今回の放送は、ゲストにDMMショートドラマ「キューティーハニー」の主演を務めるタレントの阿部なつきさんと、映画監督・プロデューサーの仁同正明(じんどう・まさあき)さんをお迎えして、映像業界におけるAIとの向き合い方について伺いました。
(左から)FROGMAN、仁同正明さん、阿部なつきさん、花奈澪
◆アクションシーンはリスクがいろいろ伴うもの
FROGMAN:まず、「キューティーハニー」自体は名作なので皆さんご存知かと思いますが、今回の作品はどうなっているのか、お聞きしたいんですけど。
阿部:歴史のある永井豪先生の「キューティーハニー」ですが、原作の魅力を活かしながらも、今回はショートドラマということで、テンポ感や短い間でも伝わるキャッチーさ、インパクトさも大事にしながら作っていった作品なので、ものすごくワクワクするようなものになっています。
FROGMAN:縦型ショート動画なわけですよね。
阿部:そうなんですよ。ショート動画で(原作版権がある)名作モノを縦型でやるっていうのは、恐らく史上初なんじゃないですかね。
FROGMAN:内容は今の時代に合わせて作り直したっていうことですか?
阿部:舞台がオフィスだったりして、パワハラだとか、セクハラだとか、ちょっとディープな話題も題材にしているので、見たら共感できてめちゃスカッとすると思います。
FROGMAN:オフィスあるあるネタなんかも入っているってことですね。今回はAIを導入しているってお話ですが、どういった箇所に取り入れていったんですか?
仁同:アクションです。やっぱりアクションシーンってリスクがいろいろと伴うじゃないですか。ワイヤーアクションで全部撮っていたら、もう撮り切れませんから。
FROGMAN:そこは予算をカットするためなのか、もしくはこの予算だとこういうことしかできないから、AIを使うことによってよりダイナミックな映像を作れるから、どちらの思いが強かったんですか。
仁同:僕らも人間なので、当然人間にしかできないすごいところを狙っていきたいので、実際のアクション自体を諦めているわけではなくて、ハヤテ真青さんという一流のアクション監督にも制作に入ってもらいました。
阿部:アクション稽古もたっぷりやらせていただいて、もう次の日は全身筋肉痛みたいな。
仁同:アクションのハードルってあるじゃないですか。見栄えのするアクションってなかなかすぐにはできないので、そこはCGなりAIでちょっと補完していくという考え方ですね。
FROGMAN:もっと踏み込んで聞くと、そもそもAIありきで企画がスタートしたのか、それともこれをやっていくとAIに頼らざるを得ないなっていう風に思っていったのか、どっちなんですか?
仁同:本音としては実写というか、人間と人間、役者と役者で撮り切りたいって気持ちがありましたけど、脚本を作っていく上で見所というか展開をいろいろと考えていくと、アクションっていうのは見所の大きいところなので、それを「この程度だったらできるかな」って想定して、遠慮して書くのって残念じゃないですか。
でも、ちょっと風呂敷を広げて書いた結果、撮らなきゃいけなくなってしまったと。さあ、どうする? そうすると、CG、AI、アクション……この中から今の潮流ではAIが普通に選ばれていったってことなんですよね。
◆AIグラビアがいることで、人間の良さが際立つ
FROGMAN:阿部さんにもお聞きしたいんですけど、グラビアの世界でも最近ではAIグラビアもあったりして、自分がグラビアをAI化するみたいなことってどう思いますか?
阿部:AIの女の子とかが人気者になったりとかして、私自身は普通にすごいなと思っています。一方でAIがあることによって、人間の良さがすごく際立っているようにも思えます。
FROGMAN:おお、前向きに捉えていますね。
阿部:ちょっとした不完全さとか、ライブ配信をしていてかんじゃったりとか。「あ、失敗しちゃった」みたいなところが逆にかわいいみたいな。
花奈:逆に無機質なものがいてくれてありがとうってことですね。「私たちが逆に際立つわ」って思えるという。
阿部:とはいえ、脅威には感じていますけどね。
FROGMAN:阿部さん自身が演じなくても、「顔のデータだけ渡しますから、勝手に演じてください。その代わり出演料をください」みたいなビジネスモデルもね。これって、既に声優さんで始まってきていますから。
阿部:ちょっと寂しいですけどね。
FROGMAN:でもそうなると、自分の分身がずっと世界中で稼いでくれるので。
阿部:その分身をどれだけ良く作れるかみたいな、指示する側の能力がもっと大事になってきそうですよね。それこそ監督とかも、演じるっていうよりは指示を出すわけじゃないですか。そういう職業の人は何か広がっていきそうな気がします。
◆AI=効率化ばかり追うとしっぺ返しを食らう?
FROGMAN:演者側にとってのAIって、例えばアクションが苦手っていうような人にAIが対応することで「芸の幅が広がる」っていう風に前向きに捉えたりする人もいるのかな?
仁同:今までは予算や人的なものといった、制作の制限を狭めるものがたくさんあったわけで、役者的にも演出的にも不本意かもしれないけど、AIがあることでこういう繋がりになるとか、こんな展開もできるっていう可能性の広がりはあるので、そういう今後のサンプルにはしていきたいですけどね。
花奈:今回、阿部さん自身も努力していて、そこにAIを取り入れることで100点を110点にするみたいな使い方だったじゃないですか。それはすごくいいなって思います。でも、AIを使って0点の人を無理やり100点の動画を出してしまうのは嫌だなって思っちゃう。
FROGMAN:今、うちのAIスタジオでCGっぽい作品とかクレイアニメーション作品を作っているので、プロとしてやっていた人たちからすると「ふざけんなよ」っていう風に思うんだろうなとかね。
その理解度というか、使う側にしても使われる側にしても、どうやって歩み寄っていくのかっていう、お互いの距離感をまだ測っていかなきゃいけない時代なのかなっていう気はします。
あと、AIって効率化っていうことで意識がコストダウンってことに集中しがちじゃないですか。そうすると、我々の仕事がどんどん貧しくなっていく気がするんですけど。仁同さん的には「こうあるべき」みたいな持論ってありますか?
仁同:(スタンリー・)キューブリック監督とまでは言わないですけど、必要以上に無駄をなくしていったり、効率化を図っていくことの面白みのなさ、つまらなさというものを、そのうち知ることになるんだろうとは思いますけどね。
花奈:今はお祭り騒ぎみたいに盛り上がり続けているけど、1回みんな冷静になるときが来るかもしれないですね。
FROGMAN:やっぱりAIってダメだねっていう風に我々が気づくのか、その逆でAIがものすごい映像のレベルまで行っちゃって、「あ、やっぱAIで十分じゃん」みたいなことになっていくのか、今はちょうど分岐点なのかなと思いますね。
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音声版「鷹の爪団の人工知能ちょっと来い!~AIを使って世界征服じゃ!~」
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<番組概要>
番組名:鷹の爪団の人工知能ちょっと来い!~AIを使って世界征服じゃ!~
放送日時:毎週木曜 21:30~21:55
パーソナリティ:FROGMAN、花奈澪
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/podcast/ai/
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