クラウドストライク・ホールディングスの2026年1月期1Qは、19.8%増収、営業損失1.247億ドル。四半期ごとの増収率は低下しているが、ネットワーク・セキュリティの各サービスのリピート契約や追加契約が増加しており、今3Qからの増収率回復が期待できよう。

楽天証券の営業損益予想を下方修正するが、目標株価は引き上げる。中長期で投資妙味を感じる。


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毎週月曜日午後掲載


本レポートに掲載した銘柄 クラウドストライク・ホールディングス(CRWD、NASDAQ)


1.クラウドストライク・ホールディングスの2026年1月期1Qは、19.8%増収、営業損失1.247億ドル

 クラウドストライク・ホールディングス(以下クラウドストライク)は、企業が所有するパソコン、スマートフォン、サーバー等の各種端末(エンドポイント)のセキュリティ(エンドポイントセキュリティ)に重点を置いたネットワーク・セキュリティの大手です。オンラインによるサービスを行っています。


 クラウドストライクの2026年1月期1Q(2025年2-4月期、以下今1Q)は、売上高11.034億ドル(前年比19.8%増)、営業損失1.247億ドル(前年同期は690万ドルの黒字)となりました。


 各種ネットワーク・セキュリティサービスをオンライン(月額定額等のサブスクリプションサービス)で提供するサブスクリプションは、売上高10.51億ドル(前年比20.5%増)、売上総利益8.09億ドル(同18.4%増)となりました。前期2025年1月期を通して四半期ごとの増収率と売上総利益の増益率が低下しましたが、今1Qも引き続き増収率、売上総利益増益率ともに低下しました。


 プロフェッショナル・サービスは売上高5,300万ドル(同8.2%増)、売上総利益600万ドル(同57.1%減)となりました。


 また、販売費、研究開発費、一般管理費のいずれもが前年比、前4Q比で増加しました。この結果、今1Qは営業損失1.25億ドルとなり、前年比では赤字転落、前4Q比では赤字幅が拡大しました。ただし、今1Qの販管費の中に2025年7月に発生したシステムトラブルにかかる費用3,972.7万ドルが計上されています。前4Qには2,100.8万ドルが計上されていたので、この増加分が営業損失拡大の要因の一つになっています。


 全社でも増収率が四半期ごとに低下し、前3Qから営業赤字となりました。


 一方で、年間経常収益(ARR[Annual Recurring Revenue])は今1Q末44.4億ドル(前年比21.6%増。前1Q末36.5億ドル、前4Q末42.4億ドル)と増加し、今1QのARR純増分は1.94億ドル(前4Q2.24億ドル)となりました。各種ネットワーク・セキュリティサービスのリピート契約や追加契約が増加しています。次世代型SIEMなど新サービスも投入しています(後述)。今3Q以降サブスクリプションの増収率が回復する期待が持てそうです。


表1 クラウドストライク・ホールディングスの業績


決算レポート:クラウドストライク・ホールディングス(ネットワーク・セキュリティ市場は引き続き拡大中)
株価 480.62ドル(2025年6月13日)時価総額 119,401百万ドル(2025年6月13日)発行済株数 248.432百万株(完全希薄化後、Diluted)発行済株数 248.432百万株(完全希薄化前、Basic)単位:百万ドル、%、倍出所:会社資料より楽天証券作成。注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。注2:EPSは完全希薄化後(Diluted)発行済株数で計算。ただし、時価総額は完全希薄化前(Basic)で計算。注3:会社予想は予想レンジのレンジ平均値。

表2 クラウドストライク・ホールディングスの業績詳細(四半期ベース)


決算レポート:クラウドストライク・ホールディングス(ネットワーク・セキュリティ市場は引き続き拡大中)
単位:100万ドル出所:会社資料より楽天証券作成。予想は楽天証券。注:端数処理のため合計が合わない場合がある。

2.楽天証券の2026年1月期、2027年1月期営業損益予想を下方修正するが、生成AI時代にセキュリティ企業の事業機会は大きい。

1)生成AIの普及に伴いインターネット・セキュリティ企業の事業機会は拡大中

 インターネット・セキュリティ市場全体で事業機会が拡大しています。生成AIが企業に導入されるケースが増えていますが、従来は多くの社員に対してアクセスが許可されなかった重要データを多くの社員が使って様々な仕事をすることになるため、従来よりもセキュリティを厳重にする必要があります。特に今後、AIエージェントを使った各種業務の自動化が普及することが予想されますが、これによって、企業情報や企業システムを狙ったサイバー攻撃がこれまで以上に活発になることが予想されます。


 このような市場環境とクラウドストライクのサービス充実がクラウドストライクの今後の業績拡大のポイントになると思われます。例えば、


  • パソコン、サーバー、スマートフォンなどの個別端末(エンドポイント)の保護に重点を置いた「Falcon Endpoint Protection」と会社全体のクラウド・セキュリティを行う「Falcon Cloud Security」との統合。
  • クラウドストライク独自の生成AI「Charlotte AI」を使ったセキュリティ分析。
  • 従来型SIEMから、より高性能の次世代SIEMへの転換。
    SIEMは「Security Information and Event Management(セキュリティ情報/イベント管理)」の略で、分散環境全体をリアルタイムで可視化し、サイバーセキュリティをより強化することができる。クラウド、オンプレミス(情報システムの自社開発)、ハイブリッドインフラストラクチャなど、様々な環境での脅威検知に優れており、AI、機械学習、振る舞いプロファイリングなどの高度な分析技術を適用できる。
  • NVIDIAが最近発表した「Enterprise AI Factory」では、サイバーセキュリティ標準としてクラウドストライクの「Falcon」が統合されている。
  • マイクロソフトとのサイバーセキュリティでの提携。

