1.PBRで見た割安・出遅れ業種候補は、電力・ガスなどの6業種

 東京証券取引所が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を上場企業に要請していることから、市場ではPBR(株価純資産倍率)が低位な割安銘柄が物色される傾向にあります。そこで、今回はPBRなどで見て割安で出遅れているTOPIX-17の業種を探してみることにしました。


 図表1は、TOPIX(東証株価指数)とTOPIX-17業種の実績PBR(横軸)と実績PBRの過去10年の平均値からの乖離(かいり)率(縦軸)を見たものです。


 TOPIXよりも実績PBRが低く(割安)、過去10年の平均値からの乖離率がマイナス圏にある(出遅れ)業種は、電力・ガス、運輸・物流、自動車・輸送機、建設・資材、不動産、素材・化学の6業種です。これらを候補として次の分析に移ります。


[図表1]TOPIX-17業種の割安性分析
日本株の割安・出遅れ業種はどれだ?
時点:2025年1月末
過去10年平均:2015年1月末~2024年12月末の月次平均値
(出所)Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

2.割安・出遅れ業種候補の中で最も出遅れているのは素材・化学

 次に過去3年間のパフォーマンス動向で、株価自体が実際に出遅れているかを確認します。


 図表2は、TOPIXとTOPIX-17業種の2022、2023、2024年のパフォーマンスを見たものです。絞り込んだ6業種をハイライトしており、()内の数字は全体(TOPIXとTOPIX-17業種)の中でのパフォーマンス順位です。3年間全てで下位半分(10位以下)、かつ、TOPIXを下回った業種は素材・化学のみで、パフォーマンス面ではこの業種が最も出遅れていると言えそうです。


 また、3年間のうちの2年間では自動車・輸送機や不動産、運輸・物流も該当するので、この辺りが割安・出遅れ業種の最終候補となりそうです。


[図表2]TOPIX-17業種の年別パフォーマンス
日本株の割安・出遅れ業種はどれだ?
期間:2022、2023、2024年、年次
(出所)Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

3.素材・化学の業績予想は割安・出遅れ業種候補の中で最も良好

 割安・出遅れには「業績がさえない」といった理由があることが多いので、最後に業績予想を確認してみましょう。図表3は、TOPIXと割安・出遅れ業種の最終候補として絞り込んだ4業種の予想EPS(1株当たり利益)成長率を見たものです。


 4業種の中で、2025年と2026年の両年で、各業種の予想EPS成長率がTOPIXを上回っているのは、不動産と素材・化学の2業種となり、素材・化学の業績予想は特に良好です。


 今回のようなスクリーニングは別の視点で昨年も2度実施しており、昨年12月に「 2025年の日本株の有望業種は何か? 」というお題で、銀行、金融(除く銀行)、不動産、建設・資材に注目し、また、昨年7月には「 TOPIX-17各セクターの明暗を考える 」というお題で、建設・資材、素材・化学、機械、小売、銀行に注目しました。


 今回の結論は、素材・化学と不動産を有望業種としたいと思いますが、素材・化学は昨年7月にも有望としていた他、昨年6月には「 素材・化学セクターのパフォーマンス回復を期待する 」というお題で取り上げたものの、中国景気要因などによる業績下方修正などもあって、いまだに最も割安で出遅れている業種となっています。


 今のところは裏切られた格好ですが、今後は業績下方修正などなく、見直し買いが入ることを期待したいと思います。


[図表3]割安・出遅れ業種候補の予想EPS成長率
日本株の割安・出遅れ業種はどれだ?
期間:2025年と2026年、2025年2月10日時点のBloomberg予想
(出所)Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

<関連銘柄>
NEXT FUNDS 素材・化学(TOPIX-17)上場投信(証券コード:1620)
NEXT FUNDS 不動産(TOPIX-17)上場投信(証券コード:1633)


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(阪井 徹史)

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