6月4日のFX市場では、ドル/円が円高に動き142円台半ば近くまで下落しました。この動きの背景には、トランプ関税の影響で米国内の景気減速懸念が高まっていることがあります。

ただ、米中間の関税交渉が進むとの期待も一部にあり、ドルの下支え要因となっています。


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今日のレンジ予測

[本日のドル/円]上値メドは144.25下値メドは142.02

推し活:持ち家の夢を諦めた若者は、貯金や生活家電を買うより推し活に優先的に支出する傾向
ぜいたく品:米国人のブランド品購入支出割合が過去最高
コト消費:2024年のコト消費支出はモノ消費の2.4倍
ECB利下げ:EUの賃金上昇率が急減速。ECB利下げハードル低く、大幅利下げも
カナダ:カナダ中銀関税の経済的影響は「インフレより大きい」


前日の市況

 6月4日(水曜)のドル/円相場の終値は、前日比1.23円「円高」の142.77円。1日のレンジ幅は1.79円だった。


米経済データの悪化でドル安。ドル/円は142円台に下落
出所:MarketSpeed FXより、楽天証券作成

 2025年111営業日目は143.81円からスタート。前日のドル買いの流れを引き継いだ東京市場では昼過ぎに前日の高値(144.11円)を超えて144.39円まで円安に動いた。


 しかし、この日発表された米民間部門の雇用統計である5月のADP雇用データが、3.7万人増と市場予想の11.4万人増を大きく下回り、2年ぶりの低い伸びとなったことでドル買いは止んだ。米雇用の勢いが失われつつあるとの懸念が広がる中で、未明に142.60円まで円高に動いた。


 しかしドル売りも限定的だった。最近はADP雇用データと雇用統計の数値が大きくかい離しているため、マーケットが明日(6日)の雇用統計の結果まで待ちたいようだ。雇用統計の結果が悪ければ、米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げが検討される可能性がある。


 ADP雇用データの結果を受けて、トランプ大統領と米連邦住宅金融局(FHFA)長官は、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長に対して即座に利下げするように要求している。


米経済データの悪化でドル安。ドル/円は142円台に下落
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 トランプ大統領は、6月4日から鉄鋼・アルミニウムの追加関税を50%に引き上げた。貿易相手国との関係が悪化する中で、オーストラリアと欧州連合(EU)が貿易協定の強化を急ぐなど「米国離れ」が進み始めている。

中国は、欧州エアバスへ過去最大の数百機規模の発注を検討するなど、米国以外との関係改善に動いている。


 一方、トランプ政権は関税一時停止の期限が7月8日に迫る中で、早く合意を成立させたいとの焦りもあり、貿易交渉相手国に対して最善の貿易交渉(ベストオファー)案を提示するよう求めている。


週後半のドル/円 サポートとレジスタンス

米経済データの悪化でドル安。ドル/円は142円台に下落
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2025年 主要指標

米経済データの悪化でドル安。ドル/円は142円台に下落
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今日の為替ウォーキング Toyboy

今日の一言

株を選ぶ前に時を選べ - ウォール街格言


Toyboy

 米国の国際貿易裁判所は5月28日、大統領の権限を逸脱しているとして、トランプ政権の関税の大部分を違法とする判決を下した。マーケットはこの決定を好感してドル高・株高で反応したが、トランプ関税を巡る不確実性が消えたわけではない。むしろさらに深まったのではないだろうか。


 トランプ政権は判決を不服として直ちに上訴した。今後、最高裁が関税を合法と判断する可能性があるし、トランプ政権が別の根拠法を使って存続させることもありえる。判決がでるまでに数カ月かかるといわれているが、それまでの期間も追加関税は徴収され続けるのだろうか。また最終的に違法となった場合は消費者や企業が払い過ぎた税金(関税)は還付されるのか。


 貿易相手国との相互関税上乗せ分の発動の猶予期限は7月に来るが、その時までに判決が出ていなければどうなるのか。米国企業が現在の関税をベースとした価格設定を見直す必要が生じた場合、インフレ見通しやFRBにどのような影響が出るのかも不明だ。


 もし確実なことがあるとすれば、トランプ関税を巡る不確実性が増す中で、米国に積極的に投資したり雇用したりする企業がどんどん少なくなっていることだ。たとえトランプ政権が関税を撤回したとしても、世界の貿易パートナーの米国に対する不信感は半永久的に残るだろう。

いじめた方は忘れても、いじめられた方は絶対にそのことを忘れない。


 関税差し止めによって、得るはずだった金額のおよそ4分の3が無効になると見積もられている。トランプ大統領が推し進める大型減税プランのBig Beautiful Bill(BBB)法案は、その財源を関税引き上げで得た歳入で賄う計画だったが、これが崩れることになりそうだ。


 減税のための関税であったはずが、米消費者にとっては増税(関税)だけが残ることになる。トランプ政権がそれでも減税を強行するならば、財政悪化による米国格下げリスクが高まるだろう。短期的にはドル高でも、中期的にはドル安だ。


米経済データの悪化でドル安。ドル/円は142円台に下落
出所:楽天証券作成

今週の注目経済指標

米経済データの悪化でドル安。ドル/円は142円台に下落
出所:楽天証券作成

ヒートマップ分析

米経済データの悪化でドル安。ドル/円は142円台に下落
出所:楽天証券作成

米経済データの悪化でドル安。ドル/円は142円台に下落
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(荒地 潤)

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