TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。
9月6日(土)の配信では、リスナーから寄せられた正夢や予知夢、心と脳の関係性についての質問に答えました。
パーソナリティの茂木健一郎
<リスナーからの質問>
正夢や予知夢というのは、脳がどういう仕組みで見せてくれるのでしょうか? 心はハートにあると思っていましたが、脳だと言われてびっくりしました。脳って不思議でたまりません。脳のことがもっと解明されたら、心の病気もすぐに治せる時代が来るのでしょうか?
<茂木の回答>
いろいろと興味深いご質問をしてくださったので、一つひとつ回答していきたいと思います。
◆正夢・予知夢は「確率」の問題?
まず、正夢や予知夢を脳がどういう仕組みで見せてくれるのか、ということですが、科学的にはこれは確率の問題だと私たちは考えます。
ある夢を見て、それがたまたま一致する経験をその後した場合に、私たちはそれを正夢や予知夢だと感じるわけです。
ですから、夢で見たことが起こらないケースもたくさんある。科学では、起こるか起こらないかは確率のようなことで決まる、と考えるんですね。ですので、どちらかというと実際に起こることを予言するとか予知するというよりは、そもそもなぜ夢を見るのかということが脳科学的には興味があるところです。
これはなんと、過去の経験を編集して、その過程が夢として見られるようになるというのが、今の脳科学の考え方です。研究によると、過去2週間分の経験が夢となって再編集されて出てくるといいます。
今の人工知能(AI)が画像や映像を作るのと同じように、脳も過去2週間分ぐらいの記憶を編集して、脳の中に収納するときに夢として出てくるのです。過去2週間の出来事は、案外これから起こることと関係したりもします。
「あの人がこんなことを言ったから、次はこんなことを言うんじゃないかな」と思ったら、たまたまそうなったということもあるかもしれない。記憶の整理が夢の中に、ひょっとしたら未来にこうなるかもしれない、ということと偶然一致したときに、予知夢ということになるわけなんですね。
◆心臓がドキドキするのは、脳が認識しているから?
また、メッセージに「心はハートにあると思っていた」と書かれていますが、それは最もなことです。心は脳にある、というのが今の科学が伝えていることなんです。ところが、脳は「内臓感覚」といって、体のそれこそ心臓を中心とするさまざまな内臓、腸なんかともつながっています。
ですから、脳が感じることというのは、実は体が感じることでもあります。そのあたりをとらえて、昔の方は心というのは胸のあたり、心臓のあたりにあると感じていたんですね。例えば、好きな人に会うと胸がドキドキしますよね。それを脳が感じて、結局ドキドキしていると認識するんですけど、あたかも心臓に我々の心があるかのように感じていたということです。
「脳のことがもっと解明されたら、心の病気もすぐに治せる時代が来るのでしょうか?」というご質問ですが、その通りだと思います。
相談者さんが、いろいろこうやって考えることは、脳にとっても心にとってもとても良いことだと思います。ぜひこれからも、いろいろ考えていただけたらと思います。
<番組情報>
番組名:茂木健一郎のポジティブ脳教室
配信日時:毎週土曜 22:30配信(予定)
パーソナリティ:茂木健一郎
番組Webサイト:https://audee.jp/program/show/11745