アーティストの「こっちのけんと」がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「G-SHOCK presents THE MOMENT」(毎週金曜17:00~17:25)。さまざまなゲストをお迎えし、生まれてからこれまでの時間のなかで、人の心に刻まれている「人生が変わった瞬間」=“MOMENT(モーメント)”を探ります。

今回の放送では、5人組バンド・Aqua Timez(アクア タイムズ)のボーカル・太志(ふとし)さんがゲストに登場。太志さんが影響を受けた人物について話してくれました。

Aqua Timez太志 苦しかった少年時代に救われたのは“...の画像はこちら >>

Aqua Timez・太志さん、こっちのけんと


2003年に結成されたバンド・Aqua Timezのボーカルを務める太志さん。「決意の朝に」「虹」など数々のヒット曲を世に送り出し、2018年にバンド解散。その後、デビュー20周年に向けて再結成し、2025年末まで期間限定で活動しています。

◆フェス後の“TikTok撮影”タイムにびっくり!?

こっちのけんと:というわけでAqua Timezの太志さんをお迎えしております。よろしくお願いいたします。いや、震えが止まらないっすもん。

太志:いやいや……。

こっちのけんと:マイクチェックのときに、僕が「こっちのけんとです、お願いします」って言った後に、「Aqua Timezの太志です」って聞こえた瞬間、もう僕の鳥肌止まんなくて。

太志:いやいや。こないだね、フェスで一緒だったね。


こっちのけんと:はい、「音楽の日フェス2025」でご一緒させていただいて。あれもよかったですね。

太志:イベント自体はもちろんすごくあったかいイベントだったし。その後に俺、初めてTikTokデビューしたの。けんとくんと、リトグリちゃんと。初めてだったんですよ、フェスの後にTikTok撮影っていうのがあるってことを知らなくて。

こっちのけんと:いや、そうっすよね。

太志:そこで、なんか令和を知りました。ずっと平成を生きてたんで。

こっちのけんと:そうですよね、だいぶ時代が変わっているというか。当時はフェスがあったとしても、出番が終わったらメンバーとご飯を食べたり、交流したりというのはあったと思うんですけれど、今はみんな(TikTok動画を)撮っているので。

太志:ね。
でも俺、それがこんなに楽しいんだってのを知りました。

こっちのけんと:本当ですか?

太志:みんなで踊ることも歌うことも。ライブもみんなで共演するときは、バンドマンだけど俺もちゃんと踊ろうと思って。

こっちのけんと:いや、本当、僕びっくりしましたよ! エンディングのときに、みんなで僕の楽曲の「はいよろこんで」でわちゃわちゃしましょうってときにパッと見たら、太志さんがめっちゃ踊ってて。

太志:踊ります、やっぱり。できる限り精一杯やるのが僕の仕事だと思っていて。

こっちのけんと:素晴らしい。超真面目だ。いや、本当にありがとうございました。

◆山田かまちに影響を受ける

こっちのけんと:太志さんの1つ目のモーメントは?

太志:「1995年頃、山田かまちの本を読んだ」です。「知ってるつもり?!」(日本テレビ系)という1人の人物をフィーチャーしていくドキュメンタリー番組が当時ありまして、そこで初めて山田かまちの人生を知ったんです。その人は世の中に出すためじゃなく、ノートになぐり書きで自分の思いを書いてたり、絵を描いていたり……。
もう亡くなっちゃったんですけれど、死後、1つの作品になって世の中に発表されたんです。

こっちのけんと:そうなんですね。亡くなった後に……。

太志:僕、家から3分のところに本屋があったので、いつも何かあったら行ってたんですよ。そこで「あ、かまちの本だ」と思って。

こっちのけんと:そこで出会ったんですね。

太志:そうなんですよ。もうとにかくね、10代の心の葛藤と、そういう激しさというか、それがすべて詰め込まれていて、壮絶だったんですよ。

こっちのけんと:山田かまちさんは、若くして亡くなった日本の画家兼詩人なんですね。

太志:そうですね。彼の作品にあった「生きることは死ねない奴の意地だ」という言葉を今でも覚えていて。いろんな解釈ができる言葉だと思うし、そのときの自分にとっては「死ねない奴の意地」っていうのであれば、いい意味で、生きることってそんな大したことでもないという……。
すごくシリアスになりすぎるほどでもない。死ねないなかで、なんとなく生まれて生きている自分も肯定できるような言葉(のように思えた)。もちろん、かまちは絶望も書いてたんですけど、なんか僕のなかでこの言葉がずっと残ってるというか。

こっちのけんと:そうなんですね。

◆苦しかった少年時代

こっちのけんと:当時はどんな少年だったんですか?

