本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。


今回の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと株式会社アイ・パートナーズフィナンシャル上席執行役員の宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「株式市場が織り込む“自民党総裁選”と“ステーブルコイン”秋にも発行か」というテーマでお話を伺いました。

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(左から)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保



◆総裁選に向けた期待感で株価上昇?

浜崎:今回、宗さまには「株式市場が織り込む“自民党総裁選”と“ステーブルコイン”秋にも発行か」というテーマについてお話しいただきます。

やしろ:今週に入り、日経平均株価は4万4,000円台に乗りました。これは石破総理の自民党総裁辞任の影響によるものなのでしょうか?

宗正:株式市場はさまざまな要因が絡み合って動きますが、今の動きの最大の要因はやはりそこでしょうね。

やしろ:「次の政権に期待」みたいなニュースで、株価が上がったというような見出しのニュースを目にすることが多いです……。

宗正:同じように、衆議院の解散が決まって総選挙というタイミングで、期待感からやはり株式市場が上がるケースも多いです。今回のように与党の総裁が辞任するタイミングは、現政権の支持率も低い状態の時ですから、次への期待感が生まれる訳です。

今回は次の自民党総裁、つまり次の総理大臣に対する期待感ですよね。昨日は、取引時間中に日経平均株価が4万4,000円台に乗りましたが、今日は終値ベースで4万3,837円67銭ということで、日経平均株価は史上最高値を更新しました。上値を追う動きが続く気配ですね。

衆議院も参議院も、今は少数与党という立場での自民党総裁選ですから、例えば新たな連立政権の枠組みの可能性もあって、日本の政治の変化率も大きくなることが予想されます。そこを株式市場が織り込み始めたのが今の動きです。


やしろ:そうですよね。自民党は今の連立を見直すかもしれませんし、次はどの党と組むのかちょっと読めない動きがあります。

宗正:日本の株式市場の参加者で特に大きな割合を占めるのが外国人投資家です。こういった動きというのは海外から見ても分かりやすいんです。他には、自民党総裁選後の日本の金融政策の方向性や財政出動の有無や規模、こういったところが今後の投資家の注目ポイントになると思います。

やしろ:なるほど。外国人投資家からすれば、総裁選の結果による社会の変化を見据えて、投資の資金を動かすということですね。

◆「財政出動」が株式市場に与えるインパクト

やしろ:「財政出動」という言葉は、株式市場の上昇と絡めてよく使われますが、やはり株式市場にとってポジティブなものなのでしょうか?

宗正:当初はポジティブに作用します。財政出動は、経済を活性化させるために、政府が具体的にお金を使う行為を指します。公共施設の建設や道路の整備、こういうことにお金を使えば、そこには雇用も生まれますし、街も便利になる。

経済情勢が良くない時は、企業も個人もお金をうまく使えていないことが多いんですね。だから政府が率先してお金を使って、経済活動を盛り上げる。
災害時の対応やコロナ禍のような状況の時にも財政出動は非常に重要で、結果として経済活動は活性化しますから、株式市場にとってはポジティブなんです。

ただし、政府がお金を使うということは、その分だけ借金が増える訳です。具体的には国債の発行ということになりますが、国債の発行が増えれば、日本の金利は上昇しますし、未来に負担を残すことにもなりますから、そこは全体のバランスを取る必要があります。

やしろ:わかりました。そしてここから約1ヵ月にわたっておこなわれる自民党総裁選については、どのように考えていますか? 自民党総裁選関連の動きが、日本の株式市場の動きに大きな影響を与えると思っても良いのでしょうか?

宗正:そう思っていいですね。株式市場を動かす主な要因を「市場のテーマ」と言います。10月4日の総裁選までの1ヵ月間は、市場のテーマは次の総理大臣に変わった後の日本の政策ということになると思います。株式市場は先の先を読んで動きますから、自民党総裁選で勝ちそうな候補者の政策を日々織り込んでいく訳です。

この「スカロケ資産運用部」も2019年10月から始まって丸6年。思えば毎年のように市場のテーマとして、自民党の総裁選や衆議院選挙や参議院選挙がありましたよね。一方で、この間の国際情勢は激変しています。日本だけが同じことの繰り返しでは、日本の国力が相対的に下がるのも仕方の無いことなのかもしれません。
GDP(国内総生産)も、昨年ドイツに抜かれて、日本は世界第4位ですからね。円安の影響もありますが、日本の経済力が落ち込んできている事実は認めざるを得ません。

やしろ:以前の日本はずっと2位でしたよね?

