6月5日のFX市場では、米中貿易摩擦の懸念がやや後退し、マーケットのリスク選好が強まったことで、安全資産である円の需要が減り、143円台まで円安が進みました。
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著者の荒地 潤が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 「ドル/円はどちらに動く? 今夜の雇用統計、3つのシナリオ」 」
今日のレンジ予測
[本日のドル/円]↑上値メドは144.90円↓下値メドは142.00円米利下げ:ベッセント財務長官:トランプ大統領が求めているのは、長期金利の下落。政策金利ではない
働き方改革:適切な時期に適切な職務に適切な人材を雇用する必要がある
カナダ経済:トランプ関税でリセッションのおそれ。カナダ中銀は大幅利下げも
関税:トランプ大統領「関税は欲しいものをなんでも手に入れることができる打ち出の小づち」
トランプ関税:米政府を所得税への過度の依存からシフトさせ、関税など海外からの収入に軸足を置くための戦略
前日の市況
6月5日(木曜)のドル/円相場の終値は、前日比0.84円「円安」の143.62円。1日のレンジ幅は1.46円だった。

2025年112営業日目は142.70円からスタートした後、東京時間朝に142.52円まで下落したが、今週の安値(142.37円)には届かなかった。厚生労働省が発表した、物価の影響を考慮した4月の実質賃金は1.8%減と、4カ月連続マイナスだった。これも円売り材料の一つになった。
海外市場では円安が進んだ。トランプ大統領と習近平国家主席が電話会談を行い、新たな交渉ラウンドを開始することで合意したことが伝わると、リスクセンチメントが上向いた。ドル/円は未明に143.98円まで上昇してこの日の高値をつけたが、前日の高値(144.39円)は超えられなかった。
今夜は、5月米労働省(BLS)雇用統計の発表がある。今週発表された米雇用関連のデータを見比べると、4月JOLTS求人件数は、市場予想を上回る結果となった一方で、5月ADP雇用データでは、民間部門の雇用者が3.7万人増と市場予想の11.4万人増を大きく下回り、2年ぶりの低い伸びとなった。
JOLTS求人件数はサンプル数が少ない上に2カ月前の「古い」データなので、トランプ関税の影響をより反映しているのはADP雇用データや新規失業保険申請件数の方だ。ただ最近はADP雇用データが弱くてもBLS雇用統計が強い結果になることがよくある。
それだけにマーケットも今夜の雇用統計を確かめるまでは動きにくいようだ。トランプ大統領と米連邦住宅金融局(FHFA)長官は、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長に対して即座に利下げするように要求している。
今月の雇用統計の詳しい解説は「 5月雇用統計の注目ポイント 雇用市場の未来はそんな悪くないよ Hey!Hey!Hey!5月米雇用統計 詳細レポート 」

ドル/円 サポートとレジスタンス
レジスタンス:
146.75円 05/15
146.28円 05/29
144.44円 05/30
144.39円 06/04
143.98円 06/05
サポート:
142.52円 06/05
142.37円 06/03
142.11円 05/27
141.97円 04/29
141.45円 04/23
2025年 主要指標

今日の為替ウォーキング Hot Stuff
今日の一言
たまには失敗しないと、人生で失敗する
Hot Stuff
BLSが5月2日に発表した2025年4月の米雇用統計では非農業部門(NFP)の就業者数は17.7万人増加して、市場予想の13.5万人増を上回る結果となった。一方で、3月の就業者数は当初発表の22.8万人から18.5万人に下方修正された。
失業率は4.2%で前月と変わらず、安定した雇用環境が維持されていることが示された。時間当たり賃金の伸びは前月比0.2%増と予想(0.3%増)を下回り、賃金の伸びが鈍化していることが確認された。

4月の米雇用統計では、トランプ関税の影響はまだ顕著には表れていないとする見方が多かった。17.7万人という増加者数は、過去12カ月の平均とほぼ同じで、米企業が関税の影響を受けながらも、採用計画を大きく変更していないことを示唆している。
しかし、不安な要素もある。業種別では、運輸・倉庫業の雇用が急増しているが、これは企業が関税対策として輸入を急いだ結果と考えられている。
トランプ関税の本格的な影響は今後数カ月で顕在化すると予想されていて、FRBは失業率が7月以降に急速に悪化する可能性があることを指摘している。
今回の雇用統計は、米国の労働市場がまだ強いことを示しており、景気先行きに対する不安を和らげることになったが、今後は企業の採用計画や経済全体への影響を慎重に見極める必要がある。

今週の注目経済指標

Winners & Losers

(荒地 潤)