フォーティネットの2025年12月期1Qは、13.8%増収、41.3%営業増益。セキュリティ機器では世界トップで、ファイアーウォールでもトップシェア。

前1Qの営業利益率が低かった反動で大幅増益。大企業向けが約30%増と好調。ただし、米国で販売するために輸入するセキュリティ機器について、当面は関税分の値上げを行わない方針等の不透明要因がある。楽天証券の業績予想を下方修正し、目標株価を引き下げる。引き続き中長期で投資妙味を感じる。


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毎週月曜日午後掲載


本レポートに掲載した銘柄 フォーティネット(FTNT、NASDAQ)


1.フォーティネットの2025年12月期1Qは、13.8%増収、41.3%営業増益

 フォーティネットの2025年12月期1Q(2025年1-3月期、以下今1Q)は、売上高15.397億ドル(前年比13.8%増)、営業利益4.538億ドル(同41.3%増)となりました。


 今1Qをセグメント別に見ると、プロダクト(セキュリティソフトウエアを搭載するセットトップボックスが中心)は売上高4.591億ドル(同12.3%増)、売上総利益3.092億ドル(同36.8%増)となりました。大幅増益となりましたが、これは1年前の前1Qが減収となり在庫処分等を行った影響で売上総利益率が55.3%とフォーティネットとしては低水準だったため、反動があったためです。


 また、サービス(主にネットワーク・セキュリティのサブスクリプションサービス)は売上高10.806億ドル(同14.4%増)、売上総利益9.374億ドル(同14.0%増)となりました。サービスの売上総利益率は今1Q86.7%と十分高いため、増収率並の増益率となりましたが、順調に拡大しました。


 地域別売上高を見ると、最も伸びが高かったのは欧州・中東・アフリカ向けで6.284億ドル(前年比16.5%増)、次が南北アメリカで6.298億ドル(同13.1%増)、最も伸びが低かったのはアジア・太平洋で2.815億ドル(同9.6%増)となりました。


 製品別にはユニファイドSASE(Software-Defined Wide Area Network(SD-WAN。拠点間やクラウドとのネットワークをソフトウエアで制御する機能)とクラウド配信型のセキュリティサービスエッジ(SSE。

複数のセキュリティサービスを合わせて単一のサービスとして提供するもの)を統合したもの)、セキュリティオペレーション(SecOps)が順調に伸びました。企業規模別には大企業向けが約30%増と好調でした。


表1 フォーティネットの業績


決算レポート:フォーティネット(大企業向けセキュリティ製品が好調)
株価(Nasdaq) 100.83米ドル(2025年6月13日)時価総額 77,468百万ドル(2025年6月13日)発行済株数 776.8百万株(完全希薄化後、Diluted)発行済株数 768.3百万株(完全希薄化前、Basic)単位:百万ドル、ドル、%、倍出所:会社資料より楽天証券作成。注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。注2:EPSは完全希薄化後発行済み株式数で計算。ただし、時価総額は完全希薄化前発行済み株式数で計算。注3:会社予想は予想レンジの平均値。

表2 世界のセキュリティ機器市場シェア


決算レポート:フォーティネット(大企業向けセキュリティ製品が好調)
単位:100万ドル出所:IDC2025年3月6日付けプレスリリースより楽天証券作成。

表3 フォーティネット:セグメント別業績(四半期)


決算レポート:フォーティネット(大企業向けセキュリティ製品が好調)
単位:100万ドル出所:会社資料より楽天証券作成

表4 フォーティネット:地域別売上高と前年比


決算レポート:フォーティネット(大企業向けセキュリティ製品が好調)
単位:100万ドル、%出所:会社資料より楽天証券作成

2.楽天証券の2025年12月期、2026年12月期営業利益予想を下方修正する。

 会社側の今2Q売上高ガイダンスは、売上高15.90~16.50億ドル、レンジ平均値16.20億ドル(前年比12.9%増)です。また、2025年12月期通期売上高ガイダンスは66.50~68.50億ドル、レンジ平均値67.50億ドル(同13.3%増)で、前回の会社側売上高ガイダンスから変更ありません。


 今1Qまでの業績と、今2Q会社側ガイダンスを参考にして、楽天証券の2025年12月期を売上高68.00億ドル(同14.2%増)、営業利益21.90億ドル(同21.4%増)、2026年12月期を売上高78.00億ドル(同14.7%増)、営業利益27.50億ドル(同25.6%増)と予想します。売上高は前回予想と同じですが、営業利益予想は下方修正します。


 営業利益予想を下方修正した理由は、米国の輸入関税引き上げによってフォーティネットが米国で販売するために輸入しているハードウエア(セットトップボックス等)にも輸入関税がかかることになりますが、当面は関税分の値上げはしない模様であること(ただし、会社側は米国で販売するために輸入しているハードウェアは少ないため、今のところ業績に対して関税の影響はないとしている)、セキュリティ関連企業は数が多く競争もあり、私が前回予想で予想したように大きく営業利益率が上昇することは難しいと思われること、ネットワーク・セキュリティに対する需要が強いため、前回の楽天証券予想よりも売上総利益率の低いプロダクト(セットトップボックス等のハードウェア)の伸びが大きくなる可能性があり、その場合製品ミックスが悪化すると予想されることによります。


 ただし、セキュリティ機器で世界トップであり、ネットワーク・セキュリティの要の一つであるファイアーウォールでトップシェアを持つことで競合他社に対して優位性があります。この優位性は今後も続くと思われます。


 また、2025年12月期後半からファイアーウォールが更新期を迎えるため、更新需要がどの程度か注目されます。


表5 フォーティネットの通期業績予想


決算レポート:フォーティネット(大企業向けセキュリティ製品が好調)
単位:100万ドル出所:会社資料より楽天証券作成

3.フォーティネットの今後6~12カ月間の目標株価を145ドルから125ドルに引き下げる。

 フォーティネットの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の145ドルから125ドルに引き下げます。


 楽天証券の2026年12月期予想1株当たり利益(EPS)3.41ドルに現在の評価である株価収益率(PER)35~40倍を当てはめました。楽天証券業績予想を下方修正したことに伴い、目標株価を引き下げますが、中長期で投資妙味があるという判断は変えません。ただし、関税、競争等の不透明要因があるので、株価上昇に時間がかかる可能性があります。


本レポートに掲載した銘柄: フォーティネット(FTNT、NASDAQ)


(今中 能夫)

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