脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。
TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。

この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに、茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。
9月13日(土)の配信では、リスナーから寄せられた「赤面」に関する質問に答えました。

赤面は“生命力”の証拠? 茂木健一郎「顔が赤くなるのは悪いこ...の画像はこちら >>

パーソナリティの茂木健一郎



<リスナーからの質問>
私は20代の会社員です。昔から恥ずかしくなったり、人前に立つと顔が赤くなってしまいます。また過去の失敗を思い出すだけでも赤面してしまいます。これは脳のどういった働きなのでしょうか?
「赤面」は悪いことではなく、脳の正常な働きだと聞いたこともあります。

<茂木の回答>
はい。まず、ほっぺがポッとなるのは悪いことではないと思います。大前提として、「顔が赤くなっている」「ドキドキする」「人に見られて恥ずかしい」と思うかもしれませんが、他人はそこまで悪いことだと思わないケースが多いのです。むしろ、「心がきれいな素直な人だ」と好感を持って見る人も多いでしょう。

他人からどう見られているかという、まさに「社会脳」(※他者との関係性を調整し、自分が社会的な存在として振る舞うことを可能にする脳の機能や、それに関わる脳のネットワーク全体を指す言葉)と呼ばれる回路が関係しています。

前頭葉にある「ミラーニューロン」(※他者の行動を観察しているときと、その行動を自身が実行しているときの、両方で活性化する神経細胞のこと)という神経細胞の回路が、他人と自分を鏡のように映し出します。
自分が赤面しているのを他人が見ていると感じると、その鏡に映った自分に恥ずかしくなってしまうのです。ですが、先ほど申し上げたように、必ずしも否定的な評価ではないことが多いのです。

顔が赤くなる仕組みは、交感神経と副交感神経のうち、交感神経が活発になった状態です。緊張して心臓がドキドキし、血管が開いて血圧も上がります。これは「今が大事なときだ」と体が準備している状態です。

この赤面は、例えば俳優が本番で演技をするときや、アスリートが100メートル走をする前など、生き物として潜在能力を発揮するサインでもあります。血行が良くなることで、最高のパフォーマンスを発揮できるようになるのです。ですから、赤面するということは、生き物としての機能が高いということでもあります。

「顔が赤くなって、見られたら恥ずかしい」と思うかもしれませんが、生き物として非常に元気な状態なのです。大切なのは、「赤くなってもいいじゃないか」と自分を受け入れることです。

顔が赤くなる反応そのものよりも、そのことによって自分が動揺したり、「他人にこう思われているのでは」と不安になったりする「社会脳」や「ミラーニューロン」の働きの方が問題となる場合が多いのです。

自分自身が赤面したことを受け入れるのは、前頭葉の働きです。
前頭葉がそれをどう解釈するかによって気持ちが変わります。ぜひ赤面したことを受け止めて、「生き物としては機能が高いことなんだ」と思っていただきたいと思います。

また、過去の失敗を思い出しただけで赤面してしまうということですが、これは逆に、普段から過去のことを思い出しておくといいかもしれません。人間は不意打ちされると動揺しやすいものです。ですから、気になる過去の出来事を避けるのではなく、自分の中で「あれはこういうことだったんだ」「自分の人生にとってはこういう意味があったんだ」と整理しておくと、いざというときに赤面せずに済むでしょう。

とにかく、ほっぺがポッとすることは、生き物としての機能が高い証拠です。自分の生命力を一生懸命活かそうとしているサインだと思って、そうした自分を受け入れてみてください。

<番組情報>
番組名:茂木健一郎のポジティブ脳教室
配信日時:毎週土曜 22:30配信(予定)
パーソナリティ:茂木健一郎
番組Webサイト:https://audee.jp/program/show/11745
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