今は外貨預金やFX(外国為替証拠金取引)など、気軽にオンラインで外貨投資ができる時代です。特に、少額の証拠金を払って最高25倍程度までレバレッジがかけられて外貨投資ができるFXは、若者にも人気となっています。



しかし最近、ドル円為替相場はほとんど動かず歴史的な“凪”相場。円安にも円高にもほとんど動いていません。ユーロも似たようなものです。



相場変動(=ボラティリティ)が大きくないと、FXで儲けるチャンスは少ないので、FXプレーヤーのみなさんはやきもきしているのではないでしょか。加えて、米国も欧州も金利水準は日本と変わりません。それもあって、為替は動かないのです。



■金利の高い新興国通貨



ならば、新興国の高金利通貨で名を馳せているトルコリラやメキシコペソ、南アフリカランドあたりでひと稼ぎするか、というのは人情ですね。



なんと言っても、執筆時点での政策金利がそれぞれ8.25%、5.5%、3.75%と破格に高いですから、外貨預金の金利もFXのスワップポイントも、ドルやユーロと比べて相当高い水準になります。



ちなみに、一部の銀行が取り扱っているトルコリラ建て外貨預金の金利水準は、普通預金で1.5%、定期預金(円から)では、1か月:25%、3か月:7%、6か月:4%、1年:4%となっています。



1か月定期預金であれば25%(年率)も付利されるわけですから、日本の定期預金と比べればかなり魅力的に思えます。



■高金利である理由は?



では、トルコリラにせよメキシコペソにせよ、なぜそんな高金利が払えるのでしょう。国の財政が豊かで資金力があるから? それとも、銀行が儲かっているから? いずれも違います。



トルコリラを事例にその理由をズバリ申し上げると、それはトルコリラに信用がないからです。投資家が信用力の高いドル、円、ユーロを売ってまでトルコリラを買うからには、金利が高くないと割に合わないからです。



実際、トルコの足元のインフレ率は年間約13%。トルコの物価は年間13%も上がるわけです。何もしないとトルコリラ建てでは物価が上がります。一方、日本のインフレ率が0%だとすると、物価対比でみるとトルコリラの価値は年間13%ずつ減価する一方で、円は全く減価しません。



毎年価値が減っていく通貨と、価値が不変の通貨を比べてどちらの信用力があるか、という話です。



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<現在のトルコリラ・円為替レート> 1トルコリラ=15.6円
<インフレ率(年間)> トルコ:13%、日本:0%
<1年後の物価:現在を100とする> トルコ:113、日本:100 
<1年後のトルコリラ・円為替レート> 1トルコリラ=13.8円(円高 15.6円✕100÷113)
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■高金利通貨は高インフレ国通貨



というわけで、たとえトルコリラ建ての1か月物定期預金で年間25%(月間1%少々)の利息をもらったところで、どうせインフレで減価するのは目に見えているわけです。これは高金利通貨国に共通した問題点です。



もっとも表面金利だけ見れば、先進諸国比でかなり高金利ですし魅力的に見えるのは確かです。



加えて、先進国企業が新興国でビジネスを展開する場合、現地通貨が弱含くむことによる損失を懸念するよりも、ビジネスの成長性をより重要視して資金を投資しますから、外貨預金でも同じではないかとも考えてしまいがちです。



図表1はトルコリラ、メキシコペソ、南アフリカランドの対円為替推移です(過去10年、指数化)。

見事に円高になっているのがお分かりになるでしょう。



確かに、メキシコペソは対円で2013年初頭から2015年末迄は円安基調でしたが、長期的に見ると円高です。トルコリラ、南アフリカランドは対円で強含んだ局面がほとんどありません。



図表1:トルコリラ、メキシコペソ、南アフリカランドの対円為替推移



トルコリラが儲からないワケ〜高金利通貨はなぜ高金利なのか

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注:各種データより筆者作成(期間:2010年7月10日~2020年7月12日、対円で指数化)



■為替リスクとは?



あえて言い切ります。高インフレ・高金利通貨国への投資は現地通貨安で損するか、上手く行ったとしても国内投資とトントンになります。理論は上述の通りです。



唯一、日本で投資する以上の超過収益が出る可能性があるのは、



(1)投資対象資産が円ベースで換算した場合、国内で運用する以上のリターンを計上している場合
(2)同時に、そのリターンを円で収益化できる場合



になります。



ざっくり言うと、ここまであれこれ言ったことが「為替変動リスク」になります。結局、海外投資は為替変動リスクを大なり小なり負うことになります。筆者はリスク管理を行いながら外貨投資をしていますが、結局、(1)と(2)を達成できる投資対象資産に限って投資しています。



余談ながら、読者が加入されている国民年金・厚生年金資産のほぼ半分は、海外資産に投資されています。好む好まざるに関わらず。



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