笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。
1月24日(土)の放送は、先週に引き続き株式会社ビビッドガーデン 代表取締役社長の秋元里奈(あきもと・りな)さんをお迎えして、事業における生成AI活用、農業の未来について話を伺いました。

未曾有の危機をチャンスに変えた「食べチョク」の舞台裏…急成長...の画像はこちら >>

(左から)秋元里奈さん、笹川友里


秋元里奈さんは神奈川県の農家に生まれ、慶應義塾大学理工学部を卒業後、2013年にDeNAに新卒入社。2016年11月に株式会社ビビッドガーデンを創業。2017年8月に「食べチョク」を正式リリースし、リリース3年で利用率ナンバーワンの産直通販サイトに成長。そのほか、内閣府 規制改革推進会議専門委員、農林水産省 GI学識経験者委員、アスクル株式会社 社外取締役などを務め、世界経済フォーラムYoung Global Leaders 2024に選出されています。

◆「農業×AI」は相性が良い

ビビッドガーデンが運営する産直通販サイト「食べチョク」は近年、生成AIの活用にも積極的に取り組んでいます。例えば、ユーザーの求める商品がきちんと表示されるよう、検索周りに生成AIを活用していたり、生産者に対しては、購入者からの投稿への返信に対して、「一人ひとりに思いを込めて返したいけれど、ゼロから書くのは大変」という声に応え、投稿内容や生産者の口調を学習した返信文案をAIが作成し、生産者は、それをベースに最終的なメッセージとして投稿することもできます。さらに、お問い合わせ対応など、運営の裏側でも生成AIが活躍しています。

この話に、番組でAIを活用する企業や、AIを軸にしたサービスを展開する人の話を聞いてきた笹川は「皆さん『AIと農業はかなり相性が良い』とおっしゃっていますね」と語ると、秋元さんもうなずき、「“AIで職業がどんどん変わっていく”というふうに言われますけど、一番インパクトが大きいのはデジタルから取り残されていた業界かなと思っていて、農業もその1つかと思います」と言及します。

◆食べチョクが爆発的に広まったコロナ禍を振り返る

食べチョクの成長を語るうえで欠かせないのが“コロナ禍”の経験です。小中高の休校が発表されると、本来は給食向けに出荷していた野菜や、イベントが中止になり、出品予定だった商品の行き場がなくなり、「うちのスタッフに『なんとかして売ることはできないか』というSOSが全国各地から届きました」と秋元さん。

そこで、食べチョクはSNSを通じて生産者の窮状を積極的に発信し、「送料は負担するので、どうか買って応援してください」と呼びかけを開始。
その動きはメディアにも取り上げられ、多くの方からの共感を集めて“応援プラスお取り寄せ”で一気に拡散。結果的に、登録ユーザー数は約40倍、流通額はコロナ禍の2年間で約128倍に伸び、急成長を遂げました。

ですが、当時の現場は綱渡りのような緊張感が続いていました。というのも、1ヵ月分の注文が1日で入る状況となり、お問い合わせも急増。もともと大量注文を想定していなかったシステムだったことや、小規模経営が多い生産者の体制では限界も見えていました。そのため、管理画面の一括操作機能の整備や、伝票ミスの防止などの開発も、注文数が一気に伸びたタイミングで同時並行でおこなっていたと言い、「“お客さんが困らないように”という思いで一気に開発しました」と振り返ります。

また「注文を受けきれないのでは……」という不安の声もあったそうですが、「本当に生産者さんのSOSがすごく多かったですし、うちが『やめます』といった瞬間に販路がなくなってしまうので、『なんとしても全部引き受けなければ』っていう使命感がありました。 振り返ると“あのときに頑張って良かった”っていうのはあります」と語ります。

◆「デジタル×アナログ」の融合

続いて、笹川が「アナログな世界とデジタルの活用を絶妙な塩梅で落とし込んでいる印象がありますが、『デジタル×アナログ』に対するこだわりがあれば教えていただいてもよろしいですか?」と尋ねると、秋元さんは「デジタルは、あくまでも“ツール”だと思っています」と力を込めます。

アナログな作業には“変えられない価値”があると言い、「世の中が効率化されていくなかで、人はぬくもりを求めていたりするので、あえて非効率性を残すといったところは結構意識しています」と話します。

その姿勢は、生産者との関係性にも表れています。秋元さんによると、自分たちを「ネットで売るプロ」と位置づける一方で「作るプロ」ではないことを強調し、栽培方法やものづくりに対しての口出しはせず、それぞれの専門性を尊重する。
そうした対等な関係で住み分けをすることが、アナログとデジタルをうまく融合させるためのこだわりだと言います。

また「食べチョク」の特徴的な取り組みの一つが、地方銀行との連携です。現在、12の地方銀行が株主として参画しており、その主な役割は生産者や自治体の紹介と地域の橋渡しです。災害時には、地元の金融機関と連携しながら支援にあたることもあります。

東京に本社を置く同社にとって、全国に支店を構えることが難しいなか、地域に根差したパートナーと手を組むことで、目が届く距離でのサポートを実現しています。生産者にとっては「近くにサポーターがいる」という安心感が大きな意味を持ちます。

◆未来の日本の農業は二極化する?

最後に笹川は、「日本の農業はどう進んでいきますか?」と問いかけます。これに秋元さんは「この先は“完全に二極化”していく」と推測。現在、農家の平均年齢は約68歳で、新規就農者は増えつつあるものの、10年後には農業従事者の数が大きく減ることは避けられません。

そのなかで求められるのが、大規模化によって効率良く、安く作る農業。そして、小規模でも付加価値をつけて、高く売る農業という2つの方向性です。「逆に言うと、小さい規模で何も付加価値がつけられないところは淘汰されていってしまう。
ただ、(その農家が廃業しても)大規模の経営体が農地を引き受けてしっかり耕して、生産をちゃんと維持してもらう。そんな感じになっていくかなと思っています」と未来を見据えます。

そして、消費者に対しては「かかりつけ農家」を持つことを推奨し、「農家さんとつながっていれば、何かあったときに食料に困ることがありません。多くの人に、そういうかかりつけ農家さんが何人かいる世界になったらいいなと思います」と話していました。

次回1月31日(土)の放送は、株式会社CCIグループ執行役員システム統括部長、北國銀行執行役員デジタル部長の吉田茂史さんをお迎えします。CCIグループが注力しているDXへの取り組みなど、貴重な話が聴けるかも!?

<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/
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