FXでの大失敗、そしてお嬢さんからの「ニートになりたい」という衝撃的な言葉を乗り越え、資産2億円を達成した東山一悟さん。後編では、本格的に投資を再開してからの道のり、子供への金融教育、50代からの投資アドバイスについて伺った。


FXで大損し一度退場、51歳でリストラされた私が、資産2億円...の画像はこちら >>

専門家の本で猛勉強!インデックス投資との出会い

トウシル:お父様の株式相続と、お嬢さんの将来を考えて投資を再開。今度はきちんと勉強しよう、と思われたそうですが、具体的には、何から勉強を始めたのですか?


東山さん:まずは本屋に行って、専門家が書いている投資の本を読みあさりました。よくある「短期間でこんなにもうけた!」というような個人投資家のあおり文句の本ではなく、本当に専門家の方がしっかりと書いている本を選びました。


 例えば、セゾン投信(現なかのアセットマネジメント)創業者の中野晴啓さん、SBIグローバルアセットマネジメント(旧モーニングスター)社長の朝倉智也さん、経済評論家の山崎元さんや勝間和代さんなど、経済評論家や金融機関のトップの方々の本を片っ端から読みました。


 また、証券会社や金融機関が主催するセミナーにも行きました。その結果、私のような「普通の人」は、個別株投資よりもインデックス投資メインの方がいいんじゃないか、という考えに至ったんです。


トウシル:本格的な投資デビューですね!


東山さん:多くのセミナーでは質疑応答のコーナーがありますので、本を読んでもイマイチ理解できないことを聞けるのがいいんですよ。特に中野さんやレオス・キャピタルワークス社長の藤野英人さん、コモンズ投信会長の渋澤健さんが主催する「草食投資隊」のセミナーが面白くて。


 お三方に直接ざっくばらんに質問できるのも良かったですし、草食投資隊が当時から掲げられていた「ゆっくりコツコツと資産を増やす草食投資」という投資方針がとてもふに落ちましたので、常連のように何度も通いながらお話を聞いていました。


 金融ビッグバンを経て投資への理解が広まりつつありましたが、まだまだ周りには投資をやっている人はいなかったので、投資の話ができる人と会うのも目的の一つになっていました。そういう場に行くとサラリーマンの方、主婦の方、学生の方など、いろいろな個人投資家の方が来られていて、そういうコミュニティの中に入るのが非常に心地よかったというのもあります。


 一種の「同志」を見つけるような感覚ですね。中野さんもおっしゃっていますが、投資は航海のようなもので、同じ船に乗る仲間がいることが大切だと。

特にインデックス投資の場合、投資家同士はライバルではなく、共通の目的に向かって歩む仲間のような感覚があります。


トウシル:プロの方々のリアルな投資話を聞くことができたのはよかったですね。以前の「フィーリング投資」や「FXで一獲千金」から方向転換できたのですね。


東山さん:はい。当時はまだSNSも普及していなかったので「インデックス投資をやっている人が他にいるんだ!」と分かるだけで心強かったです。


トウシル:現在、東山さんは「 夢見る父さんのコツコツ投資日記 」というブログを運営されていますが、始められたのはこの頃でしょうか?


東山さん:そうです。「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year」というイベントがあり、その投票資格が「ブログを書いていること」だったので、ブログを始めました。書くことが元々好きだったというのもありますし、ブログを書くことでコメントをもらえたりすると「一人じゃないんだ」と感じられました。


トウシル:ブログを通じて同好の士との新たな交流も生まれていたんですね。


東山さん:個人投資家の集まりで「ブログ書いてるんだ」と言えば話のタネになりましたね。また、三菱UFJアセットマネジメントさんなどが定期的にブロガーを集めたミーティングを開いてくれていたので、投資ブロガー同士で情報交換もたくさんできました。


インデックス投資を主軸に、年間1,000万円ペースで資産増

トウシル:この頃から、投資方針を転換して、インデックス投資に重点を置いたのですか?


