米国関税政策の方向性が見えないことから、日経平均株価は3万8,000円で上値が重くなっており、投資資金は中小型の内需株に向かっています。関税フリーに注目が集まる中、どのような銘柄が対象になるでしょうか?
日経平均3万8,000円台で足踏み
米国関税政策の暴風雨に巻き込まれた日経平均株価は、4月7日に一時3万0,792円まで下落しましたが、約1カ月のリバウンド相場によって、5月13日には3万8,000円台まで値を戻しました。
この3万8,000円は、昨年9月から半年間続いたボックス相場(3万8,000~4万円)の下限、つまり株価がそれより下がりにくくなる「支持線」として機能していました。
このような支持線が、株価がそれより上がりにくくなる「抵抗線」と入れ替わることは頻繁に起こります。その水準で売買している投資家が多いことから、戻り待ちの売りが出やすいなど需給的な要因があります。
現在、この3万8,000円が目先の抵抗線として意識され始めています。米国関税政策の方向性が明確となっていないことで、積極的な買いが入りにくくなっているからです。
東京時間24日に行われた3回目の日米関税交渉では、米国側のキーマンであるベッセント財務長官が欠席した中、赤澤亮正経済財政政策・再生担当大臣が米通商代表部(USTR)のグリア代表、ラトニック米商務長官と3時間半ほど会談しました。
赤澤大臣は、閣僚交渉後の記者会見で、引き続き6月中旬にカナダで開催される先進7カ国首脳会議(G7サミット)に合わせ、石破茂首相とトランプ大統領の首脳会談を行い、問題の打開を図ることを検討するといった内容を日米閣僚間で確認したと述べました。5月末には、ベッセント財務長官と会談をするために4回目の日米関税交渉に向かうとの話も出ています。
こうした状況を考慮すると、6月中旬のG7サミットまで日米関税交渉の目立った進展は見られない可能性が高いでしょう。仮にG7で進展が見られなければ、相互関税の適用停止期間が明ける7月10日前後まで手掛かり難の状況は続くと考えます。イベント好きなトランプ大統領が独立記念日の7月4日に発表するシナリオも頭にいれておきたいところです。
トランプ関税の影響を受けにくい5銘柄
米国関税政策の方向性が見えない状況下、今後、発表される米国の経済指標が市場予想よりも悪化した場合、金融市場では米国スタグフレーションへの警戒感が再燃し「トリプル安(株安、債券安、ドル安)」が発生する可能性は十分あります。
市場の守り神のような存在となっているベッセント財務長官がトリプル安対応を行うとの期待感はありますが、トランプ政権が続く限り、足元の懸念事項が完全に払しょくされることはありません。米国関税政策とうまく付き合っていくためには、株式投資において、関税の影響を極力受けにくい業種への関心を高める必要があります。
プライム市場では、 大末建設(1814) 、 ライト工業(1926) など中小型の建設株が年初来高値を更新しているほか、グロース市場250指数が20日まで8連騰するなど、個人投資家を中心とした資金は中小型の内需株に向かっています。
米国関税政策の影響を受けにくい内需株など「関税フリー」銘柄が要注目ですので、今回も関税フリーの観点から5銘柄ご紹介します。
銘柄名 証券コード 株価(円)
(5月28日終値) 特色 松井建設 1810 1,094 1586年創業の最古の上場会社は業績好調 ピーエス・コンストラクション 1871 1,691 地方創生2.0と親子上場解消への思惑期待も TENTIAL 325A 3,420 高単価で高付加価値の機能性パジャマで急成長中 サークレイス 5029 1,635 米ITサービスの導入支援事業の引き合い強い ワークマン 7564 5,290 「ワークマンカラーズ」で攻勢かける
松井建設<1810>
豊臣秀吉が太政大臣に就任した1586年創業の国内上場企業で最も長い社歴を持つ企業です。創業以来の神社・仏閣・文化財など古式建築のほか、オフィスビルやマンションなど一般建築も展開しています。
2026年3月期の業績予想は売上高こそ前期比で小幅減収の見通しですが、設備投資や公共投資などの堅調推移が見込まれることから、各利益は二桁増益を見込んでいます。なお、一日の売買高が2万~5万株ほどと流動性に低い銘柄ですので、まとまった株を売却したいときは注意が必要です。
ピーエス・コンストラクション<1871>
橋梁(きょうりょう)建設ではトップクラスの実績を持つ建設会社で、耐震性に優れた高強度の「プレストレストコンクリート」技術を背景に、高速道路や更新工事などを手掛けています。民間設備投資や公共建設投資が堅調なため、受注残が積み上がっています。日本全国のインフラを保全することも含まれる「地方創生2.0」の観点からも要注目です。
また、親会社の 大成建設(1801) が同社株を50.1%保有していることから、親子上場解消に関連した思惑も高まりそうです。
TENTIAL<325A>
睡眠の質向上を目的としたリカバリーウエア「BAKUNE」などを展開しており、今年2月に上場したばかりの若い企業です。主な販路は自社ECサイトですが、実店舗も展開しており、高単価で高い機能性のパジャマが主力商品となっています。
長期的には海外展開を計画していますが、現在は国内市場中心ですので米国関税政策の影響はほぼ無いと考えます。2026年1月期業績予想も前期比で増収増益を予想。上場来高値更新の強い動きが期待できるでしょう。
サークレイス<5029>
米ITサービス大手「Salesforce」のCRMソリューションを中心にクラウド技術の導入支援などを手掛けています。クラウド業務管理「ServiceNow」を活用したソリューション提案を行う子会社アオラナウ社の伸びが著しく、新たな事業拡大に成功。2026年3月期の業績は大幅な増収増益を予想しており、足元の株価は年初来高値を更新しています。
好業績と需給面を材料に上場時の2022年4月以来の2,000円台も視野に入ると考えます。
ワークマン<7564>
作業服の専門店大手。かつて一世を風靡(ふうび)した女性向け衣料品業態「#ワークマン女子」は、このほど「Workman Colors(ワークマンカラーズ)」に改称。女性だけではなく子供や男性客の取り込みにも注力しています。円高が進む場面では、円高メリット銘柄として関心が高まりやすい傾向にあります。2026年3月期の業績は前期比で増収増益を予想。強い株価推移に期待します。
(田代 昌之)