8月31日(日)の放送テーマは、「加入していますか? 政府が支える地震保険」。財務省 信用機構課の髙橋洋明(たかはし・ひろあき)さんから、地震保険の目的や加入方法について伺いました。
(左から)杉浦太陽、髙橋洋明さん、村上佳菜子
◆9月1日は「防災の日」
9月1日は、関東大震災をきっかけに制定された「防災の日」です。日本は世界のなかでも地震が多い国であり、2024年の夏には「南海トラフ地震臨時情報」が初めて発表されました。大規模地震は“いつ起きてもおかしくない”と言われるほど、私たちの暮らしに身近なリスクとなっています。
もし地震が発生した場合、家具の転倒や水道管の破損、トイレの使用不能といった日常生活への支障だけでなく、家屋の傾きや倒壊、火災、津波などによって家そのものが壊れてしまえば、建て直しや家財の買い直し、仮住まいの費用など、生活再建までに莫大な費用がかかります。
こうしたリスクに備える手段の1つが「地震保険」です。これは地震や噴火、津波が原因で起きた火災、損壊、埋没または流失による被害を補償する保険です。たとえば「地震で火災が起きて家が焼失した」「地盤沈下で家が傾いた」「津波で家が流された」といったケースも対象となります。
髙橋さんは「通常の火災保険では、たとえ火災による損害であっても、地震や噴火、津波を原因とする建物や家財への損害は補償されません。そのため、地震保険はこのようなケースも含めて、地震による被災者の生活を安定させるために誕生したものです」と補足します。
保険の対象は居住用の建物とそのなかの家財や家具、家電などといった生活用品が含まれます。
◆保険に保険をかける制度
地震保険の最大の特徴は“官民共同の保険”という点です。「地震は、その発生頻度や損害程度の予測が難しく、それが巨大地震だった場合には被災するエリアも広く、被害件数や損害額が膨大になる可能性があります。そのため、さまざまな検討を経て、現在の民間の保険会社と政府が共同でおこなう地震保険が創設されました」と髙橋さん。
実際、東日本大震災の際には、地震保険から約1兆3,000億円もの保険金が支払われました。これほどの巨額を民間だけでまかなうのは困難なため、政府が“再保険”という形でリスクの一部を引き受けています。再保険とは、保険会社が大きな支払に備え、他の保険会社や政府にリスクを分散する仕組みで、いわば“保険に保険をかける制度”です。
なお、地震保険は単独で契約することはできず、火災保険とセットで加入する必要がありますが、火災保険に加入するときに“地震保険を外す”という希望を出さない限り、地震保険にも加入することになります。また、火災保険の契約期間の途中から追加で地震保険に加入したり、途中で解除することも可能です。
現在、火災保険に加入している人のうち約7割が地震保険にも加入しています。一方で3割の人が加入していない理由としては、「建物の耐震性が高いから」「大きな地震は起きないと思っているから」「保険料が高い」という点が大きいようです。
特に住宅ローンを抱えている家庭では“出費を抑えたい”という思いから、地震保険の加入を後回しにしがちです。しかし、大地震で家が損壊した場合、ローンが残ったまま新たに再建のための借金を抱えるリスクがあります。一方、地震保険には「耐震割引」というものがあり、免震や耐震性能に応じて最大50%の割引を受けられる制度があったり、払い込んだ保険料を所得から控除できる仕組みもあり、所得税や住民税の負担軽減につながります。
◆地震保険の保険金の使い道は自由
地震保険は官民共同の保険であるため、どの会社から加入しても補償内容や保険料はすべて同じです。同じ補償額であれば保険料に差が出ることはなく、損害保険会社の利益も含まれていません。制度そのものが、できるだけ保険料を安く抑えるように設計されており、目的はあくまで“被災者の生活を守ること”にあります。
また、実際に被害が発生した際には、できるだけ早く公正に保険金が支払われるよう、損害認定の基準も全国で統一されています。東日本大震災では、支払件数や金額が膨大であったにもかかわらず、発生から約3ヵ月で9割を超える件数の対応が完了しています。さらに、地震保険の保険金は使い道が自由である点も特徴です。住宅の修繕だけでなく、当面の生活費や引っ越し費用など、そのときに必要なことに充てられます。
最後に、髙橋さんは「防災の日を機に、改めて防災用品や家具の耐震補強をする人も多いと思いますが、この機会に地震保険についてもご検討いただければと思います。また、火災保険には加入しているけれど、地震保険に加入しているかどうか、記憶があいまいな方もいらっしゃるかと思います。
番組のエンディングでは、杉浦と村上が今回学んだ「地震保険」について復習。2人が特に注目したポイントをピックアップして発表します。まず、村上は“備えて安心 地震保険”を注目ポイントにし、「今日の放送でしっかり学べました!」と自信たっぷりに語ります。一方、杉浦は“みんなで支える安心「地震保険」”とスケッチブックに書き、「地震保険について詳しく知りたい方は、財務省のWebサイトにある地震保険制度のページをチェックしてください」とコメントしました。

(左から)杉浦太陽、村上佳菜子
<番組概要>
番組名:杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:杉浦太陽、村上佳菜子
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/manabiyori/
番組公式X:@manabiyori_tfm