などです。


2)楽天証券の今期、来期営業損益予想を下方修正するが、今3Qから増収率向上が期待される。

 今2Qの会社側売上高ガイダンスは、11.447~11.516億ドル、Non-GAAP営業利益(注)ガイダンスは2.269~2.331億ドル、レンジ平均値は、売上高11.482億ドル、Non-GAAP営業利益2.30億ドルとなります。今1QのNon-GAAP営業利益は2.011億ドルなので、Non-GAAPベースでは今2Qは今1Q比で営業増益になる見込みです。今2QのARR純増分も会社側は増加を見込んでいます。


 また、2026年1月期通期の会社側ガイダンスは、売上高47.435~48.055億ドル、Non-GAAP営業利益9.708~10.108億ドル、レンジ平均値は売上高47.745億ドル、Non-GAAP営業利益9.908億ドルです。前4Q決算時の今期ガイダンスのレンジ平均値は、売上高47.745億ドル、Non-GAAP営業利益9.6465億ドルなので、今期会社側売上高ガイダンスは変更なしで、Non-GAAP営業利益ガイダンスは若干上方修正されました。


 前述のような、事業機会の拡大とクラウドストライクの各種サービスの拡充を考えると、クラウドストライクの四半期ベース増収率は今3Qから上昇に転じ、営業損益(GAAP営業損益)も今4Qまたは来期1Qに黒字転換する可能性があります。


 ちなみに、グラフ2で見るように、Non-GAAP営業利益は傾向的に黒字で増加が続いています。今1Qは2.011億ドル(前年比5.7%減)と前年比減益でNon-GAAP営業利益率は18.2%と前4Q20.5%から低下していますが、会社側ガイダンスでは今2Qは回復する見込みです。会社側は中期目標としてNon-GAAP営業利益率28~32%を目標にしています(今1Qは18.2%)。GAAPベース営業損益が赤字なのは人材獲得と維持のために高水準のストックオプションの割り当てが続いているためです。


 楽天証券では、クラウドストライク・ホールディングスの2026年1月期を売上高47.80億ドル(前年比20.9%増)、営業損失2.60億ドル(前期は1.204億ドルの赤字)、2027年1月期を売上高58.00億ドル(同21.3%増)、営業利益4,000万ドル、2028年1月期(参考値)を売上高71.00億ドル(同22.4%増)、営業利益7.40億ドル(同18.5倍)と予想します。ストックオプションについては、高水準の割り当てが今後も続くと前提したため、前回予想よりも営業損益は下方修正しましたが、これは今後の動きを確認する必要があります。Non-GAAP営業利益は順調な伸びが続くと予想します。


 GAAP営業損益が赤字でも、Non-GAAP営業利益が黒字で、今1Q末の現金及び現金等価資産が46.1億ドルあるので、当面の資金繰りには問題はないと思われます。


注:GAAP(Generally Accepted Accounting Principles)は、一般に公正妥当と認められる会計原則のことで、クラウドストライク・ホールディングスの場合は米国会計基準(US-GAAP)を採用している。Non-GAAPはGAAPベースの損益からストックオプション、無形固定資産償却などの非現金性支出や一時的費用を除いたもの。


表3 クラウドストライク・ホールディングスの業績詳細(通期ベース)


決算レポート:クラウドストライク・ホールディングス(ネットワーク・セキュリティ市場は引き続き拡大中)
単位:100万ドル出所:会社資料より楽天証券作成。予想は楽天証券。注:端数処理のため合計が合わない場合がある。

表4 クラウドストライク・ホールディングスのNon-GAAP営業利益


決算レポート:クラウドストライク・ホールディングス(ネットワーク・セキュリティ市場は引き続き拡大中)
単位:100万ドル出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ1 クラウドストライク・ホールディングスの売上高


決算レポート:クラウドストライク・ホールディングス(ネットワーク・セキュリティ市場は引き続き拡大中)
単位:100万ドル、出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ2 クラウドストライク・ホールディングスの営業利益


決算レポート:クラウドストライク・ホールディングス(ネットワーク・セキュリティ市場は引き続き拡大中)
単位:100万ドル、出所:会社資料より楽天証券作成

3.クラウドストライク・ホールディングスの今後6~12カ月間の目標株価を前回の450ドルから600ドルに引き上げる。

 クラウドストライク・ホールディングの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の450ドルから600ドルに引き上げます。


 楽天証券の2028年1月期予想1株当たり利益(EPS)2.98ドルに成長性を考慮して想定株価収益率(PER)200倍前後を当てはめました。


 中長期で投資妙味を感じます。


本レポートに掲載した銘柄: クラウドストライク・ホールディングス(CRWD、NASDAQ)


(今中 能夫)

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