2019年10月から始まった幼児教育・保育無償化。3歳以上の子どもの保育料が一律免除になったことで、多くの子育て世帯の経済的負担が軽減されました。

それだけでなく、子どもに平等な教育や保育を受けさせられることや待機児童の解消など、子育て環境におけるあらゆるメリットを狙っているのが幼児教育・保育無償化のはずでした。



一方で、「これは無償化による弊害なのでは?」と子育て当事者として思うことも少なくありません。筆者自身の経験からご紹介します。



■教育もしてくれて長時間預けられる、幼稚園みたいな保育園がいい



先日、筆者が近所のママ友Aさんとお茶をしていたときのこと。Aさんは4歳と2歳の姉弟を育てつつ、会社員をしています。筆者は子どもが1歳半なので、先輩ママとして仲良くさせてもらっています。



Aさんの子どもたちは、筆者の子どもと同じ保育園に通園中。年齢が違うので、「1歳児クラスはこんなことをして遊んでるみたいよ」「4歳児クラスだと行事がたくさんあって少し大変」と、筆者は保育園の先輩でもあるAさんにいろいろと話を聞いていました。



そのうち、Aさんは「実は、うちの子たちは転園させようと考えてるの」とポツリ。引越しでもするのかと思ったら、どうやらAさんは保育園のやり方が合わないのだとか。



「他の園はもっと保育士さんが一生懸命で熱心。あの園は全体的にゆるいから、このまま小学校入園前までいさせるのは不安」「あの園はトイレトレーニングもあんまりやらせないから、なかなかオムツ取れないよ。

他のママ友も『トイトレはお家でやってください』って保育士さんに言われてた」と、保育園への不満が飛び出します。



Aさんは子どもたちを2人とも、車で5分ほどのところにある学校法人が運営する認可保育園に入れるため、転園希望を出しているとのこと。そして、「やっぱり幼稚園みたいな保育園がいい」と言っていました。



■保育園に求める要求が多すぎるのでは?



筆者たちが住んでいるのは、東京郊外の住宅街。年々人口も増えているため待機児童も多く、「第10希望まで書いて、ようやく徒歩で20分行ったところの保育園に入園できた」というママ友も少なくありません。



筆者は正直、「働いているのだから、近所の保育園で子どもを預けられているだけでありがたい」という立場です。のびのびとゆるい保育園バンザイ。教育やしつけは家で頑張り、保育園では子どもがたくさん遊んで体を動かして健康的な生活を送られれば、それで十分ではないかと考えています。



そのため、毎日食事やオムツ替え、お昼寝など生活面はもちろんのこと、日々さまざまな遊びをしてくれる保育士さんに感謝でいっぱい。自分でペンすら握れない0歳児の思い出をなんとか残そうと、手形がたくさん押された季節の工作物を持ち帰るたびに、「これは子どもの作品ではなく保育士さんの作品!」という気持ちになっています。



そんな筆者は、Aさんの話に全く賛同ができませんでした。最後にAさんが言った「幼稚園のような保育園がいい」というのはつまり、勉強や教育、しつけなどもしっかり保育園にやってほしいし、長時間預けたいということでしょう。



長時間預けて仕事をしなければいけない事情があるのはわかりますが、当然のように「小学校に向けた勉強やしつけなどもやってくれ」というのは、あまりにも保育園に求める要求が多すぎるのではないかと感じてしまいました。



■「質の高い保育をタダで受けて当たり前」という意識



そしてそうした保育園への要求の多さは、保育無償化が助長したとも考えられます。Aさんは「認可保育園は自治体から補助金をもらってる。であれば、質が高い保育園に入れさせなければ損する」と言っていたからです。



保育無償化によって、「保育園に入れて当たり前」「質の高い保育をタダで受けて当たり前」という意識が芽生えやすくなっているのではないかと思いました。



幼児教育・保育無償化のデメリットとしては、しばしば保育士不足のみならず、保育や教育の質の低下に対する懸念の声が専門家等から聞かれます。しかし、親の間にも保育園に対する意識の変化が起こっているのではないでしょうか。預かってもらってありがたかった存在から、タダで親の希望やわがままが叶う存在へと。



まもなく次の4月入園の決定通知書が届く時期。保育無償化がスタートしてまだ数カ月しか経っていない今だからこそ、「質の高い保育をタダで受けて当たり前」と思っている人は保育園に対する意識を改めてみてもいいのではないでしょうか。



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