トランプ不況への不安が強まり、米国株も日本株も急落。市場の混乱は、かつてリーマンショック前夜に広がった楽観論の影と重なりつつ、意外な点で異なる今の局面を映し出している。

この激動の背景と、今後のマーケット動向を分析する。


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著者の窪田 真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 トランプ関税不安で世界株安、リーマンショック前夜との共通点・相違点 」


日経平均急落、3万6,000円割れ

 3月31日の日経平均株価は前週末比1,502円(4.1%)安の3万5,617円となりました。3万6,000円を割り込み、年初来安値を更新しました。


 トランプ大統領が4月2日に実施を予告している自動車関税・相互関税への不安が高まり、米国株が下落した流れを受けて、日本株にも外国人投資家とみられる先物売りが増えました。


日経平均週足:2024年1月4日~2025年3月31日
トランプ不況の不安強まり世界株安。リーマンショック前夜に似ている?(窪田真之)
出所:楽天証券MSIIより楽天証券経済研究所が作成

 3月の日経平均は、トランプ大統領の発言に振り回され続けました。トランプ大統領が予告している関税を全て実行するならば、世界不況になり、日経平均はさらに大きく下がると不安が高まりました。


 一方、トランプ大統領は、「ビジネス重視、株価をよく見ているので、世界不況・株の暴落を起こすまで関税戦争をエスカレートさせない」という思惑が広がると、株価が反発しました。


 3月中はトランプ発言で世界中が右往左往しました。トランプ大統領が、関税を緩和・延期するように取れる発言をすると、米国株も日本株も上昇しました。トランプ大統領が、「例外はいっさいなし、予告通りに関税実施」と強調すると、不安が高まって米国株も日本株も下落しました。


 3月末にかけて、世界景気に重大なダメージを与える自動車関税を発表、4月に実施すると繰り返し発言していることから、3月末にかけてトランプ不況(トランプセッション)の不安が高まり日米ともに株が急落しました。


 日本株は、グローバル投資家から見ると世界景気敏感株なので、世界景気への不安が広がるにつれて、外国人投資家による日経平均先物売りが増えたと考えられます。


リーマンショック前夜との共通点、相違点

 世界経済・世界の株式相場にとって、最大の不安は、トランプ関税です。これ以上の関税が一切なければ、米景気はソフトランディング、世界景気は緩やかな拡大が続くと想定されます。そうなると、世界的な株高が続くと予想されます。


 ところが、トランプ関税がエスカレートして、関税戦争が世界に広がると、一気に世界不況に陥る可能性があります。つまり、トランプ関税しだいで、世界中の株価が急騰も急落もあると言えます。


1.リーマンショック前夜との共通点

 悲観的に考えるならば、今、リーマンショック前夜と似ているところもあります。リーマンショック前夜、「米国政府はリーマンブラザーズを破綻させるはずない」と楽観が広がっていました。


 リーマンは「Too Big to Fail(大き過ぎてつぶせない)」で、もしつぶれたら、世界中に連鎖破綻が広がる懸念がありました。だから米政府は公的資金を入れて救済するに違いないと思われていました。ところが、リーマンブラザーズは破綻して世界的金融危機、景気後退が起こりました。


 これまで、「トランプ大統領はビジネス重視、株価を気にするので、世界不況を起こすまで関税をエスカレートさせない」と楽観が続いていましたが、本当にそうでしょうか。


 トランプ大統領は、強大な米国の経済力・軍事力を背景に、世界中に「米国第一」を押し付けており、関税発動がその実現に必要と確信しているようです。


 関税が相手国だけでなく、米国経済そのものにも重大なダメージを与えることにまったく気づいていない可能性があります。トランプ関税を実際に発動して、米国景気が悲惨な状況に陥るまで、間違いに気づかない可能性もあります。


2.リーマンショック前夜との相違点

 ただし、リーマンショック前夜とは、まったく環境が異なる点もあります。リーマンショック前夜には、米サブプライムローン危機が世界に拡散していました。つまり、世界的な金融危機がすでに起こり始めていました。


 それに比べると、少なくとも現時点で世界的金融危機は起こっていません。リーマンショックの後、世界中の巨大な金融機関に対し自己資本規制が強化されたため、大規模金融機関は財務的に健全です。


 また、リーマンショック前夜は、世界的にインフレが高進し、インフレによって世界中の消費が押しつぶされそうになっていました。それと比べると、今も、インフレの危機はありますが、リーマンショック前夜ほどではありません。


日本株は長期投資で「良い買い場」の判断変わらず

 短期的なショック安は続く可能性があります。ただし、長期的な投資判断は変わりません。日本株は、割安で、長期的な上昇余地は大きいと考えています。日経平均が2028年までに5万円まで上昇するという予想は、まったく変わりません。


 時間分散しながら、日本株を買い増ししていくことが長期的な資産形成に寄与すると考えています。


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