お金と上手に向き合い、経済的に良好な状態にある「ファイナンシャル・ウェルビーイング」を実現していくための第一歩として、一年間の支出(生活費合計)を確認する方法についてご説明します。
ファイナンシャル・ウェルビーイングとは?
ファイナンシャル・ウェルビーイングとは、経済的に良好な状態、具体的には「当面の支払いを着実に行うことができ、将来のお金について安心しており、人生を楽しむためにお金の面で幅広い選択ができる状態」(米国消費者金融保護局)とされています。
ファイナンシャル・ウェルビーイングについては、これまで以下の記事でご説明してきました。
- 幸せな人生のため、お金と上手に向き合う「ファイナンシャル・ウェルビーイング」とは?
- 資産が多くても幸せとは限らない?「ファイナンシャル・ウェルビーイング」を実現している人の特徴
- 経済的に良好な状態とは?「ファイナンシャル・ウェルビーイング」を実現する四つのポイント
今回はファイナンシャル・ウェルビーイングを実現していくために、「現在」と「将来」、「安心感」と「選択の自由度」という、次のような2×2のマトリクスで考えていく実践的な方法についてご説明します。

今回はこの四つのポイントのうち、左上の「支出管理」に関連して、一年間の支出(生活費合計)を確認する方法についてご説明します。
支出を確認するために、日々家計簿をつけて把握されている人もいるかと思いますが、家計簿をつけていなくても一年間の支出は比較的簡単に把握することが可能です。
手取り収入が分かれば、支出も簡単に計算できる
前回の記事 「お金の心配をなくすために!源泉徴収票から『手取り収入』を確認する方法」 では、収入から、社会保険料や税金を差し引いた、実際に自由に使うことができる手取り収入の計算方法をご説明しました。
手取り収入が分かっていれば、支出については次のように、収入が振り込まれる口座の残高などから半ば自動的に計算できます。
手取り収入と口座残高から一年間の支出を計算する方法

ここでは2024年の年間支出を確認する場合で具体的にご説明します。
まず収入が振り込まれている金融機関の口座について、2023年12月末の残高を確認します。2024年の手取り収入は 前回の記事 の方法で確認、さらに2024年12月末の残高も確認します。
また、給与天引きや口座振替などで積み立てているお金(財形貯蓄、持株会、社内預金など)がある場合には、その合計金額も確認しましょう。
一年間の支出(生活費合計)を計算しよう
実際の計算方法は上の図にある通りですが、ここでは次の数値例で計算してみます。
この場合、一年間の支出(生活費合計)は次のように計算できます。
一年間の支出(生活費合計)
=(1)500万円+(2)400万円-(3)526万円-(4)24万円
=350万円
ここでは、もともと前年末時点で500万円入っていた口座に、一年間で手取り収入金額400万円の入金があり、結果的にその年の年末時点で526万円残っていた場合です。口座外に積み立てられた24万円を差し引くと、一年間の支出は350万円になります。
何に使ったかはともかくとして、一年間で350万円を使ったことが確認できるのです。
「50万円/400万円=12.5%」ですから、手取り収入の12.5%を資産形成にまわしている形になります。ライフプランにもよりますが、一般的には手取り収入の1~2割程度が資産形成の一つの目安になると考えています。
このように家計として手取り収入がいくらであり、そのうちどのくらいを生活費として使っているか、一年当たりの金額を把握できていることが、ファイナンシャル・ウェルビーイング実現に向けてとても大切な第一歩なのです。
支出を把握する上で大切なこと
このように計算すれば、日々家計簿をつけていなかったとしても、いくらの収入があり、そのうちいくらを使っているか確認することが可能です。
支出を把握しようとすると、「まずは家計簿をつけてみましょう」という話になりがちですが、家計簿をつけるのはかなり負担が大きいですし、とにかく面倒だと感じる人が多いのではないでしょうか。
シャンプー1本、歯ブラシ2本、お米を10kgなど、具体的に何にお金を使ったかを把握する以前に、総額としていくら使ったのかを把握しておくことの方が重要です。また、1円単位で正確に計算する必要もありませんので、1万円単位で計算すれば十分です。
上で説明した計算例では、収入が振り込まれる口座が一つの場合でした。共働き夫婦であればそれぞれの口座に振り込まれるでしょうし、お一人の場合でも複数の口座に振り込まれている場合もあるでしょう。そういった場合にはそれらの口座の残高を合計して計算することで同様に計算することが可能です。
支出(生活費)の詳細、内訳に目を向ける前に、ファイナンシャル・ウェルビーイング実現に向けた第一歩としては支出合計額の把握から始めてみていただければと思います。
【関連リンク】
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