作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。
1月25日(日)の放送は「村上RADIO~ラジオネームがお年玉~」をオンエア。
2026年1発目となる今回の放送では、リスナーのお便りの中から9通を紹介。メッセージを読まれたリスナーの一人ひとりに“お年玉”として村上さん特製のラジオネームをプレゼントしました。リスナーからの質問に対する村上さんのユーモアあふれる回答と、思わずクスッと笑ってしまうユニークなラジオネーム、そして村上さん選曲のバラエティー豊かな音楽を紹介していきました。
この記事では、後半2曲とクロージング曲、今日の言葉について語ったパートを紹介します。
村上春樹はラジオを聴きながら皿洗い!? 「ラジオって、何かを...の画像はこちら >>

村上RADIO



◆「Alice In Wonderland」
ディズニー映画の主題歌「不思議の国のアリス」といえば、ビル・エヴァンズのヴィレッジ・ヴァンガードのライブ演奏ですごく有名ですね。でも今日はオリジナルの映画サウンドトラックで聴いてください。これ、意外に耳にする機会がないんです。『The Best of Disney』というディズニーの映画音楽を集めたコンピレーション・アルバムから聴いてください。

ヨーロピアンクラッチ(26、男性、神奈川県)
<11/30放送の回を家で流しながら、同棲中のパートナーとおでんや肉じゃがをつついて冬の訪れを感じておりました。今月の言葉の後に村上さんが詠まれた「おい誰か 木枯らし2号を知らないか?」という一句に対し、それまで何も反応していなかったパートナーがいきなり「わかるな~」と言葉を漏らしました。その姿になんだか喜びと胸の温かみを感じ、この人には必ずプロポーズをしなければならないと確信しました。きっかけをいただきありがとうございました>



あ、そうですか、僕のくだらない句が少しでもお二人のお役に立ったみたいで、とても嬉しいです。
末永く幸せにお過ごしください。しかし、おでんと肉じゃがを一緒に食べたら、お腹いっぱいになっちゃいそうだけど、大丈夫ですか?

あなたのラジオネームは「猫の又三郎」です、略して「猫又」。夜道でお坊さんを襲ったりしないでくださいね。ぐぅぅ~(猫山)

◆「My Back Pages」
ブルーグラスのベテランミュージシャンが集まって、バーズのトリビュートをやったアルバムがあります。これがかなり面白いんです。今夜はその中から「マイ・バック・ページズ」を聴いてください。キース・ジャレットの演奏とはずいぶん違いますが、これも雰囲気があっていいですね。

2秒で入眠の毎日(49、女性、東京都)
<毎回とても楽しみに聴いています。恥ずかしながら私は何でも中途半端で、食べ終わった家族5人分のお皿を毎晩すべて洗い切ることがほとんどできません。でも、春樹さんの声と音楽が流れている間は不思議と全て洗い切ることができます。こんなこと言われても、と言う感じでしょうが、かなり助かっています。なぜだろう? 不思議です>



2秒ですぐ寝ちゃうんですね。
ちょうど夕食の片付けをする時間帯なのでしょうね。全国各地、同じシチュエーションの方が多くいらっしゃるのではないでしょうか? ラジオって、何かをしながら聴けるところがいいですよね。僕も実はラジオを聴きながら皿洗いをすることがよくあります。ときどき手を滑らせてお皿を割ってしまい、叱責(しっせき)を受けますが。お互い、がんばってお皿を洗いましょうね。

あなたのラジオネームは「タワシと私」です。洗い物の励ましになるといいんですけど。



さて、今夜の音楽の共通点。今日おかけした曲は、すべてバーゲン売り場でみつけて買ってきたものです。1枚100円か200円、高くて300円。でもどれもなかなかいけるでしょう。こんなに安くていいのかと、申し訳なく思っちゃうくらいです。
はい、僕はバーゲン・コーナーを漁(あさ)るのが大好きなんです。

<クロージング曲>
Stan Getz With Bill Evans Trio「You And The Night And Music」

今日のクロージング音楽はスタン・ゲッツの演奏する“ハッピー・バースデー”です。1974年8月16日、ゲッツはベルギーでビル・エヴァンズ・トリオと共演したのですが、当日はちょうどエヴァンズさんの45回目の誕生日でして、ステージの最初にゲッツは、それを祝ってソロでこの曲を吹きました。演奏はそのまま切れ目なしに「あなたと夜と音楽と」に移っていきます。

この演奏を全国の1月生まれのみなさんに捧げます、ハッピー・バースデー。
僕も1月生まれの1人ですが、さて、いくつになったんでしょうね? それは秘密です……、といってもそれほどの秘密じゃないんですが。ヒントはさっきこっそりお教えしました。
このスタン・ゲッツの演奏を聴いていて、ふと思いだしたんですが、アメリカにドロシー・パーカーという女性文筆家がおりまして、この人は毒舌家(どくぜつか)として知られていたのですが、彼女が同時代人の作家である、スコット・フィッツジェラルドについてこんなことを言っていました。

「スコットはどんなひどい作品も、うまく書かないわけにはいかなかった」

ふうむ、たしかにそれは言えてますね。フィッツジェラルドはお金を稼ぐためにずいぶんやっつけ仕事もしましたが、それらの作品は文芸的にはBクラスでも、文章はどれも実に巧みで、読みどころがあります。適当にちゃらっと書こうとしても、どうしても下手には書けなかったんでしょうね。
スタン・ゲッツの演奏にもそういう面があります。
この人ね、下手に吹くことができないんです。どんなに環境がひどくても、調子が悪くて気が乗らなくても、たとえ癌に全身を冒されて死を目前にしていても、いったん楽器を手にすれば手抜きができない。力を振り絞って、つい上手に吹いてしまう。うーん、僕はそういうタイプの人たちに惹かれてしまうのかな。

それではまた来月。

<番組概要>
番組名:村上RADIO~ラジオネームがお年玉~
放送日時:1月25日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/
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