4月はトランプ米大統領の政策や発言で市場が大きく変動しました。しかし、中小型株は、関税の影響を受けにくい内需中心であるため、底堅く推移しました。

5月は決算発表が集中し、ポジティブな決算の中小型株に注目が集まると予想されます。信用買い残が少ない銘柄は「出尽くし」リスクが低く、好決算の場合、株価が素直に反応する可能性が高いと考えられます。


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<指数パフォーマンス比較~バリュー株orグロース株どっち優勢?~>
ポジティブ決算を順張り買いしたい「信用買い残少=売り圧力少」の中小型株17選
2025年5月 中小型主要指数の月間騰落率

4月の中小型株ハイライトは「トランプショックに打ち勝った!」

 トランプ米大統領の就任前、トランプ=株高要因で「トランプ2.0」と評されていました。が、4月前半は株安要因「トランプ劇場2.0」と看板が付け替わりました。ただ、「劇場」ですので、一方的な株安材料を提供するわけでなく、急に株高材料も提供されます。人為的なハイボラ相場の演出、それが4月は過去最大級にさく裂した1カ月でした。


 大波乱相場のトリガーとなったのは、トランプ米大統領による4月2日の相互関税に関する演説でした。市場の想定をはるかに上回る厳しい関税率が発表されると、すかさず中国も報復措置を発表するという、いつか見た展開に…。「米国経済は別格」「米国株は最強」なる米国例外主義で市場がつくられてきましたが、その揺らぎが大きな逆回転の動きに発展しました。


 米国株がコロナショック以来の衝撃的下げを示し、米国の株価指数が「弱気相場」入り。その売り圧力が日本にも降りかかる格好でしたが、大誤算だったのがトランプ関税リスクに強いとされ、パフォーマンス良好だった銀行株の急落でした。


 含み益が数日で吹き飛ぶレベルの下げ、そしてトランプ関税リスクに激弱な外需株も売り込まれたことで、個人の信用評価損益率が急激に悪化します。


 結果、相互関税など関係ないはずの中小型グロース株まで、需給悪化を理由に連れ安します。

安値を付けた4月7日の日経平均株価は7.8%安、東証グロース250指数は10.5%安と、なぜか世界一の値下がり国に…(これ毎度ですよね?)。


 ただ、「劇場」ですので、突然の逆回転も人為的に起こせてしまいます。関税発動は9日の日本時間の13時1分でしたが、その直後、トランプ米大統領が相互関税の上乗せ部分に対し、日本を含む一部の国・地域に90日間の一時停止を許可すると発表しました。


 するとその直後、ダウ工業株30種平均が過去最大の上げ幅を記録し、10日の日経平均株価も歴代2番目の上昇幅を記録します。


 その後も「劇場」は続きました。トランプ米大統領がFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長に対して「一刻も早く解雇すべきだ」とSNSで投稿。関税による米景気の後退懸念、そして米政権への不信感が「米国例外主義の終わり」なる空気を醸成させました。株は売られ、債券も売られ、ドルも売られる「トリプル安」が加速する場面も。


 ただ、これもトランプ米大統領が「解任すべき」投稿を否定すれば、簡単に上昇に転じるなど行ったり来たり。その後は、日米交渉で円安是正が後退するなど、悲観し過ぎた分の修正の動きが月末まで継続しました。


 日経平均株価が昨年8月の安値を一時下回る3万0,700円台まで沈む場面もあった4月でしたが、終わってみると中小型株指数は月間プラスに(かなり意外感)。


 とりわけ光ったのが、東証グロース指数の月間騰落率+3.3%。

トランプショックを含んだ月に、これほど指数が上がったのはナゼ?という気もしますが、指数の値上がり寄与が大きいのは、大型の東証グロース株ですので、時価総額500億円以上の銘柄の値上がり率ランキングを確認してみましょう。


