鳥貴族の値上げが実施されたのは2017年10月。それから1年以上が経過し、鳥貴族は客離れに苦しむ状況が続いています。

一方で、ワタミが復活しています。外食産業は競争が厳しく、勢いのあるチェーンの顔ぶれが頻繁に入れ替えることが知られますが、鳥貴族は巻き返しに成功するのでしょうか。



■鳥貴族の既存店売上は失速



一般庶民の飲み会の大いなる味方、鳥貴族が値上げを行ったのが2017年10月。それまでの全品280円が298円(いずれも税抜き。税込の場合には302円から321円に)に値上げとなり、大きな話題となりました。



当時は、「たかが18円」、いや「6%も値上げとなっている」など様々な意見が飛び交いましたが、それから1年以上が経過し、鳥貴族の既存店売上高を見ると、残念ながら失速し、値上げの消費者への影響は大きかったと言えます。



同社の開示資料を見ると、2018年1月以降の既存店は2019年2月まで対前年同月比で連続してマイナスとなっています。ここまで14ヶ月続けてのマイナス成長となり、一時の勢いはなくなっています。



■より深刻なのは既存店の客数減少トレンド



同社の既存店は客数、客単価のいずれもマイナス月が継続しています。客単価に関しては2017年10月の値上げ効果があり、2018年9月までプラスが継続していました。



しかし1年を経過し、その値上げ効果も剥落して、2018年10月以降はマイナスに転じています。



より深刻なのは客数の減少です。

2017年12月以来、客数の減少月が15ヶ月連続となっています。2018年12月以降は、前年のマイナスを踏まえても更にマイナスです。



鳥貴族の既存店のマイナスは、2018年12月以降については、1年を経ていることもあり、単純に値上げの反動が影響したとだけでは言い切れない状況ともいえます。



■新規出店を抑制も業績改善はこれからか



既存店が完全失速する事態に、同社も手をこまねいている訳ではありません。



2019年3から7月は新規出店を一時停止し、直営店を21店舗削減、8月からは不採算店、自社競合店の退店を検討し、実施する予定です。



ただ、足元は2019年3月8日に発表された2019年7月期Q2累計決算を見てもわかるように、売上高が対前年同期比+8%ではあるものの、営業利益は同▲60%減と、減益率はQ1と比べて大きく改善しているとはいえません。



■ワタミの業績が復活へ



失速する鳥貴族の一方で、「和民」などの居酒屋チェーンを運営するワタミが復活しつつあります。



ワタミの既存店売上高は、2019年3月期Q3時点累計で101.5%とプラス成長を果たしています。今期は客単価こそマイナス月が生じているものの、客数は概ねプラスを維持しています。



2019年2月14日に発表されたワタミの2019年3月期Q3累計決算では、売上高は対前年同期比▲1.2%減であるものの、営業利益は同+43%増と大きく業績は回復しています。業績の変化からは、ワタミの復活が感じられます。



鳥貴族が2014年にIPOを行い快進撃が始まっていたまさにその頃、ワタミは業績の悪化から遂には虎の子の介護事業を2015年に売却するなど生き残りを図っていました。

攻守所を変えた、とまでは言えないものの、風向きが変わった状態とは言えます。



■栄枯盛衰は宿命ともいえる居酒屋産業



居酒屋業界は、「和民」に選好する「村さ来」や「つぼ八」の例もありますが、栄枯盛衰が付き物です。



鳥貴族は長く大阪郊外の焼鳥チェーン店に留まっていましたが、IPOを契機に一気に全国区に上り詰めました。そんな同社も、チェーン店系居酒屋の栄枯盛衰からは逃れられず試練の時を迎えている、と言えるのではないでしょうか。



巻き返しに苦戦している鳥貴族ですが、気軽に食事ができるということから「鳥貴族ファン」も多く、どのような巻き返し策を取るのか、今後の行方が注目されます。



【参考文献】

鳥貴族「価格改定に関するお知らせ」( https://ssl4.eir-parts.net/doc/3193/tdnet/1510913/00.pdf )



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