6月4日のドル/円は142円台まで円高になったあと、NY市場で144円台まで円安に動きました。米経済の先行き不透明感が強まっている中でも、この日発表されたJOLTS求人件数が予想以上に多かったことが理由です。
今日のレンジ予測
[本日のドル/円]↑上値メドは144.70円↓下値メドは142.55円FRB:トランプ大統領によるあからさまなFRB批判は、FRBが独立性を証明しようとしてさらにタカ派に傾く危険性がある
ブランド品:米国人の最も好きなブランドはルイ・ヴィトン、グッチを抜く
スウェーデン:リクスバンク利下げサイクル終了
スペイン経済:ドイツの経済成長を大幅に上回る
トランプ関税:カナダのGDPを0.2~0.3%引き下げる可能性
前日の市況
6月3日(火曜)のドル/円相場の終値は前日比1.32円「円安」の144.00円。1日のレンジ幅は1.74円だった。

TACO呼ばわりされて感情的になったのか、トランプ大統領が「6月4日から鉄鋼・アルミニウムの追加関税を50%に引き上げる」と表明した。これに対してカナダ、オーストラリア、欧州連合(EU)が報復関税を示唆するなど、貿易摩擦の再燃を嫌気して6月はドル売り優勢でスタートした。
ただその一方で、トランプ大統領と中国習近平主席が今週電話会談を行う予定があることや、トランプ政権が7月8日の関税一時停止の期限が迫る中で、早く合意を成立させたいとの切迫感から貿易相手国に対して最善の貿易交渉(ベストオファー)案を提示するよう求めたことが分かるなど、マーケットにとっては明るい材料もあるため、一方的なドル売りにはなっていない。

2025年110営業日目は142.64円からスタートして、東京時間朝にこの日の安値となった142.37円をつけた。NY市場では、この日発表された米国4月のJOLTS求人件数は、市場予想上回る結果となった。
今週発表される雇用統計を前に、米国の労働市場の堅調さが確認され、米連邦準備制度理事会(FRB)の金利据え置きの期待が高まったことで米長期金利が上昇し、ドルが買われた。ドル/円は未明に前日の高値(143.99円)を超え、144.11円まで上昇してこの日の高値をつけた。
ドル/円:サポートとレジスタンス

レジスタンス:
147.67円 05/14
146.75円 05/15
146.28円 05/29
144.44円 05/30
144.11円 06/03
サポート:
142.37円 06/03
142.11円 05/27
141.97円 04/29
141.45円 04/23
139.89円 04/22
2025年 主要指標 終値

今日の為替ウォーキング When Will I See You Again
今日の一言
重要な仕事ほど、冷静に取り組めば、大騒ぎするよりずっと「よい仕事」ができる
When Will I See You Again
「インフレ期待」とは、物価の行方を人びとがどう見るかの予想だ。インフレ期待が安定しているときは、物価の上昇が続かないと予想する人が多く、物価上昇の抑制効果がある。しかし、インフレ期待が不安定になると、物価の上昇が続くと考える人が多くなり、買い占めや売り惜しみ、あるいは賃上げ要求といった行動が発生しやすく、現実の物価を押し上げ加速させることになる。
中央銀行の仕事は、金利を調節することによってインフレ期待を安定させ、物価高との悪循環を防ぐことである。FRBや欧州中央銀行(ECB)が、まさに今行っていることだ。
FRBは1年間で述べ5%を超える利上げを続けることで、インフレ率をピーク時の半分まで下げることができた。それでも、インフレ率は依然としてFRBの目標値2%より高い水準にとどまっている。
FRBがこのまま引き締め政策を続けていけば、いずれかの時点で米経済が高金利に耐えられなくなり、深刻な景気後退が発生するだろう。FRBもそれは十分承知しているが、利下げしたくてもできない状況だ。
世界の中央銀行にとって、インフレ期待の不安定化は悪夢でしかない。しかし、日本銀行だけはそうなることを望んできたのだ。日銀は何十年もの間、インフレ期待を刺激することに全力を注いできた。
円安をあおって輸入インフレに火をつけ、物価上昇を長く経験させることで、日本人にインフレ期待を形成させようとしてきた。そのかいあって、ついに日銀はインフレの離陸に成功した。日本の消費者のインフレ期待は急激に上昇している。
日本のインフレはこれからどうなるのか。植田和男日銀総裁は「長期的に2%のインフレ目標が達成されたなら、インフレ予想も大体2%に収束する」と楽観的だ。物価目標を成就した暁には日銀は金融政策を正常化(利上げ)するので、インフレが暴走することはないと考えている。しかしインフレが都合よく2%で止まるはずがないのは、他国の例で明らかだ。

もっとも、日銀は利上げしたくても、絶対にできない理由がある。金利が上昇した場合の利払い費負担が国の財政運営にとって重大なリスクとなるからだ。将来税収で返済する必要がある国の長期債務残高、いわゆる「国の借金」は2023年12月末時点で1,286兆4,520億円だったと財務省が発表した。
国民1人あたりで単純計算すると1,000万円を超える。債務残高はここ10年で1.5倍に急増した。日銀の利上げは利払い費負担をさらに増やすことであり、政府は絶対に首を縦に振らないだろう。
しかし、日本経済にインフレを定着させることができれば、政府債務負担は実質的に軽減されることになり、財政の持続可能性がかなり改善することが期待できる。つまり日銀にとっての「正解」は、低金利をできるだけ継続してインフレ率をできるだけ高くすることである。
財務省による為替介入は、円安の是正というよりスピード違反の取り締まりであり、真の目的は円安の長期定着である。したがって、日銀は利上げせず、円安も止まらず、日本のインフレはさらに高くなる。
今週の注目経済指標

コーンチャート分析


(荒地 潤)