【東証グロース主力】4月の月間上昇率上位 コード 銘柄名 4月
騰落率 予想
PER(倍) 290A Synspective 60% - 5595 QPS研究所 49% - 299A dely 35% 23.3 9348 ispace 34% - 4592 サンバイオ 21% - 4475 HENNGE 19% 50.4 3479 ティーケーピー 18% 24.2 219A Heartseed 17% - 215A タイミー 14% 39.0 3491 GA technologies 14% 19.1 ※時価総額500億円以上

 値上がり率がとくに大きかったのが、 Synspective(290A) と QPS研究所(5595) 、そして4位の ispace(9348) も宇宙関連株でした。地上はトランプ米大統領に振り回されっぱなしで、景気も悪くなりそうだし、株価は下がるし…現実逃避で空の上(宇宙)に資金が逃げたのでしょうか。


 また、5位の サンバイオ(4592) 、8位の Heartseed(219A) はバイオ関連株。予想PER(株価収益率)が横線になっている赤字ベンチャーの大型系がパフォーマンス良好だったことが分かります。


 サンバイオはアクーゴの出荷待ちという個別カタリストもあるのですが、こういったディープテック株が逆行高で目立っていた「その心は?」でいえば、やはりバリュエーション的に「割安」といった概念が4月は否定されていたこともあったと思われます。


 関税の影響が企業業績にどの程度影響するか? これが全く読めない中で、3月決算企業の本決算発表シーズンも近づいていました。


「業績予想を『未定』とする企業が増えるのではないか?」「そうした企業は売られるのではないか」や、「仮に業績予想を開示したとしても、円高のマイナスインパクトも考えるとコンセンサス(市場予想)を大幅に下振れるのではないか?」という声が強まっていました。


 予想PER算出の前提となる「今期予想EPS(1株当たり利益)」が「暫定値」でしかないとすれば、予想PERで割安かどうかの意味は薄れます。利益の有無より、トランプ関税リスクと距離を置ける内需株。


 そこにドンピシャに当てはまったのが中小型グロース株で、指数寄与度の大きいバイオ株が指数を持ち上げてくれたおかげで「なんだか東証グロース市場が良さそうだ」と気付いた短期資金を集めたように思われます。


新NISAで中小型株!今月の銘柄アイデアは…「決算ポジ銘柄に順張りスタンス」

 下り最速だった「トランプ劇場2.0」相場も、緩やかな上りのターンとなっています。

GWの連休前まで、日経平均株価は7連騰、TOPIX(東証株価指数)は8連騰で、相互関税ショックで急落する前の水準を奪回。その戻りの要因は、トランプ米大統領の態度の変化にあり、戻りの原動力はショートカバー。


 ただ、相互関税前の水準に返ってきたことで、「ここから上は買いにくい」という心理の投資家も多そうですね。


 5月の中小型株の焦点は、大型連休明けの決算発表になります。12日の週が発表ラッシュで、中小型株はこの週に集中します。今回の決算発表は、輸出関連企業が関税の影響をどう織り込むか?という不透明感が存在します。パンデミック時に通期予想の非開示が相次いだこともあり、通期予想「未定」が多いのではないか?という見方が事前に広がっていました。


 ただ、ここまでの各社の傾向を見ると、多くの輸出関連企業が通期予想を開示しています。そして、面白い株価反応なのですが、開示した会社が売られるケースが多発しています。


 例えば「関税影響を考慮していない」と記載している開示企業は、「下方修正の可能性があるんじゃないか?」という見方で売られています。一方で、関税や円高影響を慎重に見積もった企業は、「コンセンサスより弱い」という理由で売られています。むしろ、開示を見送った企業の方が好反応な気も…。


「結局は関税次第になるため、今の数字は『暫定値』」なる見方ができるため、輸出関連株の業績予想自体にポジティブサプライズは生まれにくいところ。その分、自社株買いや増配など株主還元強化のポジティブ/ネガティブに対する反応が強く出ています。


 そういえば、中小型のグロース株に関しては輸出関連株が極めて少ないため、この手のガイダンス不透明感とは無縁。一方で、自社株買いや増配などの株主還元の期待値も乏しいため、シンプルに決算数値のポジティブ/ネガティブが判定基準となります。


