9月28日(日)の放送は「村上RADIO~マイ・フェイバリットソングズ&リスナーメッセージに答えます5~」をオンエア。
この記事では、前半2曲について語ったパートを紹介します。
Rosa Maria「Do You Wanna Dance」
ブラジル人の歌手、ローザ・マリアさんがボサノヴァのリズムで歌います。「Do You Wanna Dance」、ボビー・フリーマンの作った1958年のヒット・ソングで、ビーチボーイズのカバーでもヒットしましたね。このローザ・マリアさんのバージョンのアレンジ、とてもいいですよ。
Rihekiさん(34、女性、大阪府)
村上さんのサイン本が当たり、夢のようです。ありがとうございます。大切にします。次回以降のテーマは“失恋曲特集"でいかがでしょうか。
本が当たったんですね。よかったですね。おめでとうございます。
でもね、僕の乏しい経験から申し上げまして、失恋したときに心にぐっと届く曲って、内容的にあまり失恋とは関係のない曲が多いみたいです。意外にハッピーな曲が心にぐさっと刺さったりしてね。音楽って不思議なものです。
坂本美雨「Desafinado」
今日は「みなさんからいただいたメールを読む」回ですが、メールとメールの間にかける曲は、ブラジル・ボサノヴァ系の音楽を集めてみました。ボサノヴァ、お好きですか?僕は大好きです。
次にお聴きいただくのは、この番組でいつもお世話になっている坂本美雨さんが歌う「デサフィナード」、これも言わずと知れたアントニオ・カルロス・ジョビンの名曲ですね。
お元気ですかさん(19、男性、東京都)
僕は0歳のときから母子家庭で育ち、小学校進学のときに家族で佐賀県から上京しました。落ちこぼれないよう人並みに勉強し、有名大学に進学しました。順風な人生に聞こえるかも知れませんが、できるならば小さい頃から人生をやり直したい気持ちでいっぱいです。僕は「良い大学に進んで良い会社に就職する」という流れについていけません。人と競争することが苦手な性格で、体力もなく、何より気力がありません。ただ、母親が楽になれるように、母のために良い子でいなければと思い続けていただけです。将来、職を持って生きて行かなければいけないことを考えると不安に襲われます。自分にはやりたいことも何かの才能もありません。恋人などもいません。中身がない感覚です。
19歳の方からのメールです。このメールを読んで僕が思ったのは、これって僕が19歳のときに思っていたこととだいたい同じじゃないか、ということです。彼の気持ち、よくわかります。僕には当時付き合っていた女の子はいましたが、だんだんうまくいかなくなっていたし、将来どんな職に就けばいいのか思いつけなかったし、学校の成績もよくないし、これという才能もないし……と、慢性的な不安に襲われていました。19歳で慢性的な不安に襲われない人ってまずいないんじゃないのかな? で、じゃあどうすればいいの、と訊(き)かれても、ちょっと答えようがありません。僕の場合、なんか知らないうちに人生の大渦(おおうず)に巻き込まれて、そこでどたばたと悪戦苦闘して、ふと気がついたときにはそれなりに社会化された大人になっていました。
そういう大人になるまでの、通過儀礼としての大渦とか悪戦苦闘とかって、誰にでも多かれ少なかれ巡ってくるものなんだけど、人によってその様相はずいぶん違います。一般化はできない。もうこれは実際にやってみるしかありません。決して楽しいものじゃないけど、通り抜けるしかないんです。うーん、あなたへの励ましにはあまりなってないみたいだけど、すみません。
もう一度、19歳になりたいかと訊かれたら、「いや、けっこうです。あれはもう1回でじゅうぶんです」と僕は答えることになると思います。ほんとに。
<番組概要>
番組名:村上RADIO~マイ・フェイバリットソングズ&リスナーメッセージに答えます5~
放送日時:9月28日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/