トランプ関税「破棄」の司法判断でドルが買われました。しかしそれで全てが元に戻ったわけではありません。
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著者の荒地 潤が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 「米裁判所が「トランプ関税、もうええて」。ドル/円はどちらに動く?」 」
今日のレンジ予測
[本日のドル/円]↑上値メドは146.10円↓下値メドは142.20円英国:英国経済は、金利高、増税、歳出削減の「死のスパイラル」
トランプ関税:メキシコとカナダ25%関税で、米国の食料品とエネルギーは10%超上昇
トランプ:大規模風力発電向けの連邦政府管理の土地貸与を停止へ
欧州インフレ:ドイツ連銀総裁「2025年半ばにインフレ目標を達成する」
欧州経済:ラガルドECB総裁「経済見通しにダウンサイドリスク」
前日の市況
5月29日(木曜)のドル/円相場の終値は144.17円。前日終値比0.71円の「円高」で、1日のレンジ幅は2.32円だった。

2025年107営業日目は144.78円からスタート。東京市場では朝からドルが大きく上昇した。エヌビディアの好決算や米裁判所のトランプ関税「違法」判断で、米経済先行きに対する懸念が若干和らいだことがドル買いとなった。
米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録が利下げに慎重な姿勢が示していたことも材料の一つ。ドル/円は前日の高値(145.08円)をあっさり超えると昼前には5月15日以来の高値となる146.28円をつけた。
しかしトランプ政権がすぐに上訴するとともに、他の根拠法を用いた関税を検討中と伝えられて、「トランプ関税破棄」を理由にしたドル買いは失速した。米経済の先行きはさらに不透明感が増す中で明け方には144円を割り143.96円まで下落した。
週末から来週前半のサポートとレジスタンス

レジスタンス:
148.65円 05/12
148.45円 05/13
147.67円 05/14
146.75円 05/15
146.28円 05/29
サポート:
143.96円 05/29
143.85円 05/28
142.11円 05/27
141.97円 04/29
141.45円 04/23
2025年 主要指標 終値

今日の為替ウォーキング Wonderful Tonight Eric Clapton
今日の一言
1万時間が、天才といわれる人たちに共通するトレーニング時間である。1日3時間のトレーニングを10年間続ける計算になる
Wonderful Tonight Eric Clapton
トランプ関税「破棄」、短期ドル高、中期的にはドル安?米国の国際貿易裁判所は28日、トランプ大統領の関税の大部分を、大統領の権限を逸脱しているとして、違法とする判決を下した。マーケットはこの決定を好感してドル買いで反応した。とはいえ「不確実性」が消えたわけでは、全くない。
トランプ政権は判決を不服として直ちに上訴したが、最高裁が関税を合法と判断する可能性もある。あるいはトランプ大統領が別の法案を使って関税を正当化するかもしれない。
重要なことは、トランプ関税を巡る不確実性が増す中で、米国に積極的に投資したり雇用したりする企業がどんどん少なくなっていることだ。たとえトランプ政権が判決に従い関税を撤回したとしても、世界の貿易相手国の米国に対する不信感は半永久的に残るだろう。いじめた方は忘れても、いじめられた方は絶対にそのことを忘れない。
関税差し止めによって、関税で得るはずだった金額のおよそ4分の3が無効になると見積もられている。トランプ大統領が推し進める大型減税プランのBig Beautiful Bill(BBB)法案の財源は、関税引き上げで得た歳入で賄うというロジックだったがこれが崩れることになる。
判決が出るまでは、これまでの関税は据え置かれることになったが、これは、米消費者にとっては増税が続くことを意味する。

今週の注目経済指標

Winners & Losers

(荒地 潤)