6月9日のドル/円相場は144.63円で終了し、円高が進んだ。米5月雇用統計の予想外の堅調さがドル買いを促し、東京市場で144.95円まで上昇したが、その後143.98円まで下落。
今日のレンジ予測
[本日のドル/円]↑上値メドは145.15円↓下値メドは143.95円対中関税:中国製品規制は、インフレを上昇させるより、デフレを緩和する効果
南ア:米国は南アからクロム鉱石の98%、マンガン鉱石の29%を輸入。関税引き上げは米国のインフレを悪化させるだけ
イラン制裁:トランプ大統領「イランの石油輸出をゼロまで持っていく」
FRB:シカゴ連銀総裁「インフレが再上昇するリスクがある」
メキシコ:トランプ関税でインフレ上昇、メキシコ中銀は利下げ幅縮小を検討
前日の市況
6月9日(月曜)のドル/円相場の終値は、前日比0.24円「円高」の144.63円。1日のレンジ幅は0.97円だった。
2025年114営業日目は144.76円からスタート。先週金曜日(6日)に発表された米国の5月雇用統計は、「弱い」との事前予想に反して堅調な結果だったことから、全般的なドル買いが優勢になった。
週明けの東京市場ではこの流れを引き継ぎ、東京時間昼前に144.95円まで上昇した。しかし意外に早く息切れして、雇用統計後の高値(145.09 円)に届くことなく下落すると、夜の初め頃に144円を割り143.98円まで下落した。
その後はロンドンで行われる米中貿易協議の結果を待って様子見モード。トランプ大統領は、中国からレアアースの輸出規制緩和の確約が得られれば、一部ハイテク製品の輸出規制解除の用意があることを示唆している。前向きの結果を期待してドル/円は144円台後半まで買い戻された。貿易協議は10日もロンドンで続けられることになっている。
レジスタンス:
147.67円 05/14
146.75円 05/15
146.28円 05/29
145.09円 06/06
144.95円 06/09
サポート:
143.98円 06/09
143.34円 06/06
142.52円 06/05
142.37円 06/03
142.11円 05/27
2025年 主要指標

今日の為替ウォーキング Maneater
今日の一言
人生には禍も福もない。考え方ひとつでどうにでもなる。
Maneater
2025年5月の雇用統計は、市場予想をやや上回る堅調な内容となり、FRBの利下げペースを慎重化させる理由をつくった。特に平均時間給の予想上回る上昇は、インフレ再燃への懸念を高め、金融政策の急激な緩和に対する慎重論を強めることになりそうだ。
6月6日に発表された米労働省(BLS)による2025年5月の雇用統計では非農業部門(NFP)の就業者数は13.9万人増加して、市場予想の13.0万人増を上回る結果となった。一方で、4月の就業者数は当初発表の17.7万人から14.7万人に下方修正された。
失業率は4.2%で3カ月連続の横ばいとなった。これは安定した雇用環境が維持されていることを示している。

時間当たり賃金の伸びは、前月比0.4%増、前年比3.9%増と予想(0.3%増、3.6%増)を上回り、インフレに対する懸念を強めた。
5月の米雇用統計には、トランプ関税の影響はまだ顕著には現れていないようだ。米国の企業は、関税の影響を受けながらも、採用計画を大きく変更していない。雇用者増加の推移を見ると、企業は雇用を減速させているようだが、失業率が横ばい状態にあることは、リストラが増えていないことを示している。
関税を巡る不確実性が高い状況にもかかわらず、予想を上回る雇用者数の伸びと安定した失業率が維持されている。これは米雇用市場の底堅さを示すものであり、FRBが利下げする緊急性は低いといえる。マーケットではFRBが9月までに1回以上の利下げを行う確率が75%から65%に低下した。
しかし、不安な要素もある。業種別では、運輸・倉庫業の雇用が増えているが、これは企業が関税対策として輸入を急いだ結果と考えられている。来月以降にこの反動が出る可能性がある。また製造業の雇用は減少し、過去5年間で最大の縮小を記録した。
トランプ関税の本格的な影響は今後数カ月で顕在化すると予想されていて、FRBは失業率が7月以降に急速に悪化する可能性があることを指摘している。

平均労働賃金の上昇をインフレ再燃の兆候だとする見方がある。ただ外食やレジャーなどの娯楽産業の採用が鈍化していることに留意する必要がある低賃金の労働者の雇用が減ることによって、賃金の「平均値」は上昇するので、雇用統計上では、賃金が上昇しているように見えるのだ。
投資家にとって大切なことは、データが正確だというのは幻想にすぎないという認識を持って大きなトレンドをみることである。
今週の注目経済指標

(荒地 潤)