脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティを務め、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。
当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」をTOKYO FMがお送りするポッドキャストポータルサイト「TOKYO FM ポッドキャスト」で配信中! リスナーの皆様から寄せられたお悩みに、茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。


今回の配信では、「思春期の息子との接し方」に関する相談に、茂木が脳科学の視点からアドバイスを送りました。

茂木健一郎「思春期は必ず終わる」高3息子が何も話さない…悩む...の画像はこちら >>

パーソナリティの茂木健一郎



<リスナーからの質問>
高校3年生になる息子が、まったく自分のことを話してくれません。「思春期だから仕方ない」と自分に言い聞かせていますが、この状態は脳の働きや思春期特有のものなのでしょうか? 思春期が“いつか終わる”と分かっていれば、今の状況も少しは受け入れられる気がしています。思春期は必ず終わりがくるものなのでしょうか。そのタイミングや、親としてできる関わり方があれば教えていただきたいです。(40代 女性)

<茂木の回答>
お気持ち本当によく分かります。子どものときはあんなに「ママ、ママ」と言っていた子が、急に「うっせぇな」となったり、何を聞いても何も言わなくなったり。「この思春期の脳、なんとかならないの?」と思ってしまうのは、すごく自然なことです。

結論から言うと、思春期は必ず終わります。

脳というのは本当に面白いんです。だいたい12歳~18歳ぐらいまでの間は、脳の回路が大きく繋がり変わる時期です。例えて言うなら、蝶の幼虫がサナギになって成虫になるとき、幼虫の細胞が一度ドロドロに再構成されて蝶になりますよね。
それと同じようなことが、まさに今、息子さんの脳のなかで起こっているんです。

幼少期、子どもにとってお母さんは「安全基地」です。その安心感があるからこそ、いろいろなことにチャレンジできます。ところが大人になる過程では、今度は自分自身が安全基地にならなくてはいけませんし、将来は誰かの安全基地になる必要もあります。その切り替え、つまり「親離れ」が起こるなかで、自分のことをあまり話さなくなるというフェーズは、どうしても通る道なのです。

特に男の子から見たお母さんのように、異性の親に対しては、自分のことを話さなくなる傾向があるように思います。

ただ、息子さんはおそらく、お友達同士のような別の場所ではしっかり話しているはずです。ですから1つの作戦として、1対1で無理に話そうとせず、息子さんがお友達と話しているところを遠くから見守るというのも、親御さんとしては意外と良い方法かもしれません。
お友達が遊びに来たときに「お茶でも飲んだら?」と差し入れを持っていくなど、自然なやり取りのなかで「あ、外ではちゃんと話しているんだな」と確認できるだけで、安心できるのではないでしょうか。

親の安全基地から独立宣言をするのが思春期ですが、一方で依然として「まだ頼りにしたい」という気持ちもどこかに残っています。相談者さんが一番できるサポートは、無理に聞き出そうとしないこと。その代わり、「いつでも話したかったら話していいんだよ」という安心感のシグナルを送り続けることです。
そうすれば、本人が「話したい」と思うタイミングで、自然と話してくるようになります。

焦らず、この時期は相談者さん自身が人生で楽しいと思うことをやって、少しずつ「子離れ」をしていくときなのかなと思います。

思春期の1年というのは、脳にとってものすごく大きな変化が起こる時期です。1年も経てば、驚くほど様子が変わっていることもありますよ。また息子さんが変わって、喋ってくれるようになったときには、ぜひまたお便りを寄せていただけたら嬉しいです。

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音声版「茂木健一郎のポジティブ脳教室」
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<番組情報>
番組名:茂木健一郎のポジティブ脳教室
配信日時:毎週土曜 22:30配信(予定)
パーソナリティ:茂木健一郎
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/dreamheart/
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