 とはいえ、これも決算発表あるあるですが、なぜか悪くない(まあまあ良い)レベルの決算発表で「出尽くし」なる理由で急落するケースが頻発します。


 こうした現象は、もっと良いサプライズ好決算が出ることを期待して、先に買って決算を待っていた投資家が多い場合に起こると考えられます。株価が上昇している銘柄に、とくにその傾向はあります。高値圏の銘柄ほど、「出尽くし」なる「なんで?」な反応が起きます。


ポジティブ決算を順張り買いしたい「信用買い残少=売り圧力少」の中小型株17選
二市場の信用買い残(左軸)と日経平均株価(右軸)、過去1年

 決算を期待目線で跨ごうとしている個人投資家が多いかどうかは、中小型株の場合、信用買い残が多いかどうか(増えているかどうか)も判断指標になります。それでいえば、4月の急落時(陰の極は4月7日)、信用買い残が激減したことはポジティブと言えそうです。


 上のグラフは、二市場の信用買い残の金額と日経平均株価を重ねたものです。4月初旬に信用買い残が激減したのは、半導体などハイテク株、そして人気のあったメガバンクなど銀行株が急落し、ロスカットが相次いだことが理由です。


 追証発生レベルの急落によって、追証回避のロスカット、最悪のケースは追証発生でも入金ができなかった分の強制決済(ピークは4月9日後場寄り)が相当量出たと言えます。高いところで買っていた「売らないといけないポジション」が整理されたことで、決算を期待するポジションが減ったことが分かります


 また、その後のリバウンド時にも、信用買い残が増えていないことも特徴。トランプ米大統領次第で不確実性が高かったこともあり、積極的に押し目買いした投資家も今回少なかったことが分かります(=戻りの原動力はショートカバー)。


信用買い残比率低い主な中小型株の決算発表予定日一覧
【条件】(1)アナリストがレーティング付与
(2)レーティングが強気以上、(3)信用買い残比率低い(5%未満)
(4)売買代金25日移動平均が2億円以上
※売買代金25日移動平均上位順、5月2日時点


市場 コード 銘柄名 決算発表
予定日 決算 G 290A Synspective 5月14日 1Q G 141A トライアルHD 5月14日 3Q S 2702 日本マクドナルドHD 5月9日 1Q S 7906 ヨネックス 5月9日 本 S 7451 三菱食品 5月8日 本 S 6524 湖北工業 5月12日 1Q S 6226 守谷輸送機工業 5月12日 本 S 6670 MCJ 5月14日 本 S 6547 グリーンズ 5月13日 3Q G 6027 弁護士ドットコム 5月14日 本 G 7685 BuySell Technologies 5月14日 1Q S 6627 テラプローブ 5月15日 1Q G 4259 エクサウィザーズ 5月14日 本 G 4419 FinatextHD 5月13日 本 S 4970 東洋合成工業 5月9日 本 S 4966 上村工業 5月12日 本 G 4051 GMOフィナンシャルゲート 5月14日 2Q

 これは中小型株でも同じで、株価が高い時期に買った玉の整理が進みました。決算を期待して待っているポジションが決算シーズンとしては今回少ないとみられ、「出尽くし」リスクが相対的に低いと考えられます。決算数値がポジティブだった場合、素直に株価が反応する可能性が高いという前提で、今回は注目銘柄の決算発表予定日を一覧化しました。


 スタンダード、グロースに上場する銘柄の中から、流動性が高い銘柄(売買代金25日移動平均2億円以上)で、アナリストも強気のレーティングを付与している中から、「信用買い残比率も低い(5%未満)」銘柄をピックアップ。海外売上比率の高い企業、決算発表予定日が5月前半ではない銘柄は除いています。


 いずれも、アナリストのカバーがあることでコンセンサスが存在しているため、その数値を上回るポジティブ決算が出た場合、スムーズに上値を切り上げる展開が想定されます。好決算なら順張りスタンスで!


(岡村 友哉)

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