利回り3.5% 1株147円のNTT
NTT、日本電信電話(9432) は株価147.0円(2025年2月19日時点)で配当利回り3.53%と高配当利回りかつ14期連続増配しています。小口から買いやすく配当も受け取れるので初めての株として魅力的な銘柄となっています。
実際に楽天証券が出している株主優待検索の人気では2月19日時点で1位(権利確定月:3月)となっています。
以下は2003年からの株価推移と主な株式分割を示しています。
<NTT 2003年来株価推移>

グラフの通り長期的には右肩上がりの動きに見えますが、直近1年は株価が伸び悩んでいます。2024年度 第3四半期決算では以下のように対前年比で増収・減益であったことも売られている要因のひとつとなっています。
<NTT第3四半期決算>

※当期利益はNTTに帰属する非支配持分帰属分控除後
決算についてセグメント別の営業収益と営業利益の内訳を説明いたします。
NTTのセグメントは大きく五つに分類されています。総合ICT事業(ドコモ、NTTコミュニケーションズなど)、グローバル・ソリューション事業(NTTデータ)、その他の不動産とエネルギー(NTTアーバンソリューションズ、NTTアノードエナジー)です。
営業利益の重荷となっている主なセグメントは総合ICT事業と地域通信事業です。
総合ICTのドコモは金融部門が堅調で収益も伸びている一方で個人向け通信の販促費用がかさみ営業利益は前年比マイナス683億円となっています。地域通信では固定電話の重荷があるNTT東日本、西日本が不調で営業利益は前年比でマイナス439億円となっています。
現在、総合ICTでスマートライフ事業とのシナジーと、NTT東西で光通信の拡販による利益の拡大を狙っています。
一方、個人の消費者には少しなじみのないグローバル・ソリューションと不動産事業について確固たる利益基盤となっており安定した財務に寄与しています。
<2024年度第3四半期セグメント別営業収益変化>

<2024年度第3四半期セグメント別営業利益変化>

14期連続増配
継続的に増配をしている株主還元の方針は、個人投資家にとって魅力的だと考えます。以下のグラフに示すように2024年度予想配当は1株当たり年5.2円となっています。配当額は2003年から10倍、2011年度から14期連続の増配予定となっています。連続増配の実績は、長期で保有するモチベーションのひとつになるのではないでしょうか。
<1株当たり配当額>

※2009年1月4日を効力発生日として普通株式1株につき100株、2015年7月1日を効力発生日として普通株式1株につき2株、2020年1月1日を効力発生日として普通株式1株につき2株、2023年7月1日を効力発生日として普通株式1株につき25株の割合をもって株式分割を行っており、1株当たり配当額について当該株式分割調整後の数値を記載
AIにわく世界、データセンター需要は旺盛
現在、世界中でAIをはじめとしたテクノロジーの急速な進化にともなってデータセンター需要が継続的に伸びています。総務省の出している令和6年版情報通信白書によると生成AIの市場規模は2027年には1,210億ドルと想定しています。これは、2023年の世界のノートPC市場とほぼ同規模とされています。
NTTはデータセンター事業者の中で第3位(NTT IR資料より)と世界的に大きなシェアを占めています。今後も5年間で1.5兆円以上データセンターに投資し高度化とシェア拡大を進める方針です。
<AI市場の市場規模>

IOWNの実用化
AIの普及と進化に伴い、問題として指摘されているのが、電力消費量とデータ通信量の増加です。電力も通信もすでに私たちの生活に欠かせない存在ですが、AIの拡大によってその負担がさらに増大しつつあります。
その解決に向けて取り組んでいるのがIOWNです。IOWNは、NTT、ソニー、マイクロソフトなどが参加する国際的なプロジェクトです。この構想では、ネットワークの電気信号を光信号に置き換えることで、低電力かつ高速な通信と処理を実現する「光電融合技術」を目指しています。この技術の実現の可能性に懐疑的な意見もあるかもしれません。
しかし、IOWN構想の4段階のうち、データセンター間通信を光信号に置き換える「1.0」の段階はすでに実用化されています。例えば、台湾と日本のデータセンター間で低遅延通信が確立されています。離れたデータセンターをIOWNでつなぐことで、あたかもひとつの巨大なデータセンターのように活用することが可能になります。
これを人の移動に例えるなら、三大都市をリニア新幹線で結び、乗り換えをなくしてひとつの巨大都市のように生活するイメージに近いでしょう。
<IOWNの目指すチップと一般的なチップの違い>

まとめ
以上のように、NTTは個人向け事業が重荷となり、利益率の低下が課題となっています。その影響もあり、株価は現在割安な水準で推移しています。
しかし、データセンター事業やIOWNといった成長性の高い分野への積極的な投資や、株主還元に注力している点は注目に値します。これらの取り組みにより、NTTはバリュー株としての魅力と成長性を兼ね備えた、長期投資に適した銘柄と考えています。
(茂木 春輝)