日経平均は下値トライ?

 先週(営業日3月3~7日)の日経平均株価は、1週間で268円下がり、3万6,887円となりました。昨年10月から続いてきた3万8,000~4万円のボックス相場を下放れ、下値トライが始まっているように見えます。


 私は、日本株は割安でここは良い買い場と考えています。

ただし、まだショック安は終わっていません。日経平均の下値メドは、3万6,000~3万7,000円と予想しています。


日経平均週足:2024年1月4日~2025年3月7日
日経平均どうなる?トランプ関税不安わずかに緩和、米景気は大丈夫?(窪田真之)
出所:楽天証券MSIIより楽天証券経済研究所が作成

トランプ関税不安はやや低下

 日経平均急落は以下三つのネガティブ要因が重なった複合ショックでした。


日経平均急落につながった三つの弱材料

【1】トランプ関税不安・米景気不安
【2】円高不安
【3】AIラリー終了の不安

出所:楽天証券経済研究所作成


 先週は、トランプ関税の不安がほんの少しだけ低下しました。メキシコ・カナダへの25%関税を3月4日に発動したのですが、3月7日にはUSMCA【注】原産地規則を満たすメキシコ・カナダ産品を適用から除外すると発表したからです。


【注】USMCA(米国・メキシコ・カナダ)協定
 1994年にスタートしたNAFTA(北米自由貿易協定)に代わる3カ国間の自由貿易協定。第1次トランプ政権が交渉を主導して、2020年7月に発効。自動車などで、関税がかからないための条件として原産地規則を強化。メキシコ・カナダ・米国での原産品には関税を適用しないが、中国などからメキシコ・カナダを経由して米国に輸出される製品には関税をかける。


 トランプ大統領は、USMCA規則に適合する製品の関税適用除外は、4月2日までとしています。4月2日、世界各国に対して、相互関税を発動すると予告していますが、その時USMCA適合品の関税除外が終了する可能性もあります。


 それでも今回の発表は、トランプ関税が「米景気および世界景気を悪化させるまでエスカレートする」不安を低下させました。


 USMCA適合品への25%関税適用除外は、米国の自動車産業からの陳情を受けて決まったものだからです。

米国の自動車大手は、メキシコ・カナダに製造拠点をたくさん持っていて、25%関税が適用されると深刻なダメージを受けます。適用除外の理由として、トランプ政権は「メキシコ・カナダにサプライチェーンを有する自動車産業にダメージを与えないため」としています。


 これで、4月2日にメキシコ・カナダ品全てに関税がかかるリスクは低下したと考えられます。特に、自動車・自動車部品は、USMCA原産地規則を満たせば、4月2日以降も関税が免除される期待が生じています。そうなると、メキシコ・カナダに多数の製造拠点を有する日本の自動車大手へのダメージも小さくなる期待があります。


 トランプ政権は、これまで世界経済に重大な影響を及ぼすルールの朝令暮改を繰り返しており、トランプ関税の先行きについては、まったく予測不能です。それでも今回の発表から、トランプ関税が自動車産業に与える影響に関する不安が、少し低下したと言えます。


米景気悪化の不安もやや低下

 先週発表された、2月の米ISM(サプライマネジメント協会)景況指数・米雇用統計は悪くなく、米景気への不安が少し低下しました。


 ISM景況指数は、以下の通り、非製造業景気指数が53.5としっかりしていることが安心感につながりました。製造業は低水準ですが、景況分かれ目の50は超えています。


米国ISM景況指数の推移:2020年1月~2025年2月
日経平均どうなる?トランプ関税不安わずかに緩和、米景気は大丈夫?(窪田真之)
出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成

 以下の通り、2月も米雇用悪化は見られませんでした。雇用が少しずつ緩んできてはいるものの、2月時点ではまだ良好と言える状況です。


米雇用統計:非農業部門の雇用者数(前月比):2021年1月~2025年2月
日経平均どうなる?トランプ関税不安わずかに緩和、米景気は大丈夫?(窪田真之)
出所:米労働省より楽天証券経済研究所が作成

米雇用統計:完全失業率:2021年1月~2025年2月
日経平均どうなる?トランプ関税不安わずかに緩和、米景気は大丈夫?(窪田真之)
出所:米労働省より楽天証券経済研究所が作成

 私は、米景気はソフトランディングに向かうと予想しています。

ただし、トランプ関税によって、米景気が悪化局面に向かうリスクはまだ残っています。米景気指標を慎重にウオッチしていく必要があります。


円高不安は高まる

 先週、一時、1ドル=147円台まで円高が進みました。以下の通り、日米金利差が縮小する見通しであること、トランプ大統領が円安批判を再開したことが、円高進行の背景にあります。


【1】日銀が利上げに前向きで、日本の長期金利上昇
【2】米景気減速から、米国の長期金利が少し低下
【3】トランプ大統領は3日、円安によって米製造業が不利な立場に置かれたとして日本を名指しで批判


ドル/円為替レートと、日米2年金利差の推移:2020年1月~2025年3月(7日)
日経平均どうなる?トランプ関税不安わずかに緩和、米景気は大丈夫?(窪田真之)
出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

日経平均下値メドは3万6,000~3万7,000円

 昨年末に筆者が作成した「2025年の日経平均予想」は、以下です。


2024年末に作成した「日経平均2025年予想」
日経平均どうなる?トランプ関税不安わずかに緩和、米景気は大丈夫?(窪田真之)
出所:2024年12月30日トウシルレポート「 2025年の日経平均、年末4万4,000円を予想する理由

 年初、トランプ関税への不安で3万7,000円まで下がった後、年末、4万4,000円に向けて上昇すると予想しています。現時点で、この予想を変更する必要はないと考えています。


 ただし、予測不能のトランプ関税ショックで、さらに下がる可能性も否定はできません。その場合、3万6,000円まで下がることもあり得ると思います。


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2024年12月30日: 2025年の日経平均、年末4万4,000円を予想する理由(窪田真之)


(窪田 真之)

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