中国経済の失速がリスク要因として注目されていますが、リスクと同時にチャンスという面もあり得るでしょう。(経済評論家 塚崎公義)。



■中国経済の失速リスクに注目



中国経済が失速するリスクが注目されています。筆者が重視しているのは、不動産バブル崩壊、ゼロコロナ政策の影響、「共同富裕」の影響、の3点です。



中国経済は、10年以上前から「不動産バブルが崩壊する」と言われ続けてきて、論者はオオカミ少年のようでしたが、ここへ来て本当に不動産バブルが崩壊しそうな気配が濃厚となっているのです。



中国では共産党政権のグリップが効いているでしょうから、日本と異なり、バブルが崩壊しても金融危機に陥る事は避けられるのかも知れません。



しかしそれでも、不動産の在庫過剰は避け難いでしょうから、新規不動産投資は止まりかねません。不動産建設は中国経済の主要産業ですから、それだけでも中国経済を失速させる要因となりかねないのです。



■【中国経済】ゼロコロナ政策が日本に与える影響



また、ゼロコロナ政策により、突然大都市がロックダウンされ、生産活動等々が止まってしまうリスクもあります。すでに4−6月期の経済成長率は失速気味でしたが、新型コロナが変異するたびに感染力を強めていくとすると、次は更に大きな影響が生じるかも知れません。



中国経済が失速すれば、中国向けの輸出が激減し、日本の景気にも大きな影響が出るでしょう。



ロックダウンの場合には、反対に中国製の部品が入手困難となって国内生産が滞るというリスクにも要注意です。



中国政府が掲げている共同富裕という政策も気になる所です。



「金持ちに重税を課して庶民に山分けする」というのであれば、「重税を払っても豊かに暮らせるだけ稼ごう」というインセンティブが残りますが、ある日突然に「お前の事業は共産党政権の安定に有害だ」と言われて禁止されたりするリスクがあると、怖くて事業に手が出せない、という実業家も多いでしょう。



こちらは急激な失速というよりも中国経済の活気が失われて中長期的な展望が見えにくくなるという事かも知れません。



ただ、中国に投資をしている日本企業等にとっては重要なリスクの一つと言えそうです。



■【中国経済】日本経済へのプラスの影響も大きそう



もっとも、中国経済が失速する事により、日本経済にメリットもありそうです。



一つには、資源価格が落ち着くことです。中国経済は資源多消費なので、中国経済が失速すると世界の資源の需給が大きく緩む事が期待されるわけです。



日本は資源を大量に輸入していて、資源価格の高騰は「資源国に消費税を課されているようなもの」ですから、資源価格が低下することは日本国にとって非常に大きなメリットとなるはずです。



欧米では、資源価格下落の恩恵はさらに大きいかも知れません。



資源価格高騰がインフレを加速させ、金融の引き締めを招いているので、資源価格が下落(少なくとも安定)してくれれば、インフレ懸念が和らいで金融引き締めが終わると期待されます。



そうなれば、実体経済へのプラスの影響は大きく、懸念されている景気後退が回避できるかも知れません。



資源価格が安定して欧米の金融引き締めが終われば、金融市場も安定するでしょう。



世界的に株式市場は「金融引き締めによる株売り」「金融引き締めが招きかねない景気後退を懸念した株売り」に見舞われているわけで、それが終われば株価は反転する可能性も大きいでしょう。



為替レートに関しても、欧米の引き締めが終われば、極端な円安になるリスクは回避されるでしょう。

日本経済にとって円安がプラスかマイナスかは議論のある所でしょうが、極端かつ急激な為替変動が望ましく無い事は当然でしょうから、これも日本経済にとってはリスクが減ると考えて良いはずです。



中国経済が失速し、新型コロナによるロックダウンリスクも考えれば、先進国の企業は中国への投資に消極的になるでしょう。加えて中長期的にも発展の持続が懸念されるようになると、ますます中国への投資のインセンティブは縮小して行くかも知れません。



中国に投資されていた一部でも日本に投資されるのであれば、それは日本経済にとって好ましいことです。



■【中国経済】安全保障面への影響には要注目



別の観点ですが、今後中長期的に米中対立が続き、激化する可能性も考えると、投資が中国から先進国に戻ることは中長期的な対立の行方を考える上でもプラスの要因だと言えそうです。



筆者は外交や軍事には詳しくありませんが、中国経済が不振にあえぎ、投資が先進国に回帰することは、単に経済面での覇権ではなく軍事面を含めての覇権争いにも大きな影響を及ぼすかも知れません。



かつて旧ソ連は経済的な行き詰まりから米ソ冷戦の継続を諦めたわけですが、同じような事が米中間でも起きるかも知れません。そうなれば、外交や軍事の面でも世界の安定性は大いに増すでしょう。



もっとも、論者の中には中国が衰退を意識して「窮鼠猫を噛む」ような愚行に及ぶ事を心配する向きもあるようです。筆者にはその可能性の大小を論じる知見がありませんが、そうならない事を祈りながら筆を置くこととしましょう。



本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。



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