東山さん:メインはインデックスファンドでしたが、「草食投資隊」にご縁があったので、ひふみ投信やコモンズ投信のアクティブファンドも購入していました。個別株は相続したものと、リーマンショック以前から持っていたものを整理しただけで、しばらくは新規購入しませんでした。


 保有しているだけで売買はせず放置、という感じでしたね。家計簿アプリの「マネーフォワード」を導入してからは、アプリ上で個別株の現在価格も把握できるようになりましたが、それまでは3~4年、いくらになっているかも分かっていませんでした(笑)。


 結果的にはこの数年間で、給料から毎年300万円ほど投資に回していた分と、保有銘柄の評価益を含めて、毎年1,000万円くらいのペースで資産は増えていました。本業の給料よりも増えた年もありましたよ。


トウシル:投資再開から一気に覚醒した感がありますね! 2017年にご自宅を購入されたそうですが、この時の資金は投資で得た利益から?


東山さん:いえ、実はフルローンなんです。長らく賃貸で借りていた家の大家さんが高齢になられて、家を処分したいという話があり、相場より2割ほど安く売ってくれることになりました。


 一括で払うこともできましたが、当時は住宅ローンの金利が0.4%程度で安かったんですよ。インデックス投資のリターンで5~6%も狙えますし、住宅ローン控除も使えるのは有利だったので、この時48歳でしたが30年のフルローンを組んでいます。


リストラとコロナショックが資産2億円への追い風に

トウシル:順調な投資成績に支えられてフルローンでご自宅を購入。投資再開後は順調に増益と、順風満帆な中、50歳の時に早期退職勧告があった、とのこと。この時のお気持ちはいかがでしたか?


東山さん:「こんなに真面目に、一生懸命働いてきたのに…」という、会社に対するガッカリ感が大きかったですね。自分が出してきた成果は評価されないんだな、と。


 一方で、当時は7,000万円ほどの資産があり、退職金を含めれば十分にFIREできそうだったので、「会社がそんなつもりなら、こっちから辞めてやるわ。

お金に困ってないし!」という感じでスパッと辞めることにしたんです。


「あなたにはこの会社で仕事はありません」と言われてしまったので、無理にしがみついてもモチベーションもキープできないですよね。また、本業で実績を残してきたので、いざとなれば再就職もできるだろうという気持ちもありました。


トウシル:退職されたのが2020年2月末で51歳。ちょうどコロナショックで株価が一番下がった時期ですよね。


東山さん:ええ、そうです。そのタイミングで、多額の退職金が入ってきましたので、ほぼ全額をインデックス投資に回しました。結果的には退職金分の投資が、もらった時の2.5倍くらいになっているので、本当に良いタイミングでしたね。金銭的には会社に残っているよりもよっぽど良かったなと思います。


トウシル:退職が2020年2月末。10月には再就職されていますが、どのような会社にお勤めになったのでしょうか。


東山さん:現在はハローワーク経由で就職したメディア企業に勤務しています。

前職の100分の1程度の小さな会社です。再就職の直前に、例の娘の「ニートになりたい」発言があったので、「働いている父親の姿を見せなきゃいかん」と思って急いで見つけた会社でしたが、経験や知識を生かせる職場なので楽しく働いています。


トウシル:再就職から4年後の2024年には、資産が2億円を突破したとのことですが、この間はどのような投資をされていたのでしょうか。


東山さん:退職時の資産は、コロナ期の含み益と退職金を合わせて約1億円。退職金がインデックスファンドで約3倍になったほか、ビットコインや、時折はイナゴ投資(良い材料が出て株価上昇が見込まれる銘柄などに飛びついて、短期売買で利益を出す投資法)の機運も味方してくれました。


トウシル:FXで投機的なトライアルに懲りたはずなのに(笑)、投機にも再挑戦されていたんですね!


東山さん:結果として利益を出せましたが、十分に理解できないまま投資していましたので、運に助けられたと思っています。2022年末にはレバナスのブームに乗って投資したものの、一時は3,000万円ほど資産を目減りさせたこともあります。


 幸いマイナスは取り返せましたが、ここまでで一生分の運を使い果たしたと思っていますので、もう新しいものへの投資は原則取りやめるつもりです。


トウシル:日本航空の株の時もそうですが、運が味方してくれるケースも多いですね。嗅覚がスゴイのでしょうか?