宗正:アメリカに次いで2位だった時期が長くて、その後に中国に抜かれて3位になりました。昨年ドイツに抜かれて4位になって、5位がインドです。しかもインドと日本のGDPの差は僅差なんです。

やしろ:なるほど。GDPは世界第4位で上位なのに、私たちの生活は良くならない、これは何なんだという話もよくありますよね。ただ、日本は人口が多いからGDPが高い訳で、1人あたりのGDPで考えると……。

宗正: GDPから1人あたりの幸福度を計算する時には、GDPを国民の数で割らなきゃいけないですからね。だから、本部長がおっしゃったように、(そういう計算をすると)日本の順位は大きく下がってしまいます。

やしろ:やっぱり土台は国力ですからね、今後の日本について、そこは心配です。

◆「ステーブルコイン」とは、一体どんなもの?

やしろ:そして、もう1つ最近の大きなニュースです。
「ステーブルコイン」というものが話題になっていますが、これは一体どんなものなのか教えていただきたいと思います。

宗正:ステーブルコインの「ステーブル」は、英語で「安定」を意味します。暗号資産と同様に、ステーブルコインはデジタル資産です。分散管理型台帳つまりブロックチェーンを基盤にしているので、ステーブルコインは価格が安定している暗号資産だという見方もあれば、暗号資産とは切り離して通貨建て資産と見るべきだといった意見もあります。

ステーブルコインの価格が安定しているのは、アメリカドルや日本円のような法定通貨と連動しているからなんです。日本円と連動する円建てステーブルコインは、1コイン1円が前提になります。先月8月の中旬に、国内で初めてステーブルコインの発行を前提とした資金移動業者(顧客間の資金移動を行うサービスを提供する銀行以外の事業者)が金融庁から正式に登録されたので、この秋にも発行されるんじゃないかという見方から、このステーブルコインという単語を最近よく聞くようになりました。

やしろ:このステーブルコイン、いくつか種類があるそうですが、具体的にどのようなものがあるのか教えていただきたいです。

宗正:1つ目が、代表的なステーブルコイン、法定通貨型担保のステーブルコインです。アメリカドルや日本円のような実際の法定通貨を裏付けとして発行されるステーブルコインで、最も安定性が高いものです。

2つ目は、暗号資産担保型のステーブルコインで、これはビットコインやイーサリアムのような暗号資産を担保に発行される形のものです。

3つ目は、アルゴリズム型のステーブルコインです。
こちらは担保は無くて、供給量の調整といったアルゴリズムで価格を安定させる形のものです。担保がないので、最もリスクの高いステーブルコインになります。

やしろ:ステーブルコインのように、新しく生まれたものにはやはりメリットとデメリット両方あるということでしょうか?

宗正:メリットとしては、海外送金のコストを低く抑えることができる点が挙げられます。送金から着金までの期間を短縮できるということで、通常は手続きの開始から送金まで数日かかるところが、ステーブルコインを使えばわずか数分で完了します。もちろん企業間の決済や日常のお買い物の支払いにも活用できます。急激なインフレ、つまり物価高の進行と自国通貨の下落に備えた使い方もできます。自国の通貨を銀行に預けても価値は下がり続ける状況下で、例えばドル建てのステーブルコインに交換するといった防衛策に有効ですね。

デメリットとしては、まだ担保の不透明性がありますし、法制度が整備されていない国もあります。ステーブルコインはデジタル資産ですから、バグやハッキングのようなシステム上のリスクもあります。これらはデメリットというよりも、リスクととらえるべきでしょうね。

ステーブルコインのような新たな仕組みの活用は、日本のように経済成長が頭打ちの国にとっては、日本円の価値向上や日本経済全体の発展にテクニカルな手法として有効だと思います。アメリカではすでに、ステーブルコインの市場が日本円で数十兆円の規模にまで拡大しています。
今後、日本国内でも資金移動業者の登録の増加が見込まれますし、今後の拡がりが楽しみです。

やしろ:結局のところステーブルコインとは、よりオフィシャルに近い暗号資産……みたいなことでしょうか?

宗正:法定通貨と連動して、動きが安定しているので安心・安全なものですから、個人的には通貨建て資産というイメージです。ただ、デジタル資産でブロックチェーンを使っているので「暗号資産の中の一つだ」と言う人が当初は多くなりそうです。現時点ではそこもまだ定まらない程の生まれたばかりの新しい資産なんです。

やしろ:逆に言うと、リスナーのみなさんも、まだ今はわからない人が多いかもしれないですね。これは今後、使い方なども世界中で決まっていくという形なんですかね?

宗正:そうなると思います。ステーブルコインの最大の特徴は安定性です。安定していれば様々な場面で活用できますから、使い方も多様化すると思いますし、普及スピードも速いと思います。

やしろ:来年には、本当に通貨の軸になってくるようなものかもしれないですね。

宗正:急速に普及が始まるその前に、先ずは「スカロケ資産運用部」のリスナーの皆さんにステーブルコインについてお伝えしました。愛と経済の伝道師として当然の使命です。

やしろ:ありがとうございます。


<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月~木曜17:00~19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ~)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/sky/
番組公式X:@Skyrocket_Co
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