今、日経平均が急落しています。こういった急落時に先に大きく動くのは、「売り」と「買い」のどちらでしょうか? それは、日経平均と外国人投資家の売買の関係を見ることで説明できます。
今日のクイズ
今日は、株式投資の中・上級者向けのクイズですが、初心者の方も野性のカンで答えてください。
それではクイズです。
2030年、日本総合株価指数(架空の指数)が以下の通り、突然急落しました。
2030年「日本総合株価指数」週足チャート:2030年1~7月

世界景気は良好だったため、日本総合株価指数もこのまま順調に上昇が続くと期待されていました。ところが、米国の景気指標がやや弱含んだところで急激に売られました。
日本総合株価指数先物の投機筋のポジションを見ると、買い建てが数兆円に達していて高水準です。一方、個人投資家は現預金を1,000兆円余り保有しています。
この局面で先に大きく動くのは、以下【A】【B】のうち、どちらでしょう?
【A】投機筋の先物売り(損切り)
【B】個人投資家の押し目買い
正解をお伝えする前に、日本株の動きと外国人投資家の売買の関係について解説します。
日経平均を動かしているのは外国人投資家
日経平均株価の動きを決めているのは外国人投資家です。外国人は、買う時は上値を追って買い、売る時は下値をたたいて売る傾向があるので、短期的な日経平均の動きはほとんど外国人によって決まります。
日経平均が急騰する時や新高値を更新する時の買い主体は、いつも外国人です(まれに例外あり)。反対に、日経平均が急落する時や新安値を更新する時の売り主体も、いつも外国人です(まれに例外あり)。つまり、外国人が売れば下がり、買えば上がるという傾向が過去30年以上【注】続いています。
【注】1989年までは日本株の動きを決めていたのは国内投資家(日本人)でした。しかし、1990年代以降は、30年以上、外国人の売買で日本株の動きが決まるようになっています。
2020年を例として見てみましょう。以下のチャートを見れば分かる通り、2020年の日経平均急落、その後の急騰を引き起こしたのは外国人売買です。
日経平均と外国人の売買動向(買越または売越額、株式現物と日経平均先物の合計):2020年1~12月

外国人から見ると、日本株は世界景気敏感株
外国人投資家から見ると、日本株は「世界景気敏感株」です。世界景気に不安が出ると、外国人は日経平均先物を即座に売ってきます。2020年にコロナ・ショックが起きたことにより、外国人は日本株を大量に売りました。
ところが、不安が低下して投資家がリスクを取り始めるとき、外国人は日経平均先物に買いを入れます。11月に入って外国人が一転して日本株を大幅に買い越したのは、ワクチン開発の進展によって世界経済が正常化に向かう期待が出たことに反応したものです。
正解
先に大きく動くのは、【A】投機筋の先物売り(損切り)です。
海外投機筋は近年、短期的な相場変動を見積もって過剰にリスクを取ります。この時は、投機筋の先物買い(プット売りを含む)が高水準でした。例えば、100億円のファンドで日経平均先物を200億円買い建てるようなことをやっていました。そのため、日経平均先物の下げに耐えられず、問答無用の売り(損切り)を出さざるを得ない状況でした。
ここで、クイズに使った株価指数の正体をお教えします。これは、実は2024年の日経平均の動きから作っています。2024年の日経平均はその後、以下の通り、急落してから急反発しました。投機筋の先物売りでさらに急落した後、個人投資家などの買いで急反発しました。
日経平均週足:2024年1~9月

急落直後、下がったから売る投資家が下がったから買う投資家より先に動く
日経平均が急落した時、長期的には良い買い場となっています。ただし、急落直後、「下がったから買う」投資家は少しずつゆっくり買っていきます。ところが、急落直後、「下がったから売らなければならなくなった」投資家は、大あわてで問答無用の売りを出してきます。
従って、急落相場では、往々にして「下げ過ぎ」と思われるところから、さらに下がることもあるので要注意です。
トランプ不況の不安で急落した日経平均、どうなる?
今まさに日経平均が急落しています。私は、日本株は長期的に良い買い場と判断しています。
ただし、短期的なショック安はまだ終わっていない可能性もあります。2024年7月の時ほど、投機筋の先物買いポジション(プット売りを含む)は大きくないので、昨年8月のような問答無用の先物売りがここから出てくることは無いと思います。それでも、トランプ関税ショックにより投機筋がどう動くかを予測することは誰にもできません。
時間分散しながら、割安な日本株を買い増ししていくことが、長期的な資産形成に寄与すると考えています。
チャートの読み方を勉強したい方に
最後に、私の著書を紹介します。ダイヤモンド社より、株価チャートの読み方をトレーニングする「株トレ」(黄色の本)が出版されています。決算書の見方などを学ぶ「株トレ ファンダメンタルズ編」(水色の本)とともに、ぜひご参照ください。どちらも一問一答形式で、クイズを解きながら株式投資を学ぶ内容です。
「 2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの株トレ 」
「 2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの株トレ ファンダメンタルズ編 」

(窪田 真之)