TOKYO FMグループの「ミュージックバード」が制作し、全国のコミュニティFMで放送中のラジオ番組「デジタル建設ジャーナル」。建設業界のデジタル化・DXを進めるクラフトバンク株式会社が、全国各地で活躍し、地域を支える建設業の方をゲストにお迎えするインタビュー番組です。
一般になかなか伝わりにくい建設業界の物語を全国のリスナーに広めます。

12月28日(日)の放送では、株式会社佐藤渡辺に注目。代表取締役社長の鎌田修治さんと技術営業部の大和田寿美さんをゲストに招き、力を入れている「環境景観舗装」や、建設業における「AI活用」について伺いました。

路面温度が10度下がる? 株式会社佐藤渡辺「道路をカーボンス...の画像はこちら >>

株式会社佐藤渡辺 代表取締役社長 鎌田修治さん、技術営業部 大和田寿美さん、クラフトバンク 中辻景子



◆景観と安全性を両立させた「環境景観舗装」に注力

東京都港区南麻布に本社を構える株式会社佐藤渡辺は、日本全国の道路づくりを支えてきた舗装会社です。2005年10月に「佐藤道路」と「渡辺組」という2つの道路会社が合併して誕生し、現在は中規模~大規模の舗装工事から、環境や景観に配慮した舗装まで幅広く手がけています。事業エリアは北海道から沖縄まで全国に及び、創業は1923年。2023年には100周年を迎えました。

同社の取り組みのなかでも、近年、特に力を入れているのが「環境景観舗装」です。一般的な車道向けの舗装とは異なり、公園や施設のエントランスなど、歩行者や自転車、ベビーカーが行き交う空間で多く採用されています。大和田さんは、その特徴を「車両中心ではなく、人が使いやすい場所の舗装」と説明します。

この舗装では、安全性や機能性に加え、周囲の建物や空間と調和するデザイン性も重視されています。大和田さんは「建物の邪魔をせず、引き立てる意匠性もあります」と語り、景観づくりの一部として舗装を捉える姿勢を示しました。


佐藤渡辺が環境景観舗装に注力する背景には、舗装会社としての差別化への思いがあります。アスファルトやコンクリートが主流の業界のなかで、「何か一歩踏み込んだことをしたい」という考えが原点にありました。透水性コンクリート舗装は30~40年前から手がけてきた技術で、当時は他社があまり取り組んでいない分野でもありました。

さらに近年は、気候変動への対応も重要なテーマです。猛暑が続くなか、「暑さに対して何かできる舗装を提供したい」という思いのもと、舗装という身近なインフラから環境問題に向き合っています。

◆環境に優しい舗装「ウッドクリート」とは?

佐藤渡辺の技術の結晶である透水性コンクリート舗装は、雨水がたまらず歩きやすく、濡れても滑りにくいのが特徴で、夏場には路面温度の上昇を抑える効果もあります。大和田さんによると、水をまくだけでアスファルトよりも「8度から10度ほど温度が下がる」こともあり、蓄熱しにくいため熱帯夜の緩和にもつながるといいます。

もう一つ注目されているのが、木質舗装の一種である「ウッドクリート」です。これは、木のチップとコンクリートを組み合わせた舗装で、「ウッド」と「コンクリート」を掛け合わせた造語です。針葉樹の木チップをセメントで固めて舗装することで、木が本来持つ炭素を内部に固定し、「カーボンストックされた舗装」として環境負荷低減に貢献します。

木材利用は自治体の認証制度や補助金の対象となることも多く、CO2削減や固定といった観点からも注目を集めています。大和田さんは、木質舗装のなかでも「セメントで固めつつ、木チップの表面を見せる」工法は、他社ではあまりおこなわれていないと紹介しました。


◆社員たちのAI活用を社内全体でサポート

続いて、企業DXやデジタル化の取り組みについての話を伺いました。佐藤渡辺では現在、「BIM/CIM(ビム/シム)」と呼ばれる3次元モデルを活用した建設生産・管理システムの導入を進めています。計画・設計から施工、管理までを3次元データでつなぐことで、業務の高精度化と効率化を目指しています。

一方で、課題も少なくありません。鎌田社長は、BIM/CIMに慣れた職員がいるなかで、現場の職人にとっては「やると大幅に楽になる」ことがまだ十分に伝わっていない現状を明かします。加えて、最新技術を導入しても、業務プロセス自体にアナログな部分が残っており、「理想と現場運用のギャップ」をどう埋めるかが大きなテーマになっているといいます。

そうした流れのなかで、次の一手として注目しているのがAIの活用です。建設業界はソフトウェアやデジタル分野に苦手意識を持つ傾向が強く、AI導入も他業界に比べて遅れているのが実情です。それでも鎌田社長は、AIを活用することで現場作業そのものよりも、書類作成や事務作業の時間を短縮できる可能性に期待を寄せています。残業削減や働き方の改善につながることから、効率化の第一歩目として取り組みを始めている段階だと語ります。

佐藤渡辺が特に期待しているのは、若手社員の存在。鎌田社長は、若い世代の吸収力に触れながら、「AIを使っていいんですよ」と柔軟に背中を押す環境づくりの重要性を強調します。
さらに、社内のAI運用におけるルールや管理の壁をできるだけ低くし、社員たちから自然と提案が上がってくる状態を目指しています。「若手から“こんなことがあるよ”という話が聞こえてくれば、すごく前進できると思うんです。AIに関しては力を入れていきたいです」と力を込めました。

◆佐藤渡辺にしかできない強みを追求

話はさらに未来へと広がります。鎌田社長が見据えるのは、自動運転社会を支えるインフラ整備です。道路の下にセンサーを埋め込むなど、新しい技術を取り入れた工事を通じて、「インフラ整備の一翼を担いたい」と展望を語ります。現時点ではまだ本格参入には至っていないものの、今後の大きな可能性として捉えています。

もうひとつの重要なテーマが、地球温暖化への対応です。夏場の路面温度を抑制する舗装技術についてはすでに取り組みを進めていますが、鎌田社長は「佐藤渡辺にしかできない何か」をさらに追求していきたいと話します。安心・安全を軸に、これからの時代にふさわしい道路空間をつくることが、同社の未来の目標です。

加えて、人材の視点も欠かせません。鎌田社長は「自社だけでなく道路業界全体を盛り上げたい」という思いを語り、「道路会社って楽しい」と感じてもらえる存在になることを目指しています。
「その一員として、自らも力を尽くしていきたい」と意欲をにじませました。

<番組概要>
番組名:デジタル建設ジャーナル
放送日時:毎週日曜日 15:00-15:55
パーソナリティ:中辻景子・田久保彰太
番組Webサイト:https://musicbird.jp/cfm/timetable/kensetsu/
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