TOKYO FMグループの「ミュージックバード」が制作し、全国のコミュニティFMで放送中のラジオ番組「デジタル建設ジャーナル」。建設業界のデジタル化・DXを進める株式会社クラフトバンクが、全国各地で活躍し、地域を支える建設業の方をゲストにお迎えするインタビュー番組です。
一般になかなか伝わりにくい建設業界の物語を全国のリスナーに広めます。

3月22日(日)の放送では、株式会社西村組に注目。取締役執行役員 社長の西村幸志郎(にしむら・こうしろう)さんをゲストに招き、これまでの組織改革や、社内DXについて話を伺いました。

「課題は伸びしろ」北海道の人口8,000人の町から世界へ 西...の画像はこちら >>

(左から)株式会社西村組 取締役執行役員 社長 西村幸志郎さん、クラフトバンク株式会社 津吉沙織里



◆企業ビジョンを新たに掲げ社内改革

北海道紋別郡湧別町に本社を構える株式会社西村組は、昭和11年創業の建設会社です。土木や建築を手がけるなかでも、海の工事を多く担うことから「マリコン」と呼ばれる存在で、人口約8,000人の町にありながら、従業員は170名を超えています。同社を率いるのは、現在30歳、4代目社長に就任した西村幸志郎さんです。

就任以前、会社は「もう戻りたくない」と語るほど課題を抱えており、挨拶やマナーすら徹底されていない状態だったといいます。こうした状況を変えるために掲げたのが、「誰もが知っている、誰も見たことがない建設会社」というビジョンでした。単なる改善にとどまらず、「面白い会社にするにはどうすればいいか」を起点に、組織改革に着手していきます。

取り組みのなかでは、旧来の慣習の見直しも進められました。真っ先にメスを入れたのは、暗黙の了解となっていた「お茶出し」の習慣でした。誰に指示されるでもなく、女性社員がお盆に温かいお茶を乗せ、役員たちの元へ運ぶ。
しかし、出された側からは感謝の言葉もなく、手付かずのまま放置されることも珍しくありませんでした。

「お茶出しなんて気持ち悪いからやめましょう」。西村さんはすぐさま役員チャットでこう断言し、旧態依然とした文化を廃止しました。性別やポジションで役割を決めつけるのではなく、ひとりのプロフェッショナルとして社員に向き合う。その決意の表れでした。さらには給与体系の是正にも着手し、長年働く社員の待遇を見直した結果、年間で数十万円単位の昇給を実現しました。

こうした改革は、ビジョンに紐づく評価制度とセットで設計されたものです。貢献した人がきちんと評価される仕組みを軸に、外部のブランディングパートナーと連携しながら、段階的に整備が進められました。「自分のなかでは最初からずっと決まっていたストーリーとして組み込みました」と西村さんは説明します。

さらに現在では、社員発信の取り組みも活発化しています。従業員からの提案により応募した「土木広報大賞」では、社員自らが案をまとめ、商業広告部門の優秀部門賞を受賞しました。西村さんが目指す「誰も見たことがない建設会社」は、社員一人ひとりの主体性によって、着実に形になりつつあります。


◆西村組が取り組む「ネオ・マイクロマネジメント」とは?

西村組では、現場と経営の両面からデジタル化の取り組みが進められています。特に施工現場では、1人でも測量が可能な機器の導入や、3Dデータによる図面作成がすでに当たり前の環境として整備されています。高額な3Dスキャナーの導入も含め、社員からの提案を積極的に採用している点が特徴です。

同社ならではの取り組みとして挙げられるのが、海上工事で使用する作業船のデジタル化です。GPSや自動追尾技術を活用し、ブロック設置などの作業を効率化。海の仕事を強みとする企業ならではのDXが進んでいます。

一方で、西村さんは、こうした環境整備に満足することなく、「まだ足りない」といいます。特に課題として挙げるのが、社員の自発性です。「ワクワクするアイデアは本当はあるのに出てこない」とし、その背景にはかつての「否定される文化」があると分析。だからこそ、意見を出しやすい組織への転換を重視しています。

その一環として取り入れているのが、「ネオ・マイクロマネジメント」と呼ぶ独自のマネジメント手法です。単なる監視ではなく、「こういう場合はどう考えるべきか」といった思考の軸を丁寧に伝え、将来的な権限委譲につなげていく考え方です。


さらに、社内コミュニケーションの質向上にも注力しています。SNSでの発信は「言葉を補うトレーニング」と位置づけ、テキストで伝える力を磨いています。現場とオフィスが離れがちな建設業において、チャットベースのやり取りを重視し、「まずはテキストで伝える」文化を根付かせてきました。バックオフィスでもRPA(パソコンでおこなっている事務作業を自動化できるソフトウェアロボット技術)を活用し、タスク管理や情報共有を自動化。作業の効率化と可視化を進めながら、西村組は組織全体でのDXを着実に推進しています。

「課題は伸びしろ」北海道の人口8,000人の町から世界へ 西村組の若きリーダーが挑む組織の再定義

(左から)クラフトバンク株式会社 津吉沙織里、株式会社西村組 取締役執行役員 社長 西村幸志郎さん



◆「課題」は「伸びしろ」と考える

西村組ならではの取り組みのひとつに、全編フィルムカメラで撮った写真で構成された「採用写真集」があります。そこには募集要項や給与規定といった採用情報は一切載っておらず、写っているのは、現場の土埃や潮風を感じさせる風景と、そこで働く「人」のありのままの姿です。

特に若手社員3名にフォーカスした特設ページでは、彼らの輝かしい活躍だけでなく、過去の挫折や「夢を諦めてここに辿り着いた」という等身大のストーリーが綴られています。順風満帆ではない個々の人生が、今の西村組という組織の厚みを作っている。その飾らない温度感が、就活生や転職者の心を動かしているのです。



西村組の変革は、社内外からさまざまな反応を呼んでいます。なかでも若手や中途入社の社員からは、ポジティブな声が多く寄せられているといいます。
近年では、公務員から転職してくる人材も現れ、AIやRPAを当たり前に使う環境に適応しながら、新たな提案を次々と生み出しています。なかには自らツールに課金し、「これをやってみたい」と主体的に動くケースもあり、整備された環境が挑戦を後押ししている様子がうかがえます。

一方で西村さんは、建設業界全体について「まだまだ課題が多い」と冷静に見つめています。しかしそれを悲観的には捉えず、「伸びしろ」として前向きに評価します。同社では、土木や建設を専門に学んでいない人材も多く活躍しています。未経験からでも力を発揮できる環境が整っており、実際に現場で成果を上げる社員も少なくありません。かつて「3K」と言われたイメージも変わりつつあり、「ブルーカラーの人たちが主役になる時代が来ている」と西村さんは語ります。

また、働き方の多様化も進んでいます。女性が重機を操縦する光景や、バックオフィスから現場へとキャリアを広げ、国家資格を取得して活躍する社員の姿も珍しくありません。年齢や性別、これまでの経験にとらわれず、「限界を決めずにチャレンジしてほしい」というメッセージには、業界の未来への期待が込められています。

<番組概要>
番組名:デジタル建設ジャーナル
放送日時:毎週日曜日 15:00-15:55
パーソナリティ:中辻景子・田久保彰太・金村剛史・津吉沙緒里
番組Webサイト:https://musicbird.jp/cfm/timetable/kensetsu/
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