ブロードコムの2025年10月期2Qは、20.2%増収、96.6%営業増益。AI関連半導体が好調で、今期、来期とも年率60%成長が予想される。

ただし、AI関連半導体の中の特注型AI半導体は他の半導体に比べやや生産コストが高く研究開発費の増加も負担に。楽天証券の営業利益予想を下方修正するが、目標株価は引き上げる。一定の投資妙味があろう。


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「 決算レポート:ブロードコム(引き続きAI関連半導体が好調) 」


毎週月曜日午後掲載


本レポートに掲載した銘柄 ブロードコム(AVGO、NASDAQ)


1.ブロードコムの2025年10月期2Qは、20.2%増収、96.6%営業増益

 ブロードコムの2025年10月期2Q(2025年2-4月期)は、売上高150.04億ドル(前年比20.2%増)、営業利益58.29億ドル(同96.6%増)となりました。


 セグメント別に見ると、セミコンダクター・ソリューションズは、売上高84.08億ドル(同16.7%増)、営業利益約48億ドル(同20.7%増)となりました(注:営業利益は決算電話会議における会社側コメントの営業利益率約57%より計算した概算値。正確な数字は今後開示される10Q(四半期報告書)を待つ必要がある)。売上高のうちAI関連は約44億ドル(同42.2%増)、非AI関連が約40億ドル(同2.5%減)となりました。


 AI関連の約60%が「XPU」と呼ばれる特注型AI半導体で、前年比二桁増でした。また、残りの約40%はイーサネットベースのAIネットワーキング向け半導体で、前年比70%以上の伸びとなりました。XPUとともにAIネットワーキング用半導体が重要になっています。


 一方で、非AI関連は前年割れとなりました。ブロードバンド、エンタープライズネットワーキング向けが前四半期比で伸びましたが、産業向け、ワイヤレス向けが減少しました。


 今2Qのセミコンダクター・ソリューションズの営業利益率は今1Q57.3%の横ばいになりました。XPUの売上総利益率が非AI関連に対して若干低いこと、XPUの研究開発費増加が影響しました。


 また、インフラストラクチャー・ソフトウェアは売上高65.96億ドル(同24.8%増)、営業利益約50億ドル(同57.8%増)となりました(注:営業利益は決算電話会議における会社側コメントの営業利益率約76%より計算した概算値)。2023年11月に買収が完了した仮想化ソフトの「VMware」売上高の開示はなくなりましたが、「VMware」の契約について売り切り型から月額定額のサブスクリプション契約への切り替えを進めたため、営業利益率は前2Q59.9%から大幅に改善しました。


表1 ブロードコムの業績
決算レポート:ブロードコム(引き続きAI関連半導体が好調)
株価(NASDAQ) 246.93ドル(2025年6月6日)時価総額 1,162,300百ドル(2024年6月6日)発行済株数 4,826百万株(完全希薄化後、Diluted)発行済株数 4,707百万株(完全希薄化前、Basic)単位:百万ドル、ドル、%、倍出所:会社資料より楽天証券作成注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。注2:EPSは完全希薄化後(Diluted)発行済株数で計算。ただし、時価総額は完全希薄化前(Basic)で計算。

表2 ブロードコムのセグメント別売上高内訳と前年比:四半期ベース
決算レポート:ブロードコム(引き続きAI関連半導体が好調)
単位:100万ドル、%出所:決算電話会議より楽天証券作成

表3 ブロードコム:セグメント別業績(四半期)
決算レポート:ブロードコム(引き続きAI関連半導体が好調)
単位:百万ドル出所:会社資料より楽天証券作成注:2025年10月期2Qのセグメント別営業利益は、決算電話会議における会社側コメントの営業利益率から計算した概算値。

2.AI半導体は好調だが、楽天証券の2025年10月期、2026年10月期営業利益予想を下方修正する

 今3Qの会社側売上高ガイダンスは、売上高約158億ドル(前年比20.9%増)です。内訳は、セミコンダクター・ソリューションズ91億ドル(同25.1%増)、うちAI関連51億ドル(同64.5%増)、非AI関連40億ドル(同4.2%減)です。セミコンダクター・ソリューションズの中でXPUの売上構成比が上昇する見込みなので、今2Qに対して今3Qは売上総利益率が低下する見込みです。


 インフラストラクチャー・ソフトウェア売上高の会社側ガイダンスは67億ドル(同15.6%増)です。売り切り型からサブスクリプションへの転換が進むにつれて、増収率は前年比、前四半期比ともに鈍化する見込みですが、今の高い営業利益率は続くと思われます。


 会社側は、2025年10月期通期、2026年10月期通期ともに、セミコンダクター・ソリューションズのAI関連売上高は今1~3Q累計の前年比60%増と同様に年率約60%増が続くと予想しています。今の顧客3社がコストパフォーマンスが良く、エヌビディア製AI半導体よりも価格が安い特注型AI半導体を増強する方向だからです。

生成AIにおける推論需要の増加に対応するためでもあります。(注:会社側は顧客名を開示していないが、今の顧客3社は、アマゾン、アルファベット、マイクロソフトと思われる。また見込み客が4社あるが、アップル、オラクル、メタ・プラットフォームズ、オープンAIと推定される。)


 一方で、非AI関連は横ばいが続くと予想されます。インフラストラクチャー・ソフトウェアもサブスクリプション契約への転換が一巡すれば、増収増益率は鈍化すると予想されます。


 今2Qまでの実績と今3Qの会社側ガイダンスを参考に、楽天証券では2025年10月期を売上高623億ドル(前年比20.8%増)、営業利益243億ドル(同80.5%増)、2026年10月期を売上高760億ドル(同22.0%増)、営業利益320億ドル(同31.7%増)と予想します。AI関連売上高は、今期、来期とも約60%増と高い伸びが期待できます。一方で、XPU(特注型AI半導体)はAIネットワーキング用半導体や非AI関連よりも生産コストがやや高いこと、研究開発費の増加が当面続くと思われることを考慮しました。そのため、今期、来期とも売上高予想は前回予想に比べ上方修正しましたが、営業利益予想は下方修正しました。


 なお、この予想は現在の顧客3社をベースとしており、見込み客4社を考慮していません。見込み客がいつ頃本格的にXPUとAIネットワーク用半導体を発注するのかが今後の注目点です。


表4 ブロードコムのセグメント別売上高内訳と前年比:通期ベース
決算レポート:ブロードコム(引き続きAI関連半導体が好調)
単位:100万ドル、%出所:決算電話会議より楽天証券作成

表5 ブロードコム:セグメント別業績(通期)
決算レポート:ブロードコム(引き続きAI関連半導体が好調)
単位:100万ドル出所:会社資料より楽天証券作成

3.ブロードコムの今後6~12カ月間の目標株価を前回の200ドルから300ドルに引き上げる。

 ブロードコムの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の200ドルから300ドルに引き上げます。


 楽天証券の2026年10月期予想1株当たり利益(EPS)5.82ドルに今の評価である株価収益率(PER)50~55倍を当てはめました。一定の投資妙味があると思われますが、株価に割高感があるため、株価の上昇には時間がかかる可能性があります。


本レポートに掲載した銘柄 ブロードコム(AVGO、NASDAQ)


(今中 能夫)

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