日経平均が3万8,000円手前で足踏みする中、ドイツDAX指数は最高値を更新。「TACO」に象徴される通り、トランプ関税暴走を抑える動きが広がりつつあることを好感、世界株高が再現しつつあります。
日経平均は3万8,000円手前で足踏み、ドイツDAXは最高値更新
先週(営業日6月2~6日)の日経平均株価は、1週間で223円下落して3万7,741円となりました。「3万8,000円の壁」を超えられず、手前で足踏みが続いています。以下のチャートをご覧いただくと分かりますが、26週移動平均線に上値が抑えられた形です。
日経平均週足:2024年1月4日~2025年6月6日

とはいえ、日経平均はトランプ関税ショックの下げはほとんど取り返し、下値は堅くなってきています。
トランプ関税への恐怖が低下してきたこと、世界景気が今のところ堅調に推移していることから、株を買い戻す動きが広がっています。
日経平均だけでなく、世界の主要国株価指数は、軒並みトランプショックの暴落から急回復しています。ドイツDAX指数は、史上最高値を更新しつつあります。
日米独中株価指数の年初来推移:2019年末=100、2025年6月6日まで

トランプ関税暴走が抑えられる期待も
トランプ関税の不安はこれから蒸し返す可能性はあります。ただし、以下3点に象徴される通り、米国内で暴走を抑える動きが出つつあることに期待が出ています。
1:「TACO」などトランプ関税をやゆする言葉が広まる
トランプ大統領が関税政策を巡って、強硬策を出してすぐに引っ込めることを繰り返していることから、TACO(トランプはいつも弱腰)というやゆが広まっています。
トランプ関税が、貿易相手国だけでなく、米国の製造業や消費者にダメージを与えることが明らかになり、トランプ大統領が思い通りに関税を駆使できなくなってきていることが分かります。株式市場にとって安心材料となっています。
2:米国際貿易裁判所がトランプ関税差し止めを命じる
米国際貿易裁判所は5月28日「国際緊急経済権限法(IEEPA)」に基づく相互関税などトランプ大統領が打ち出した関税を違法と判断し、差し止めを命じました。ただし、二審にあたる米連邦巡回区控訴裁判所は29日、判決の一時停止を命じました。そのため関税措置は継続されます。
最終的には、最高裁判所の判決を待つことになります。最高裁がトランプ関税の差し止めを認める可能性は低いものの、こうした訴訟が起こることがトランプ関税の暴走に対して、抑止力を発揮することが期待されます。
3:イーロン・マスク氏がトランプ大統領と互いに罵倒
テスラCEOのイーロン・マスク氏は、大統領選以来、トランプ大統領の強力な支持者として活動、トランプ氏当選の立役者となり、トランプ政権では「政府効率化省」のトップまで務めました。
ところが、そのマスク氏は、政策方針でトランプ大統領と対立、トランプ政権を退任すると、一転して激しくトランプ批判を始めました。トランプ大統領は激高、マスク氏を激しく攻撃し始めました。マスク氏の離反は、大統領支持者が一枚岩ではなくなってきていることを象徴していると言えます。
令和ブラックマンデーとトランプ関税ショックの共通点
トランプ関税ショックはまだ終わったわけではありませんが、これまでの推移を見ると、「令和のブラックマンデー」と、以下二つ共通点があります。
共通点1:日本版恐怖指数(日経VI)が急激に高まった後、急激に低下
昨年8月の「令和のブラックマンデー」も、今年4月の「トランプ関税ショック」も、恐怖が急激に高まって日経平均が急落したものの、すぐに恐怖が低下して日経平均は急反発しています。
投資家の心理の変化は、恐怖指数といわれる指数の動きに表れています。「日本版恐怖指数」といわれる「日経平均ボラティリティ・インデックス(VI)」と日経平均は、同じような動きをしています。
日経平均と日経平均VI

共通点2:海外投機筋の売りで急落、投機筋はその後の急反発で巨額損失
「令和のブラックマンデー」も「トランプ関税ショック」も、日経平均を暴落させたのは、外国人投資家の売りです。特に、日経平均先物売りが大きな影響を及ぼしました。日経平均先物を大量に売った投機筋は、その後の急反発で巨額の損失を出したことになります。
以下、令和のブラックマンデーの外国人売買をご覧ください。
令和のブラックマンデー:日経平均の動きと外国人投資家売買動向:2024年6月24日~8月30日

トランプ関税ショックでも、同じように、外国人の売りが日経平均を暴落させました。
トランプ関税ショック:日経平均の動きと外国人投資家売買動向:2025年3月24日~5月30日

日経平均は昨年8月「令和のブラックマンデー」で3万8,000円を割れると一気に3万1,156円まで下がりましたが、急反発してすぐに3万8,000円台を回復。
日経平均は今年4月「トランプ関税ショック」で3万8,000円を割れると一気に3万0,792円まで下がりましたが、急反発して一時3万8,000円台を回復。
去年の8月も今年の4月も、海外投機筋が日経平均先物を大量に売って下値トライを狙いましたが失敗。投機筋はその後の急反発で巨額の損失を出しました。2回にわたり、下値トライで大きな損失を出したことにより、投機筋はさらなる下値トライをしにくくなってきました。
日本株の投資判断
日本株は割安で、長期的な上昇余地は大きいと考えています。トランプ関税の先行きは予測不能ですが、日本株は、関税ショック後を見据えて、時間分散しながら投資していくべきと考えています。
トランプ関税ショックはまだ終わっていませんが、トランプ大統領の独断専行をチェックする動きが米国内に出ていることから、世界経済を崩壊させるほどのダメージは避けられる期待も出てきました。
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(窪田 真之)