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今中 能夫が解説しています。
「 【決算速報:エヌビディア】2025年1月期4Qは大幅増収だが、売上総利益率は低下 」
米半導体大手 エヌビディア が日本時間の27日早朝発表した2025年2-4月期の売上高見通しは、前年同期比65.1%増の430億ドル前後と、市場予想を上回った。AI(人工知能)半導体の需要拡大が見込まれる一方、一段の成長には収益改善が課題となる。楽天証券チーフアナリスト・今中能夫に、決算の速報解説と今後の展望を聞いた。
2024年11月-2025年1月期の売上高は前年同期比77.9%増の393億ドル、営業利益は76.5%増の240億ドルと、ともに市場予想を上回った。データセンター向けの売り上げが好調だった。
今期は、収益改善が課題となる。2025年2-4月期の営業利益は前年同期比48.8%増の251億ドルの見通し。営業利益率は58.5%と、ピーク時(2024年2-4月期)の64.9%から大きく低下し、60%を下回る見通しだ。
同社は主力の新型AI半導体「ブラックウェル」の需要拡大を見込むが、今中は「同社の説明通りに利益率が改善するかは疑問」と指摘する。収益力に貢献していた従来製品と比べると、ブラックウェルは構造が複雑なことなどから、量産効果を発揮しにくいという。
同日の東京株式市場で、日経平均株価終値は前日比113円高の3万8,256円と小幅な上昇にとどまった。
楽天証券経済研究所チーフアナリスト・今中能夫の速報解説は次の通り。
※予想は27日時点の暫定値。28日に詳細レポートを公開予定
営業利益率改善が焦点、「当面は大きな株価上昇は期待しにくいのではないか」今中
__2024年11月-2025年1月期の業績をどうみている
売上高、営業利益は予想を上回り、好調な決算だったと言える。ただ、利益率の低下は気になるところだ。2024年11月-2025年1月期の売上総利益率は73.0%と、ピーク時(2024年2-4月期)の78.4%、2024年8-10月期の74.6%に比べ低下している。
__2025年2-4月期の見通しは
増収増益予想だが、やはり利益率の低下には注意したい。同社予想から試算した楽天証券の予想(暫定値)は、2025年2-4月期の営業利益率が58.5%と、60%を下回る見通しだ。5-7月期以降で再び60%台に戻せるかが一つの焦点だろう。
__収益改善の見通しは
需要の大きいブラックウェルの量産を優先しているため、コストダウンは後回し、というのが同社の説明だ。同社予想の2025年2-4月期売上総利益率は70.6%だが、コストダウンを図れば70%台半ばまで引き上げられるとしている。
ただ、果たしてこの通りにいくのかは注意深くみる必要がある。ブラックウェルは従来製品に比べて構造が複雑なことや、製品寿命が短いことなどから、量産効果を発揮しにくいとみている。
__AI半導体の需要は今後も続くのか
同社の大口顧客である アマゾン・ドット・コム や マイクロソフト 、 アルファベット 、 メタ などのクラウドサービス大手が、本格的に投資の効率化・合理化を進めている。ブラックウェルのような超高性能製品だけでなく、安い製品を組み合わせたいと考えるユーザーもいる。エヌビディアが見ている世界と、ユーザーとの認識に少し差があるように感じる。
前回のレポート( 特集:エヌビディアの決算発表前に押さえておきたいこと(生成AIの開発とビジネスは転換点に来たか )でも示したように、AI半導体の設備投資があまりにも巨大なものになり過ぎている懸念がある。ユーザーの需要も資金も無限ではない。2027年1月期はそれなりにブレーキがかかってくるのではないか。
__今後、エヌビディアの株価の上昇期待は
今回出した暫定値で、2026年1月期のPER(株価収益率)は28.6倍、2027年1月期は22.6倍と数字としては割安なため、株価の上昇は期待できるかもしれない。10~20%程度上昇すれば良い方だろう。半導体銘柄特有の株価変動リスクを吸収してさらに大きな株価上昇があるかというと、そこまでは期待できないのではないか。
楽天証券が発表するエヌビディアの今後6~12カ月の目標株価は現在210ドルだが、少し高過ぎるというのが今の実感。引き下げる方向で検討している。いくらになるかは明日28日にレポートで公開する予定だ。
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(今中 能夫)