太志:「勉強を頑張りたい」と思って勉強に目覚めたんだけど、強迫性障害があって。20歳くらいの頃になってから知ったんですけれど。それで読書恐怖というか、教科書を読むのがちょっと恐怖になっちゃったんです。読んでも、しっかり読めてるか確認したくて、また戻っちゃうんです。それってけっこう、受験には致命的なんですよ。

こっちのけんと:そうですよね。時間内で問題を解かないといけないから。

太志:で、それを「直そう」って思うこと自体によって、勉強にどんどん集中できなく……。


こっちのけんと:意識が違うところに行っちゃいますもんね。

太志:そうなんですよね。そういうジレンマみたいなのをずっと抱えていて。それで、何か自分を肯定する術をいろいろと探してたってのはある。

こっちのけんと:それは言葉だったり?

太志:言葉だったり、音楽にも救ってもらったことが本当にたくさんある。そういう時期でしたね。

こっちのけんと:なるほど。僕もすごく生きるとか死ぬみたいなことに、かなり興味があって。そういうのを歌詞に置き換えたりもしてるんです。

太志:そうですよね。

こっちのけんと:でも確かに、この「意地」っていうのが、本当その通りだなとは思います。

太志:ありますよね。
人間としての意地って。

こっちのけんと:言葉にすると全然違うとは思うんですけど、要は別に誰でも死ねるっていう状況でみんな生きているからこそ、ただの意地で生きているってのは、確かにすごく納得感はありますね。

太志:なるほど。

◆ノートにつづった思い

こっちのけんと:続いて、太志さんの人生2つ目のモーメントは。

太志:「1995年、ノートの落書き」。まさにさっき、山田かまちの話をしましたけれど、僕もそういう、僕なりの苦しみがあったので、英語とか数学のノートになぐり書きで、それこそ詩を書くようになったんです。

こっちのけんと:ああ、残してたんですね。

太志:そうなんですよ。詩って呼んでいいか分からないけれども。もちろん英語とか数学って、大学ノートのようなものにちゃんと線の上に書くけど、詩ってそういう決まりはないから、1ページに1文字でもいいんすよ。

こっちのけんと:おお。もう、大きく場所を取って書いてもいいし。

太志:そう。「生きる」っていう(文字)だけでも、バンって。なんかそういうのを、別に誰に見せるわけでもないけれど、書いていた。それはたぶん、かまちの影響だったり(するのかもしれない)。

こっちのけんと:授業中とかに思いついて書く、みたいな感じだったんですか?

太志:受験勉強を家でするんですけれど、けっこうそのときに、1人のときにそういうの書きましたね。

こっちのけんと:あぁ、なるほど。教室だとなんかそういう気持ちに……。

太志:ならないし。だけど1人のとき、飼っていたシーズー犬がいつも勉強机の下にいて、夜中も足元にいてくれたんです。足でちょこちょこ遊びながらだったけれど、基本的には苦しみだったから。やっぱり人に言えないんで(そういう詩を書いていた)。

こっちのけんと:そうですよね。でも当時は別に、そういう気持ちを「歌詞にしよう」みたいなのは特になかったんですか?

太志:ないですね。楽器に触ったこともないし、音楽をやると決めてなかったから。

こっちのけんと:そのときはまだ、音楽はやられていなかったんですね。そのときのノートって、大人になってから見返したりとかってされましたか?

太志:ありましたよ。いや、壮絶だったなと思います。

こっちのけんと:そうですよね。多感な時期のメモって、やっぱり食らうものがありますよね。

太志:ありますね。未来が本当に闇に包まれていたわけだから。「もう俺どうなっちゃうんだろう? 本当に大丈夫なのかな?」みたいなところで、そのときの俺なりにギリギリで生きて、崖っぷちにいたんだなっていうのを思い出しますね。

こっちのけんと:なるほど。

<番組概要>
番組名:G-SHOCK presents THE MOMENT
放送日時:毎週金曜 17:00~17:25
パーソナリティ:こっちのけんと
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/moment/
番組公式X:@TFM_THEMOMENT
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