■問題は「世代内不公平」にある



財政赤字は世代間不公平ではない?財政が赤字になる本当の理由と...の画像はこちら >>

財政赤字は子供たちに借金を残すもので、世代間不公平だと言う人がいますが、それはミスリーディングです(経済評論家 塚崎公義)。



■財政赤字だけを考えずに遺産の事も考える必要



我々が払うべき税金を子供達に払わせるのが財政赤字だ、という点については、異論はありません。

その部分だけを狭く捉えれば、たしかに世代間不公平でしょう。



しかし、子供たちの世代は我々世代から遺産を相続します。家計金融資産は2000兆円ありますから、政府の借金額より多い金額を相続するのです。それを使って増税分を払えば良いのですから、子供たちに文句を言われる筋合いはありません。



実際には、金融資産以外にも実物資産も相続されるわけですから、遺産額はさらに大きくなるはずです。



そして、極端な話をすれば、子供たちへの増税さえ不要かも知れません。数千年後には少子化で日本人が最後の一人となり、その人が死ぬと2000兆円と実物資産が国庫に入りますから、政府の借金は何の問題もなく返済できるのです。



これは極端な話ですし、実際に日本人が最後の一人になる事は考えにくいですが、論理的に物を考える際には、こうした極端な事例を考える事が役に立ちます。数千年後にすべての問題が解決している可能性がある、ということは、今の問題も突き詰めればそれほど深刻ではない、という事に気づくからです。



問題は、遺産が相続できる子と出来ない子の間に「世代内不公平」があることです。これについては、相続税を増税すべきだと筆者は考えています。たとえば相続税率を100%にすれば政府の借金問題は数十年で一気に解決します。

そこまでしなくても、「配偶者と子がいない場合には、兄弟姉妹に相続させずに遺産は国庫に入れる」と決めるだけでも状況は大きく改善するでしょう。その点については別の機会に。



■財政赤字を減らしても世代間の関係には変化がない



我々が増税に応じて、財政赤字を減らしたとしましょう。我々は預金を引き出して納税するわけですから、我々の預金が減ります。我々世代が歳出削減によって財政赤字を減らしたとしましょう。我々の給料が減りますから我々が貯金する余裕がなくなり、我々の預金が減ります。



そうなると、子供たちが我々世代から相続する財産が減ります。子供たちは増税されずに済みますが、同額だけ相続する財産が減るならば、同じ事です。



悪くすると、財政再建によって景気が悪化して税収が落ち込むかも知れません。景気は「税収という金の卵を産む鶏」なので、財政再建を焦って景気を殺してしまうような愚は避けなければならないのです。



増税による景気悪化によって税収の増加分が漏出してしまえば、あるいは歳出削減による景気悪化によって税収が落ち込めば、我々の貯金は大きく減るのに政府の財政赤字は少ししか減らない、という事も起き得るわけです。そうなれば、子供たちが増税される額が少ししか減らないのに相続する財産は大きく減るわけで、事態は悪化してしまうかもしれません。



■そもそも財政赤字は我々の贅沢の結果ではない



そもそも財政赤字がなぜ発生したのか、という点についても、誤解している人が多いようです。財政が赤字である原因は、我々が贅沢せずに節約したから景気が悪くなった事にあるのです。



「財政赤字は、我々が贅沢した分の費用を増税という形で子供たちに負担させるもので、世代間不公平だ」という人がいますが、それは違うのです。



財政が赤字なのは、税収が少なすぎるか歳出が多すぎるか、どちらかの理由によるものです。そして、景気が悪いと両方成り立ってしまうのです。不況だと税収が減る一方で、景気対策が必要になるため歳出が増えてしまうからです。



さらに、不況だと増税ができません。バブル崩壊後の長期低迷期に、本来はもっと増税したかったのに、景気が悪かったために思ったように増税できなかったから赤字が溜まっていった、という面もあると思います。



思えば過去数十年の間で、一番財政赤字が小さかったのは、バブル期でした。皆が贅沢をしていて景気が大変良く、税収が大幅に増えた一方で、景気対策が不要だったためです。「当時の大人が贅沢をしすぎたから子孫に借金を残した」というわけでは無い事は容易に理解できるでしょう。



バブルの再来を期待するわけではありませんが、好景気の再来は大いに期待したいですね。



そのためには皆がもっと贅沢をしなければならないのですが、老後不安を煽る人たちが多い事もあって、人々が従来以上に節約志向になっているのが気になります。皆が節約すると物が売れずに景気が悪くなり、皆が貧しくなってしまうでしょう。財政赤字だけの問題ではなく、家計も貧しくなってしまうのです。



せめて新型コロナが収束した後は、「リベンジ消費」が盛り上がって景気が絶好調となり、皆が豊かになる、という事を期待しましょう。



本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。



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