東山さん:いえいえ。本当に「運」でしかないので自慢もできません(笑)。これからは、投資の出口戦略を考える時期になります。

現在の資産配分は先進国株50%、日本株25%、新興国株15%、個人向け国債10%であり、今後は個別株銘柄の入れ替えはやめるつもりです。


 新規の投資はiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)といくつかの日本株アクティブファンドだけ。どちらも60歳まで積み立てたら、後は取り崩しに入る予定です。


「すぐもうかる」は詐欺!伝えたいのはダマされないための常識

トウシル:お嬢さんは「うちには2億円の資産がある」と知っているのでしょうか? かなりセンシティブな情報なので、子供に伝えて「じゃあもう働かなくていいじゃん」となっちゃったり、金銭感覚が狂ったりするかも…と心配な点も多いと思います。東山さんはお嬢さんへ、どんな金融教育をしておられるのでしょう? 


東山さん:まず、娘はウチの資産額については知っていると思います。本も渡しましたが読んでいたようですし。さらに、新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)前の、ジュニアNISA口座を娘名義で開設しており、すでに、自分で口座内を見られるようにしています。


 自分で時々は、資産総額などを見ているようです。親だけでなく、自分自身の資産も認識しているようで、これは金融教育的にはよかったかなと思っています。


トウシル:おお、素晴らしい! じゃあもう「ニートになりたい」なんて言わなくなりました?


東山さん:はい、今も毎朝起きて仕事に行ってますし、「父親はニートじゃない」と分かってくれたようです(笑)。


トウシル:それはよかったです! お子さんの金融教育に悩んでいる方にアドバイスはありますか?


東山さん:子供に教えるには、親がそもそも最低限のマネーリテラシーがないとダメだと思います。自分で投資してから教えろ、という意味ではなく、「株とは何か」「インデックスとは何か」といった基礎知識は必要でしょう。


 また、それよりもっと大事なのは、投資詐欺などに引っかからないようにするリスク意識を持つこと。

「すぐもうかる」「リターン50%以上」「元本保証」みたいなうまい話はない、ということや、借金をせず保証人にもならないといった常識を、親が知って子供にも教えるべきです。


 個別株でもうかるかどうかは二の次、三の次。もっと手前の基礎的なことを親が学び、子供に教えることから始めるのがいいと思います。


トウシル:投資の神様のバフェットですら、年間約20%の利益なのに、50%なんてあり得ないですよね。何度か地雷をくぐり抜けてきた東山さんならではの重みのある言葉です。


「今日が一番若い日」投資始めは何歳からでも遅くない

トウシル:それにしても、50代で資産2億円とはうらやましすぎます。トウシル読者で「もう50代だし、今から投資をしたって間に合わないだろう…」と思われている方へアドバイスをいただけますか?


東山さん:よく言われているセリフですが、「今日が一番若い日だ」ということを、改めて思い出していただきたいと思います。人生100年時代と考えると、今が50歳ならまだ50年ありますし、平均寿命までなら30年以上あります。長期投資の観点でみれば、30年は十分な時間です。まずは小さくコツコツと始めることをオススメします。


 ただ、50代は若い頃と違い、大きな損失を出した場合のリカバリーが効きにくい年齢です。だから「よく分からないものには投資しない」ことは肝に銘じてほしいと思います。無理に短期間でもうけようとせず、国際分散されたインデックス投資などを、コツコツやっていくことを今から始めるのがいいのではないでしょうか。


トウシル:今後は、東山さんのように、金融資産を遺産として相続する方も増えてくると思います。ある日突然、金融資産を遺されて困る前に、投資の知識や価値について、学び始めたほうがいいかもしれませんね。本日は、ご自身の体験に基づいた貴重なお話をありがとうございました!


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(トウシル編集チーム)

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