不透明な米関税方針が影響して、日経平均株価の上値は重い展開が続いています。一方、スタンダード市場、グロース市場では中小型株の取引が活発です。
低迷のプライム市場、活況のスタンダード、グロース市場
日経平均株価は5月9日に3万7,000円台を回復し、その後、3万8,400円台を2回つける場面がありましたが、上回ることなく上値の重い展開が続いています。25日移動平均線が3万7,500円水準、200日移動平均線が3万7,870円水準で推移しており、ある意味、日経平均はニュートラルの状況といえます。
5月30日のプライム市場の売買代金は6兆5,106億円と大商いとなりましたが、これはモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)が算出する株価指数の四半期に一回のリバランスが3兆円ほど大引けで入ったことが背景にあります。足元のプライム市場の売買代金は4兆円弱が継続しています。まさに「エネルギー不足」といえます。
米関税方針が明確に判明しない限り、2026年3月期業績見通しは曖昧なままですので、プライム市場の大型株を中心に企業業績を材料とした中長期的な投資は手控えられるでしょう。
一方、米関税方針の影響を受けにくいスタンダード市場、グロース市場の中小型株には個人投資家を中心とした関心が向かっており、両市場ともに2,000億円を超える売買代金ができています。
こういった「プライム市場低迷、スタンダード・グロース市場活況」という地合いはよく起こります。プライム市場の売買の主体が海外投資家、スタンダード市場、グロース市場の主体は個人投資家と、市場のメインプレーヤーが大きく異なることが背景にあります。
今回のような米関税方針や、各国の金利方針の変更などグローバルなビッグイベントを控えているとき、海外投資家は積極的な売買を手控える傾向を強めます。ヘッジファンドや年金運用など海外投資家は、運用に当たって投資家に対する説明責任が生じますので、結果を正確に分析しない限り「投資」は行えないからです。
投資と投機の違い
私は、「投機」と「投資」の線引きは「価格の分析ができるかどうか」だと考えています。例えば、サイコロの丁半は、原則「大数の法則」に基づきますので分析はできません。
個人投資家は自分たちのリスクの範囲で「投機」を行うことは可能ですので、スタンダード市場やグロース市場の中小型株は、株価収益率(PER)や株価純資産倍率(PBR)など一般的な指標を逸脱した株価推移が時折発生します。
決して「投機」がダメと言っているわけではありません。各市場によって売買の主体が異なることで価格形成が大きく異なることを理解し、自らのリスクの範囲で「投機」を楽しめばよろしいかと思います。ちなみに、「自らのリスク」とは「数年使う予定のない資金」を指します。
「投機」は、中長期的な投資ではなく、目先の短期的な投資を指しますので、使う予定のない資金の範囲内であれば、ライフプラン上で困ったことは起きないでしょう。
米関税の影響を受けにくい中小型株、6月権利の優待・配当銘柄
「投機」と「投資」に関して長々と説明しましたが、結論として、米関税方針が明確に分かりそうな6月下旬もしくは7月上旬まで、今のような相場展開は続くと考えます。しばらくは米関税方針の影響が受けにくいスタンダード市場やグロース市場の銘柄が売買の中心となるでしょう。
今回は、スタンダード市場およびグロース市場から、6月に優待もしくは配当の権利取りを迎える銘柄をご紹介します。今期予想配当利回りはいずれも4%台ですので高配当利回り銘柄と言えます。
なお、どの銘柄も1日の売買高が小さいことから流動性リスクが存在します。あまり多くの株数を保有しますと、売却する際に想定していた価格では売却できない可能性がありますので注意してください。
銘柄名 証券コード 株価(円)
(6月10日終値) 特色 鳥越製粉 2009 937 食料用大麦の取り扱い国内トップクラスで米騒動の思惑向かう エプコ 2311 728 再生エネ設備機器の工事引き合いが高まる ウイルプラスHD 3538 1,021 外車購入検討中ならば同社の優待特典は魅力 GMOメディア 6180 4,870 親会社GMOインターネットグループが6割超を保有 Jトラスト 8508 420 2027年12月期には配当性向を30%超に設定
鳥越製粉<2009>
パンや麺、小麦粉のほか、ライ麦粉やふすまなどを製造・販売しています。食料用大麦の取り扱いは国内トップクラスのため、令和の米騒動に絡んだ思惑買いも向かい、株価は2020年12月以来の水準まで上昇しています。
年初から株価は上昇しましたが、PBRはいまだ0.6倍台と割安な水準ですし、今期予想配当利回りも4.6%台と非常に高い水準ですので、過熱感は高まりにくいでしょう。
エプコ<2311>
住宅に関連する電気や給排水設備の設計サービスなどを展開しています。再エネサービス事業では、脱炭素社会の実現に向けたさまざまな政策支援策が打ち出されていることを受けて、再エネ設備機器の設置工事の引き合いが高まっています。
2025年12月期の営業利益予想は前年期比減益の見通しですが、純利益予想は39.2%増が見込まれています。今期予想配当利回りは4.3%台ですので、配当取りの動きに注目します。
ウイルプラスHD<3538>
欧州車などの輸入車正規ディーラーなどを展開しています。2024年に子会社化した中古車輸出を行うENGの影響が大きく、2025年6月期の業績予想は前年比増収増益予想と好業績が見込まれています。同社の注目点は、今年5月に導入した優待制度です。
1,000株以上を継続して1年以上保有する株主と二親等の家族に対して、同社で新車を購入する際に「メーカー希望小売価格より最低5%値引き保証」特典を付与するといった内容です。もし外車の購入を検討されている際、同社株の購入も検討されてはいかがでしょうか。
GMOメディア<6180>
教育、美容医療、ポイ活などの情報提供を行うインターネットメディア事業を展開しています。グロース市場では珍しい5%近い配当利回りの銘柄ですので、権利取りのタイミングは要注目です。ちなみに、株式の6割を GMOインターネットグループ(9449) が保有していることで、親子会社上場解消の思惑は少なからずあります。
同社を含め九つのGMO子会社が上場していますので、仮に親子会社上場の話となれば、合計時価総額数千億円の大規模なグループ再編となりますので、大きな話題となるでしょう。
Jトラスト<8508>
日本などアジアで、銀行業や債権買い取り回収事業などの総合金融サービス事業を展開しています。韓国事業は不良債権処理が一巡したほか、インドネシアやカンボジアも堅調推移で、2025年12月期の業績予想は前期比増収増益が見込まれています。
2027年12月期までの配当性向を30%超とする新しい中期経営計画がスタートしており、今期予想配当利回りは4%台と高い水準ですので下値は堅いと考えます。
(田代 昌之)