「好きな言葉」は誰にもあるものでしょう。母語が日本語である人もそうでない人にも、「好きな日本語」があるでしょう。
そんな言葉がTwitterでの「#普段ほとんど使わないが実は好きな日本語」というタグに集まっているのを発見。さまざまな分野の言葉が集まる中から、おそらくみなさんがテレビなどで見聞きしたことがあるだろう言葉を選んでみましたので、ご覧ください。
■なかなか使いどころがない言葉
「『どうだ明るくなったろう』。
使うことはまずないな」

社会科の教科書などで、「暗くてお靴が分らないわ」と言うご婦人に小太りでヒゲの紳士が百円札を燃やしてこのセリフを言う漫画を、みなさん見たことがおありでしょう。和田邦坊という風刺漫画家が描いた『成金栄華時代』という作品です。お札を燃やさないまでも、このセリフを口にする機会は少ないですね。
「世の中、なかなか一筋縄ではいかない事が多いですが、絶対的なリーダーシップと公明正大なバランス感覚の持ち主の方でしたら唱えることが可能なコトバ
『これにて一件落着!』」

みなさんご存じの「遠山の金さん」の名セリフです。揉めごとに出会っても快刀乱麻を断つ勢いで解決できる手腕があれば口にすることができるかもしれませんが、なかなかそうはいかないものです。
「変身」

「変身する」などとサ変名詞のかたちで使うことはあっても、「変身」という名詞をしかもかけ声として口にすることは、日常生活ではなかなかありません。でも、「変身」と口に出すことでいまの自分とは違う自分になれるなら、あるいは……。
■実は使う機会がある
タグは「普段ほとんど使わないが……」となっていますが、実は使いようはあるという言葉もあります。中には使っている人もいる、という言葉をここに集めてみましょう。
「ポチッとな」

1977年放送のテレビアニメ『ヤッターマン』にご出演の声優、八奈見乗児さんがアドリブで言ったのがはじまりだったこの言葉は、ご存じない人の方が少ないでしょう。
ボタンやボタン状のものを押すときには口にしたくなる言葉ですが、実際に口に出してみると爽快感があるのでおすすめいたします。
「かたじけない」

「言う機会がない」と思っておられる人も多いですが、機会は日常にたくさんあります。「ありがとう」と思ったときに使ってみてください。「ありがとうございます」の場面では「かたじけのう存じます」でOKです。
「参上、見参、推参」

『仮面の忍者赤影』は参上、『怪傑ライオン丸』は見参、『風雲ライオン丸』は推参。いずれも登場時に決めポーズとともに発する言葉です。意味は「来ました」ですから、待ち合わせなどで約束の場所に着いたときや、知人宅を訪れたときなどに言ってみるといいでしょう。自分の名や「ただいま」という言葉に続けて言うと、きっとかっこいいです。
■ぜひ言ってみたいが…
一度は口に出してみたい、けれどもほんとうに使える場面に出会わない! そんな言葉もやはりあります。
「前の車を追って下さい!」

一度は言ってみたい言葉です。しかし、①後を追わねばならない人物がいる、②その人物が車に乗って移動をはじめた瞬間を見た、③その直後に自分の指示通りに走ってくれる車に乗ることができる、という条件がすべてそろわないと言えないセリフです。そんなチャンスはやってくるのでしょうか。
「死して屍拾うものなし」

時代劇の名作『大江戸捜査網』の「心得之條」おしまいのフレーズです。口に出して耳に聞いて心地よい音の並びに整えられた「心得之條」をそらんじることができる人も多いかもしれません。しかし、引用以外のかたちで会話に使用する機会には、隠密でもなければ出会うことがなさそうです。
■まとめ
「日本語はうつくしい」ということは、しばしば言われることです。それを常日頃感じている人、そうでもない人、日本語に親しむ人の中にもさまざまおられることでしょう。「うつくしいから好き」という日本語がある人もいるでしょう。「よくわからないけど好き」という日本語がある人もいるでしょう。
みなさんが好きな日本語は、この記事に取り上げた中にはあったでしょうか。この記事をお読みになったのも日本語への縁かもしれません。好きだと思う日本語や普段使っている日本語について、その組み立てや意味や歴史などを、考えてみてはいかがでしょうか。日本語は、楽しいですよ。