届けしました。
この記事では、タイトルに「8675309」が入った楽曲とクロージング曲、今日の一言を紹介したパートをお届けします。

村上春樹「素数の世界は、なかなか奥深い」村上RADIOで小川...の画像はこちら >>

◆Tommy Tutone「867-5309 / Jenny」
次はまた大きくぐいっと飛躍して、突如7桁の素数に突入します。8675309です。eight, six, seven, five, three-oh-nineと僕が歌っても、きっと知らない人が多いでしょうね。トミー・テュートーンというバンドが歌った、これもプリンスと同じ1982年のヒットソングです(註:1981年9月リリース)。けっこう流行りました。「867-5309 / Jenny」、ジェニーという女の子の電話番号です。これは実際にアメリカ各地に存在した電話番号でして、当時この番号の電話の持ち主のところには、ガンガン電話がかかってきて、「ジェニーはいますか?」とか訊かれて、ずいぶん迷惑したということです。気の毒ですね。
トミー・テュートーンの「867-5309 / Jenny」、ジェニー、いますか?

<収録中のつぶやき>
eight, six, seven, five, three-oh-nine、つい歌っちゃうね。


電話番号ソングは他にいくつかありまして、マーヴェレッツの「ビーチウッド4-5789」とか、ウィルソン・ピケットの「634-5789」とかね。でもどれも残念ながら素数ではありませでした。しかし、どちらの電話番号も下5桁が45789なんですが、たぶんこれアンサーソングみたいなものなんでしょうね。
ある数字が素数か素数じゃないか、昔は「素数表」というのがあって、それをいちいちあたってみるしかなかったんだけど、最近はAIに訊いたらすぐにわかります。「それは素数です」とか「それは素数じゃありません」とかあっさり答えてくれます。ずいぶん便利になったというか、つまらなくなったというかね……。

<クロージング曲>
Thelonious Monk「Friday The 13th」

今日のクロージング音楽は、セロニアス・モンクの演奏する「13日の金曜日」です。テナーサックスはソニー・ロリンズ、この曲の録音は1953年11月の13日の金曜日に行われました。案の定というか、録音は交通事故やら、メンバーの出演ドタキャンやら、主役の遅刻やら、その他様々なアクシデントに見舞われたみたいです。スタジオを借りたプロデューサーは頭を抱えたと思います。

さて、今月の言葉は小川洋子さんの小説『博士の愛した数式』から引用させていただきます。素数について、こんな一節がありました。


素数を見るたび、博士を思い出した。それはありふれた風景のどこにでも潜んでいた。スーパーの値札、表札の番地、バスの時刻表、ハムの賞味期限、ルートのテストの点数……そのどれもが、表向きの役割に忠実でありながら、裏に隠れた本来の意味を健気に守り支えていた。(新潮文庫175頁) 
注:この文章での「ルート」は物語に出て来る10歳の少年の愛称

素数、一度はまっちゃうと、なかなか抜けられない奥深い世界のようですね。
それではまた来月。

<番組概要>
番組名:村上RADIO~(博士も愛した)素数で聴く音楽~
放送日時:2月22日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/
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